入江の苦言



「いやぁ、確かに学生に夢を与えるのも大切だけどねぇ、君を紹介した僕の立場もわかって欲しいなぁ」


大学の使われてない一室で入江教授は自分が口をきいて客員教授に推薦した山吹教授に苦言を呈していた。


「……はぁ」


「もっとこう、現実的というかさぁ、リアリティのある授業をお願いしたいわけよ」


「……まぁ」


「ほらこの大学は生徒からの人気が結構査定に響くからさぁ、ひいては君を推薦した僕の査定にも響き兼ねないって事もあってねぇ、いくら同期のよしみと言ってもねぇ、庇いきれないというところもあるんだよね」


「……いやでも」


反論しかけた山吹を入江は手で制して告げた。


「いや、口論するつもりは無いんだ。ただこの前の様な授業だといづれ居られなくなるかもと伝えたかっただけだから」


それだけ言うと入江はスッと踵を返して去っていった。


山吹は去っていく入江の後ろ姿を、蹴りたい背中だなと思いながら眺めるしかなかった。

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