おっさん、キレる…?



あれだけ騒いでいた周りの喧騒が、今ではしんと静まり返っている。

それも束の間…


『『『うおぉぉぉぉぉぉっ!!!!』』』


一変して辺りは歓声に包まれた。

周囲の声を聞き拾う限りだと、どうもこの荒くれ連中は冒険者のようではあるが、その素行の悪さからか住民からは煙たがられ…いや、ぶっちゃけ嫌われていたようだ。

あぁ、連中の人数を言ってなかったが全部で4人。

俺に短剣を突きつけて蹴り飛ばされたのがA。

最初にテンプレの台詞を吐いて俺の腹筋を崩壊させようとした奴がB。

そしてモブのように蹴り飛ばされたAの様子を伺っているCとD。

合わせて4人だ。


唖然としてBの力が抜けたのを察したらしきクレア嬢がその隙を突いて掴まれていた手を解きこちらへと駆けてくる。


「キーダ様!!」


駆ける勢いそのままに俺へと抱き着いてくるクレア嬢を受け止めると、その瞳には大粒の涙が浮かんでいる。


「どこかお怪我はありませんか!?刺されたりしていませんか!?」


さっきのやり取りを見ていたはずだがクレア嬢は気が動転しているらしく、忙しなく俺の身体のあちこちを心配そうに見ている。


「全然大丈夫ですよ?どこも怪我はしていませんので」


俺は努めて問題無い事を分かってもらうように明るく話し掛ける。

それでも暫く俺の様子を眺めて確認していたが、ようやく納得したのか気が抜けたのか、その場にペタリと座り込んでしまった。


「て、テメェ何者だ!?俺達が誰だか分かってんのか!?」


おっと…

クレア嬢を落ち着かせるのに忙しくて存在を忘れるところだった。

口汚く罵声を挙げているのはお笑い芸人のBだ。

お笑いにはちょっとうるさいこの俺の腹筋を崩壊させかけるくらいだから間違っていないはず。


「あ〜…さぞかし有名なお笑い芸人のようだが、俺の腹筋にとどめを刺すことは出来なかったようだね?いや、実際大したもんだよ?」


「誰がお笑い芸人だ!!」


俺は無言でBを指差してやった。


「指を刺すんじゃねぇ!!」


あぁあぁ、がなり声がうっせぇわ。

たまらず俺は両耳を塞いだのだが、ギャラリーから見たらBの行動は失笑するのに不足はないようで、あちこちから指を刺されてくすくすと笑われている。

その様子を察したらしいBは顔を真っ赤に紅潮させてイキリながら喚き散らす。


「テメェらぁ……笑ってんじゃねぇぇぇぇ!!」


ついに我慢の限界が来たらしいBが背負っていた馬鹿デカい剣を抜いたかと思うと力任せに振り被り地面を叩きつけた。

石畳で出来た地面が割れ、そこを中心に少なくない石礫が飛び散り、大小様々の礫がギャラリーを巻き込んでいた。

再び巻き起こる周囲の悲鳴と巻き込まれて礫が直撃したらしい人達の呻き声。

俺はというと、Bが大剣を振り被った瞬間に座り込んで動けないクレア嬢を庇う様に抱きしめて背中に魔力を集中させて防御に専念していた。


背中にいくつか衝撃を受けてはいたが、俺の魔力の壁を撃ち抜くほどの威力は無かったらしく、若干の砂埃を被ったくらいで全くの無傷の俺は、クレア嬢に怪我がない事をさっと確認してから立ち上がって振り返り周囲を見渡した。

周囲には巻き込まれたギャラリーの様子が目に入って来る。


腕を抑えて蹲っている者


頭から血を流してグッタリとしている者


怪我をしたらしき母親の脇で泣き喚く少女


飛んで来た礫をモロに受けて倒壊寸前の屋台



言い出したらキリがないような被害だった。


少し煽った自覚はあるがキレ散らかすにしてもコレは酷い…なんてもんじゃない…

最近の若いヤツはすぐキレる、とか元の世界では散々言われ尽くして来たことではあるが、今のこの状況はキレてどうこうっていう範疇を悠に超えている。

普通に人災じゃねぇか。


コレはさすがに笑えない。





笑えねぇなぁ…





「どうだ見たか!これが俺様の実力ってやつよ!」


耳障りな声が聞こえた先を見ると、周りが見えていないのか、はたまた単純に自分の力に酔いしれてるのか…まぁ完全に後者だろうな…

ともかく、大剣を肩に担ぎ嬉々として馬鹿笑いしているBの姿が視界に入る。


「この俺様を舐めやがって…いい気味だ!はっはっはぁぁぁ!!」


「おいクソガキ」


「あぁん!?」


「いい加減黙れ」


俺は魔力を足に集中させてBに向けて踏み込む。

すると自分でも驚くほどの速さでBの背後に回り込む事が出来たんだが、自分が予定していた場所よりも勢いが良過ぎてBの後方5m程のところまで進んでしまう。

慌てて立ち止まり、改めて魔力を調整してBへ突っ込み、奴の後頭部をガシッと掴むとそのまま地面へと叩きつけてやった。


「ぶへぇっ!?」


うっ…


くっさ!!

え?何これクッサ!?


近づいた際のあまりの臭気に堪らず俺はBから距離を取る…いや、取らされた。


「うっ…ゲホッゲホッ…おぇっ…」


堪え切れずに嘔吐えずいてしまった。

正直油断してたわ…

つーか人間ってこんなに臭くなることが出来るのか!?

わずかな汗で気持ち悪くなって臭いを気にしていた俺が馬鹿らしくなるかのような体臭じゃねぇか!?


例えるならその臭いは、腋臭ワキガの人間が何日も風呂に入らずに汗塗れで過ごした臭い、そこに凝縮されたかのような不乱臭に近いえた臭いが混じったような…

とにかくバイオハザード級に危険な有毒ガスのような混ぜるな危険を地で行くような体臭だったのだ。


な?

俺が思わず飛び退いて逃げるのも納得出来るだろう?

今にして思えば、Bの手を振り解いて走って来たクレア嬢が大粒の涙を浮かべてたのは俺を心配しての事では無くこの体臭が原因だったと言われたら思わず納得してしまうくらいにキッツイ臭いなんだけど、出来れば前者であって欲しいと俺は強く願った。





少し収まりが悪いので後半へ続きます。



どうも、深夜テンションで書いてます作者の銀狐です。

まさかの連日投稿です←

本当は下書きにしておくつもりでしたが←興がノったのでそのまま爆撃です。

どうしてかシリアス展開を書いているつもりなのにいつも締まらない感じになってしまうんですがどうしたら良いですかね?←


皆様のおかげで累計PV数がもうすぐ2万に届きそうです!

継続はなんとやらとはよく言ったものですが、こうして投稿していると思いの外実感出来るものですね…(しみじみ


カクヨム様からお給料欲しいので←

面白い、続きが気になる、Bの体臭?そんなの大したことなオボロロロロロロロ(自主規制)という奴に近づこうという勇気ある(無謀とも言う)方は↓にある⭐︎をぽちぽちぽちっと押して頂けたらありがたいです。


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