商談交渉3



「先程の話に戻りますが、私のスキルLvでしたね。話すのは構いませんが他言無用でお願い出来ますかね?」


「当然です。本来であれば自分の手の内を見せるような事は憚れるものです。公私混同は良くないことだというのは重々承知の上ですが、同じ『鑑定』を持つものとしてキーダ様の持ち込まれたこの硬貨もですが、私個人としてキーダ様に興味が尽きません」


「あ、はい」


かなり興奮気味で前のめりになっているクレア嬢の態度に若干引いてしまった。

まぁ俺のユニークスキルである『完全鑑定』にはLvが存在しないため言いようがないのだがどうしたものか…

そういえばさっきクレア嬢はこうも言っていた。


鑑定のLvによって見える内容に誤差が生じる。


それはつまり高Lvになるにつれて見える内容が増えていくということではないだろうか?


「例えばなんですが、私がクレア嬢を鑑定した場合、鑑定Lvの証明になりますかね?」


「じ、人物鑑定が出来るのですか!?…結論から言いますと充分証明になり得ます。と言うのも、人物鑑定が出来るようになるのが鑑定Lv7からとなっておりまして、Lv7ですと、鑑定した人物の名前や性別、種族や年齢、職業が分かります。Lvが上がるとそれ以上の詳細が見えるようになりますね。それとこれは補足になりますが、スキル自体が有益なスキルである場合、Lv7を超える有益スキル保持者の方は各所の要職に就いていたり国が保護したりする場合もございます」


なるほどねぇ…

俺が取得しているユニークスキルの完全鑑定は有無を言わさず個人情報をまるっといらん情報(3サイズとか)まで丸裸にしてしまうみたいだが、本来の鑑定スキルだと見える情報に制限が掛かるようだな。

それに有益だと判断されるようなスキルは重宝されているようだ。 


「ちなみに鑑定スキルは…」


「もちろん有益なスキルとされています」


デスヨネー…


あれ?でもそうすると俺が放逐されたのって何で?

俺のステータス欄には間違いなくユニークスキルを示すUの文字と完全鑑定という表記がある。

にも関わらず結果は放逐…

はて?なんでや?


「鑑定スキルは有益とされてはいますが、低Lvの状態ですと、言い方は悪いのですがハズレスキルと呼ばれているのです。と言うのも低Lvでの鑑定結果は鑑定するまでもない常識的な内容や鑑定物の名称くらいしか見ることが出来ないからなのですが…」


あぁ…そういうことね…


「ちなみに鑑定水晶を使った鑑定だといかほどの鑑定結果を得られるんですか?」


「使用される鑑定水晶のグレードにもよりますが、概ね簡易鑑定のような内容になるでしょうね。高グレードの物でもスキル名だけでLvまでは表示されないはずです」


この話を踏まえて、俺は改めて自分のスキル欄を眺める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<スキル>

U 完全鑑定 Lvー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここにさらに鑑定を掛けてみると説明文が表示された。


U 完全鑑定

あらゆる情報を看破出来るユニークスキル。

偽装スキルで隠された内容も丸裸にする事が出来、知ろうと思えばさらに詳しい情報を引き出せる。

このスキル保持者が鑑定されたとしても完全鑑定はただの鑑定と扱われ、鑑定した側には鑑定Lv?と表記されて見える。

鑑定水晶で鑑定された場合はスキルLvは表示されない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


はい、ご都合展開いただきました。


要するに、俺が城で受けた鑑定では詳しいスキル内容を把握出来なかったという事か。

俺としては願ったり叶ったりだったわけだな。


さてここからが本番だ。


俺はサクッとクレア嬢を鑑定し、彼女の全てを暴いた。


「さて大きく話は脱線してしまいましたが、改めて交渉をしましょうか…さん?」


「なっ!?」


うん?随分と驚いた様子のクレア嬢だが何かおかしな事を言っただろうか?

俺はただ鑑定で出た結果を踏まえて伝えただけなんだがなぁ?


「どうして私がここのギルドマスターだと?」


「いやいや、私の鑑定でそういう結果が出ただけの話ですよ?」


「私の職業部分は商業ギルド受付嬢にはずなのですが…まさかそれすらも見破るほどのスキルLvだったとは…私、アクセサリーで自分の職業を偽装しているんですよ?それもちょっとやそっとじゃ看破出来ないくらいのアクセサリーで、です」


おっとそれは盲点…でもないな。

俺の鑑定ではしっかりと受付嬢(偽装中)と表記されておりその横に正しい職業名が記されていた。

それが本当の彼女の職業、いや、立場や役職と言ったほうがいいかな?それがこの商業ギルドのギルマスだったという結果だ。


「まぁここだけの話、俺のスキルはユニークスキルらしいのでね。そういった物であれば見破るくらいは朝飯前ですよ」


「ユ、ユニークスキル…ですか…なるほど、合点がいきました。ではくだらない駆け引きは止めにしましょうか…」


「おや?よろしいので?」


個人的には彼女との交渉と駆け引きを楽しみにしていたんだけどなぁ。

思いの外あっさりとクレア嬢は折れたようである。


「良いも悪いも無いですよ…偽装すら見破れるなんて私が何を言ったところでキーダ様には全く通用しないってことじゃないですか…」


そう言って降参といった様子のクレア嬢ががっくりと項垂れる。


いやぁ…

どうもすいませんね!


少しして気を取り直したクレア嬢は、今回の買取査定内容を改めて提示し直してきた。


「それでは今回の査定内容ですが、使用されている金属自体は珍しい物では無いですね…何種類かの合金で作られているようですが、硬貨に刻まれているこの絵柄は私が今まで見てきた中でも全く理解出来ない技術で描かれており、これ一つを取っても美術品として成り立つ代物と言っても過言では無いでしょう。そう言った美術的、技術的観点から総合して、今回この硬貨にはお勉強させていただきまして80万ガーデの値を付けさせていただきたいと思うのですがいかがでしょうか?」


「80万ですか…」


提示された金額を聞いた俺は一言呟き腕を組んで考える仕草をする…


さっき言ってた金額から一気に倍の金額になったぞ!?

良いのかそれで!?

まぁ俺としては高く買い取って貰える分には全く否は無いんだけどね?


「つまり証明書の件も含めると、実質の買取額は40万ガルドって事で間違いないですか?」


「いえ、証明書の件も含めて80万ガーデでの買取価格となります」


ナ、ナンダッテー!?

それじゃギルド側、とゆーかクレア嬢の査定は160万の値を付けたという事になる。

ちょっと俺の考えてた事の斜め上の内容だったな…

どうなってる訳?


「ふふふっ…驚かれていますね?」


「そりゃあ驚きますよ…想像してた価格よりもかなりの高額ですからね…しかし何でまたその様な査定価格となったのでしょうか?俺、気になります」


「そうですね…強いて言うのであれば見栄、でしょうか…初めて私の本当の立場を当てられて悔しかったと言うのが6割、素晴らしい商品であり今後の技術的な発展の可能性を見越しての正当な査定価格が3割、一矢報いてやろうという意地が1割ですね。私これでもかなり悔しいんですよ?」


「なんかすいません…」


どうやらクレア嬢はかなりの負けず嫌いらしい…

口に手を当て「おほほ」と言わんばかりの笑顔であるが、背後に何やら立ち昇るオーラが見えるのは気のせいだろうか…?


「とまぁ戯れはこの辺にして…こちらとしてもキーダ様とはこれからも良い関係を築いていけたらなぁという気持ちも含めての先行投資と思っていただければご納得いただけますでしょうか?」


そう言ってクレア嬢は右手を差し出してくる。

俺としてもギルド側とパイプを持てるのは願ったり叶ったりなので、査定内容の納得とこれからもよろしくお願いしますという意味合いも込めて、差し出された右手を軽く握り返す。


「私としてもこれからお世話になる身として良い関係を続けて行きたいと思っています。こちらこそ改めてよろしくお願いします」


こうしてこの世界では初めての駆け引きというか取引は、若干の寒気を覚えながらも俺の大黒字という形で終わりを迎えるのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


拝読いただきありがとうございます。

前回UPからたくさんの方に応援いただいたおかげでランキングが跳ね上がっておりまして、作者の私は戦々恐々としております。

めっちゃ嬉しいです(*´꒳`*)

気になっているのですが、この小説だけでなく私が書いてる小説は全てiPhoneで入力してUPしているのですが…


皆様、読み難くはないですか?


私としては読み易く面白いをモットーに書いているつもりではあるのですが、こればっかりは読者様それぞれで意見も違うと思うので、差し支えなければご感想いただけると嬉しいですm(_ _)m


面白い、続きが気になる、応援してやんよ!という方は是非↓の星をポチポチポチと推していただけたら幸いです。

感想なども受け付けておりますので、返事はいつでもええでという貴方様は是非感想もお書き添え頂けたら作者は恐らく変なスキップをしながら喜ぶかと思います。

今後もよろしくお願いします〜_(┐「ε:)_


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る