バタフライエフェクト


いや、そんなことなないか……と山吹は考え直した。


もう、かなり色々とやってしまった。


バタフライ・エフェクトという言葉がある。


ロケットの起動をほんの数ミリ変えるだけで飛んでいく方向はまるで違ってしまう。


同じ様に過去にタイムトラベルができたとして、そこで起こす些細な変化が未来においてとんでもない変化を引き起こしてしまうという事を意味している。


つまり、本当に蝶の羽が僅かに与える様な変化ですら、過去が未来に及ぼす力は大きいということなのだろう。


だとしたら、わたしは既に多くの変化を与えてしまった可能性は高く既に未来が、変わっている可能性も高い。


要はその現実を受け止めたくないだけなのかもしれない。


そう、単なるワガママだ。


しかしそうでもしないと、いたたまれないほどわたしは追い詰められているのかも知れない。


これ以上悪い未来は正直耐えられそうにない。


だから取らない。


そう決めていた。


「そうだ、取らないと決めたら取らない!」


そう叫んだ時、鳴った。


呼び出し音。


鳴っている。


もはや恐怖しか感じないその黄色い電話が震えている。


山吹は耳を抑えようとした。

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