小さなショック


「なるほど、なるほどそうか、とにかく未来が明るいようでなによりだ。君に感謝するよ……ええと、君、名前は?」


『ミクです』


「ほう、そうか。あれだね、現代でも居そうな名前なんだね……はは、名前はそんなに進化しないってわけか、よいよい。変に奇をてらう様な名前より全然良いね」


『ありがとうございます。ドクター』


「いやぁ、それにしても、これから何があるかわからないけど、私もドクターと呼ばれる位には出世する事がわかって励みになるよ」


『え?』


「いやいや、今更、惚けても遅いよ。冒頭からドクターと言ってたじゃない」


『あ、はい。そうでした』


「ん?あれ?違うの?」


『あの、ドクターは出世とかには興味がないんですよね?』


「ん?あぁ、もちろん、興味などない。純粋に論文が役立ちさえすれば……」


『ええと、じゃあ言っても大丈夫だと思いますけど、ドクターと呼ばれるのは遥か未来の話です』


「え?」


『ドクターのお話は先進過ぎたのでまだまだその時代で言うところの都市伝説の域を出ません。つまりそちらの時代の価値観でいうと不遇という事になります』


「………」


『それでも、現在のお金を必要としない価値観で測ると大成功した人という事になりますので、未来の我々は尊敬を込めて、ドクターと呼ばせていただいてるので、安心してください!』


「あ……あぁ、そうか、そうだねありがとう」


『いえいえ、未来人を代表してドクターに感謝の言葉が送れて、とても光栄でした。それでは……プッ』


「…………」


私は言葉を失ってしばらく途切れた受話器を握りながら呆然と立ち尽くしていた。

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