お宿への道のり
『条件が達成されたため、スキル【交渉術】、【算術】、
「うぉっ!?」
「どうかされましたか?」
「い、いや、何でもありませんよ…大丈夫です」
「?そうですか…ならいいのですが…」
あ〜ビックリした…
いきなり頭の中で声が響くから焦るんだよな…
クレア嬢が俺の驚いた声を聞いて心配?した様子で声を掛けてくれたが、自分でもよく分かってはいないがとりあえず問題ない旨を伝える。
それにしても何なんだろうな?
そういえばさっきもこんなアナウンスみたいなのが流れたけど…
条件が達成されたって言ってたよな?
俺が今行った事って言ったら…
硬貨の売り込みと軽い計算くらいか?
もしかして元の世界で習得していた技術的な事をこっちでも行うとスキルとして反映されるって事か?
だとすると、俺が最終的に覚えるスキルというか解放されるかもしれないスキルの数は相当な数に上ることになってしまうんだが大丈夫なんだろうか?
そうなると今の俺のステータスが気になって来るんだが、とりあえず今はやる事をやってしまわんとだな…
「それでクレア嬢、つかぬことをお聞きしますが」
「何でしょうか?」
「今日泊まれる宿みたいな所を紹介してもらえたり出来ますか?出来れば風呂付きの宿が良いなと思っているんですが」
「お風呂付きですと割高にはなりますがございますね」
「是非そこを紹介してもらいたいんですが…え?ちなみに一泊おいくらなんですか?」
「たしか一泊二食付きで10万ガーデだったかと…ですがサービスも防犯面もしっかりとしているお宿ですよ?折り合いがつかないようでしたら一応大衆浴場はありますが、湯船があるわけでは無く、お湯を購入して汚れを落とすような場所ですね」
10万ガーデか…
なかなか足踏みしてしまう金額だが、まぁ風呂付きとなるとたぶんこっちの世界じゃ高級な部類に入るんだろうな。
大衆浴場も案内があったが、元の世界で風呂に慣れ親しんでる現代人としてはここは譲れんところではある。
「やっぱりその宿を紹介してくださいませんか?ゆっくり湯船に浸かって疲れを取りたいので」
「ふふっ、かしこまりました。ではご案内しますので一階の受付カウンター脇のテーブルで少しお待ちください」
商談室から出た俺達はそれぞれ廊下で別れ、俺は言われた通りに受付前のテーブルでクレア嬢を待つ。
少しして外行きの格好に着替えたクレア嬢がこちらに向かって小走りでやって来た。
その際にクレア嬢のたわわではわわなけしからん胸部装甲がたゆんたゆんしていたが、気にしたら負けだと思った俺は鋼の精神で(笑)紳士ぶっておいた。
「お待たせして申し訳ありません!では早速参りましょうか」
ぬ?
クレア嬢も一緒に向かうのかい?
「クレア嬢も行くのですか?俺はてっきり地図か何かを用意しているのかと思っていたのですが…」
「地図でも良かったのですが、キーダ様はこちらに来て間もないとのことでしたので土地勘が無いのではありませんか?」
「たしかにそうですね…」
「なので、私がご一緒して行けば道中の案内なども出来るので、キーダ様のお役に立てるかと思ったのですが…ご迷惑でしたでしょうか…?」
「いえいえ、迷惑だなんてとんでもないですよ。こんなに綺麗な方が一緒に並んで歩いていたら周りから嫉妬の視線が飛んでくるっていう心配はありますがね?」
「まぁ?お上手ですね♪」
いや、割と冗談抜きで言ってるんですけどね!?
嬉しそうな感じで笑っているから良いとしても、実際面倒な奴なんてどこにでもいるわけで、こういう転移系のラノベじゃ絡まれるまでがテンプレなんですぜ?
こう、『おうおう!ずいぶん綺麗なネェちゃんと歩いてるじゃねぇか?』的なさ?
まぁ、ここまでお約束な展開もそうそう無いだろうけどな〜
そう思っていた時もありました。
「おうおう!ずいぶん綺麗なネェちゃんと歩いてるじゃねぇか?」
「ぶはっ!?」
「キーダ様!?」
2人連れ立って、クレア嬢からこの街【エルドラド】の案内を受けながら歩く事十数分。
クレア嬢曰く冒険者ギルドが近付いて来たところで対面から歩いて来たいかにもな格好をした連中がこちらに向かって歩いて来た。
そして先程のあの台詞である。
俺が吹き出したのは仕方ない事だったんだよ。
だって想像してた台詞を一言一句違わず吐いてきたんだぜ?
これが吹かずにいられるか?いや吹く(反語)
「あぁん!?テメェ!何笑ってやがる!?」
「ちょっやめっ…!腹筋崩壊する…!」
ホントやめて
テンプレ過ぎて笑いが止まらん!!
「キ、キーダ様…きゃっ!」
急に笑い出してツボってる俺を心配したクレア嬢が俺に寄り添おうとしたようだが、荒くれ者連中の一人に腕を取られて引き離される。
「この女がどうなってもいいのか!?」
はい。
三下のやられ役の台詞いただきました〜
「くくっ…はぁ〜笑った…ん〜…どうなるも何もお前さん方が負ける未来しか想像出来んけど?」
こういう台詞を吐く奴に限って全然大した事ないしな。
元の世界で何度も聞いたわ。
まぁ…これくらいの連中だったら肩慣らしにはちょうど良いかねぇ?
「このおっさん舐めやがって…くらえや!!」
荒くれ者Aが短剣っぽいのを抜いて向かって来る。
周囲の野次馬連中の声がどよめきから悲鳴に変わる。
「キーダ様!!」
クレア嬢が俺の名前を叫ぶが、かく言う俺はというと…
「やれやれ…まるでなっちゃいない」
ナイフや短剣ってのは取り回しの自由さと変幻自在さがウリだと言うのに、コイツの使い方は何だ?
わざわざこれからこう刺しますよとご丁寧に教えてくれてるんだから対処は簡単だ。
簡単過ぎて面白味がないので俺は先程少し練習した【魔力操作】を使ってみることにした。
目的は魔力を操作して一点に集中させてみたらどうなるのかっていう好奇心から来る実験というか検証だ。
さっきの練習で魔力を動かして集中させるコツみたいなのはうっすら掴めていたんだけど、クレア嬢が意識を取り戻したから途中だったんだよね。
(たしか…こんな感じ…!)
左手を広げて左手全体を包み込むように魔力を集中させてみると、ちょうどそこに荒くれ者Aが突き出してきた短剣の先端が掌を貫こうとする。
が…
「バカな!?なんで刺さらねぇ!?」
はいこうなりました。
ふむふむ…感じとしては目に見えないバリア的なもんだろうかね?
短剣の切っ先と俺の掌までの距離は2ミリほどの間隔を保って拮抗している。
荒くれ者Aは顔を赤くしながらなんとか突き刺そうと頑張ってはいるが、一向にその先に突き進めない。
俺は相手から押し込もうとしている力を感じるだけでどうということはない。
「ぐぎぎぎぎぃっ!!」
「ほら頑張れ頑張れ」
「くっそがぁぁぁぁぁ!!」
いっそう力を込めて突き刺そうとする瞬間、いい加減付き合うのもめんど…疲れてきた俺は、左手を払うようにして荒くれ者A…面倒だからAでいいや…Aの短剣を受け流す。
「へっ…?あ…ぎゃぁあああっ!!」
バランスを崩して前のめりになり短剣を持つ手の力が緩んだAの短剣の柄を掌底で上へと打ち上げると、面白い位にスポーンとAの手から抜けて宙へと舞い上がる。
そして流れるようにAの右手首を掴んだ俺は、肘が伸び切っていることを確認し、肘に膝蹴りをお見舞いしてやった。
骨の砕ける独特の嫌な音を響かせてAの右肘はあらぬ方向へと折れ曲がった。
あまりの痛みに膝を地に着け悶絶している隙だらけのAの顔面に俺は容赦無く後ろ回し蹴りを放つと、かなり綺麗に入ったらしく、割といい勢いでBの方へと飛んで転がっていった。
意識が飛んだらしいAはピクピクと痙攣しながら白目をむいている様だ。
唖然とする荒くれ者達とギャラリー
やり過ぎたか?と思っていると…
『条件が達成されたため、スキル【格闘術】が解放されました』
と、またまたスキルが解放されたようですな。
今後暫くの間は何か行動を起こすたびにこうなるのかと思うと、若干憂鬱になる俺であった…
どうも
作者の銀狐です。
後半なんでかバトルに発展してしまいました…
なんでや…
作者もよく分かっておりません←
だってノリで書いているもの!(開き直り
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