サイコパス診断からの応用仮説
「ええと、この様にサイコパスかどうかと言うのは脳下垂体の状態を調べる事で大体わかる様になりました」
山吹教授はそういうと、生徒の方を一瞥した。
かなり席が埋まっていて、空いている席の方が少ないのを見て心の中でほくそ笑んだ。
「で、ですね。この装置により犯罪の加害者の再犯率や更生の可能性の有無を判断していくという研究がすすんでいますが、わたしはこれを子供達にもやるべきだと思っています」
生徒の中からどよめきが起きた。
そこで、ある女生徒が挙手をした。
また、あの生徒だ。
「はい、望月さん」
「あの……それは流石にやり過ぎではないでしょうか?子供のうちから犯罪者になりそうかどうかを炙り出す様なやり方は……実際にサイコパスであっても犯罪者になる可能性は低いという研究もありますし」
教授はウンウンと何度も頷くとニコリと微笑んだ。
「その通り!よく勉強されてますね」
望月は褒められて少しだけ赤くなった。
「しかし、私はなにも将来の犯罪者を炙り出す為にこれをしようと言うわけではないのだ」
そう言って教室全体をグルリと見渡した。
「現代は子供達が虐待を受けていてもそれを見抜くことはなかなかできない。しかし、虐待を受けた子供は必ずそのキズの後を脳に刻む筈なのだ。その一つの現れとしての感情の不感症化というものが見受けられる。つまり、サイコパス的な一面を見せるという訳だ」
「と、言うことは。虐待発見機にもなるということですか?」
「……まぁ、平たく言うとそうなるかな、勿論。先天的という可能性もあるので感情の不感症性がみられても即座に虐待と結びつける訳にはいかないが……」
「そのサイコパス発見機の精度はどのくらいなのでしょう?」
「それも合わせてこれからという。ところかな……また妄想と言われそうだが」
しかし、今度は誰も空想などと言うものは居なかった。
「あの……教授の授業を妄想と思ったことはありません」
望月女史の台詞に一旦教室内が静まり返った。
「あぁ、そうだったね。ありがとう」
変な沈黙を誤魔化すようにそう言ったが更におかしな沈黙を生んでしまった。
キーンコーンカーンコーン
またタイミング良く授業終了のチャイムが鳴った。
「それでは、今日はここまで」
山吹教授は足早に教室を出ていった。
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