気分転換


気分転換にと半ば強引に学園祭に引っぱりだされた山吹は学園祭の後のシンと鎮まったオープンスペースの定位置に座っていた。


普段と違うのは目の前に望月がにこやかに微笑んで座っている事だ。


例の話をしない約束で引っ張り出したので望月は当たり障りのない世間話をしながら学園祭の余韻に浸っていた。


山吹は望月の話にちくいち頷きながらもチラチラと黄色い公衆電話の方を盗み見ていた。


いつも未来電話は何故か山吹が一人の時にかかってくる。


もしも、それが条件なら二人いるこの状況ではかかってこないはずではある。


しかし、もし万が一にも今未来電話が鳴ったら強制的に望月も関わらせてしまう事になる。


それだけは避けなくてはならないと山吹は思っていた。


その時、望月の携帯の着信音が鳴った。


聞くともなく漏れ聞こえる内容からおそらく望月の教え子から学園祭の、記念撮影か何かに誘われている様子だった。


「すみません、ゼミの生徒がどうしてもってきかないので……先生もご一緒に行きませんか?」


「いやいや、部外者がお茶を濁す様な事はしたくないよ。それに…ちょっと疲れちゃったんでここで暫く休んでいくよ。ゆっくりと親睦を温めてくるといい」


そう言って山吹は少しだけ微笑んだ。


「じゃあ…そうします。直ぐに帰ってきますから」


そう言って望月は小走りにかけていった。


あたりはシンと静まりかえった。


山吹は黄色い公衆電話を睨んだ。


もしまた未来電話が鳴っても取らないと決めていた。


そうだ、取りさえしなければ未来が変わる事はない……おそらく。

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