方向転換
山吹教授が外にでると友人の入江教授とばったりあったので、自然と並んで歩く格好になった。
「やぁ山吹……噂は聞いてるぞ」
「どうも……それで、どんな悪い噂なんだい?」
「まさかぁ、良い噂だよ。生徒の評判も高くてさ。今度、どこぞの民間団体から講演を依頼されているんだって?」
「君のお陰だよ入江教授、君が講義内容の見直しを勧めてくれたからね」
「いやぁ、そのうち僕なんか抜かされるかも知れないからねぇ。いつか山吹博士なんて呼ぶ時がくるかもねぇ、今のうちに売れるだけ恩を売っておくよ」
「またまた、そんな事ないさ」
否定しながらも、満更でもない顔をする山吹。
「あ、僕こっちだから。じゃあまた」
入江はそう言うと踵を返して角を曲がった。
入江と別れた後で山吹は先程の女生徒の言葉を思い出していた。
確かに前の感情ニュートリノ振動仮説を捨てた訳ではないが、どうしてももっと現実的で受けの良い内容の授業を大学側が望んでいた。
いや、それは嘘では無いが、実際は自分がそれを望んでしまったというのが本音だろう。
あの時、一人だけ私の仮説を支持してくれた望月には申し訳ないが、、、。
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