小さなショック
「なるほど、なるほどそうか、とにかく未来が明るいようでなによりだ。君に感謝するよ……ええと、君、名前は?」
『ミクです』
「ほう、そうか。あれだね、現代でも居そうな名前なんだね……はは、名前はそんなに進化しないってわけか、よいよい。変に奇をてらう様な名前より全然良いね」
『ありがとうございます。ドクター』
「いやぁ、それにしても、これから何があるかわからないけど、私もドクターと呼ばれる位には出世する事がわかって励みになるよ」
『え?』
「いやいや、今更、惚けても遅いよ。冒頭からドクターと言ってたじゃない」
『あ、はい。そうでした』
「ん?あれ?違うの?」
『あの、ドクターは出世とかには興味がないんですよね?』
「ん?あぁ、もちろん、興味などない。純粋に論文が役立ちさえすれば……」
『ええと、じゃあ言っても大丈夫だと思いますけど、ドクターと呼ばれるのは遥か未来の話です』
「え?」
『ドクターのお話は先進過ぎたのでまだまだその時代で言うところの都市伝説の域を出ません。つまりそちらの時代の価値観でいうと不遇という事になります』
「………」
『それでも、現在のお金を必要としない価値観で測ると大成功した人という事になりますので、未来の我々は尊敬を込めて、ドクターと呼ばせていただいてるので、安心してください!』
「あ……あぁ、そうか、そうだねありがとう」
『いえいえ、未来人を代表してドクターに感謝の言葉が送れて、とても光栄でした。それでは……プッ』
「…………」
私は言葉を失ってしばらく途切れた受話器を握りながら呆然と立ち尽くしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます