通路での出来事



<鑑定>の結果、俺の前を歩いている人はここにいちゃダメな人でした…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:エリス・デル・デモネスト 16歳

職業:神官(姫巫女)、デモネスト魔帝国第2王女

人種:魔族(皇族)

LV:21


HP:341/341

MP:589/589

力:34

魔力:114

体力:56

敏捷:38

幸運:55

魅力:67


<スキル>

神聖魔法Lv3、闇魔法Lv4、隠蔽Lv9(装備効果)、回復魔法Lv5、魔力上昇Lv2


才能センス>(他者には見えない)

神託オラクル、聖魔適正


<加護>

魔帝の寵愛


所持金:206398G《ガーデ》


装備品

頭:幻惑のサークレット(隠蔽Lv9付与)

武器:理力の杖

胴体:神聖教国の法衣

足:神聖教国の革靴


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちなみにこの鑑定結果はこの人本来のステータスな訳だけど、色々とパワーワードが散りばめられていてツッコミどころが満載すぎて何処から手を付けたらいいのか正直困っている…


だってさぁ…


姫巫女で魔族でその事実を隠蔽してるんだぜ?


あれ?

意外と簡単にまとめられちゃったぞ?

やるじゃないか俺。

ってそうじゃない!


なんで魔族である彼女が敵国の中心地とも言えるこの場所にいるんだよ!?

しかも案内役とか尚更意味が分からん…


「どうかなさいましたか?」


俺が一人で彼女の鑑定内容に首を捻っているとこちらに顔だけ振り向き、で話しかけて来た。


そんなとこまで変えられるとかどんだけだよ…


「いや、なぜの様な方がこんな所で案内役などをされているのかと少し気になりましてね?」


「はて…?それはどういう…」


俺の先程の鑑定水晶での結果を聞いてなかったんだろうか?

それとも自分の正体がバレていないと信じて疑っていないのか…

どちらにせよ、こっちの世界では思うように生きようと思っている俺にとってはこのお姫さんの都合など知ったこっちゃないから聞きたいことを聞くだけなんだけどね。


「あぁ、とぼけなくてもいいですよ?俺のスキルはさっきあの教皇?が言ってたように『鑑定』なんですけど、貴女のその【幻惑のサークレット】?の隠蔽とかも見破っちゃうみたいでしてね?お姫さんのステータスが全部筒抜けで見えてるんですわ」


「っ!?Lv9の隠蔽すら見破るほどの『鑑定』スキル!?そんな規格外な…」


「まぁここに召喚される直前にエルガイアが直々にくれたスキルですからね。俺としては驚きは無いんですけど」


「なるほど…ではやはり貴方が神託の…」


お姫さんは何か納得したように一つ呟くと徐にローブを頭から外し頭部のアクセサリーを外すと外見が大きく変化する。

目の前に現れたのは透き通るような腰まで届く長い銀髪に魔族である証の立派な巻き角を生やした美少女であった。

ゆっくりと見開かれた瞳はルビーを彷彿とさせるような鮮やかなくれないで見るモノ全てを見透かすかのような瞳であった。


と言っても、見透かしているのは鑑定を使った俺の方なんだけど…


「変装を解いて良かったのか?その姿がバレたら大問題だろ」


「この通路は外へと続いているだけで、見張りの兵がいるのもあの先の扉を開けた詰所に数人控えているだけです。もちろんこの通路が監視されていないことは既に調べて把握しているので大丈夫ですよ」


「用意周到だこと…それで?なんで敵国であるこの国にお姫さんのような重要人物がいらっしゃるのでしょうか?」


「それを全て伝えるには少々時間が足りませんので、後ほど貴方様の元へ向かい説明させて頂きたく思います。なので一旦この場では貴方様の所在を追える<追跡トレース>という魔法を掛けさせていただきたいのですがよろしいですか?」


<追跡>なんて魔法もあるのか…

そんな魔法を掛けさせてくれなんて言うって事は、やはりエルガイアが言っていた無能扱いされた者は放逐されるって事で間違いは無さそうだな…


「あ〜…いちおう確認しておきたいんだが…俺はこの後どういった処分がされるんだ?」


「その口ぶりから察するに既にご理解されているとは思いますが、貴方様やこの後の鑑定水晶での結果で非戦闘スキルや非戦闘職の者は仮の身分証をお渡しした上でこの教会総本山から放逐される運びとなっております…」


そう語った彼女の表情は苦虫を噛み潰したようなどこか納得のいかないような表情を浮かべている。

きっと彼女なりに教国側のやり方を蔑視しているんだろう。

確かにこの国の都合で振り回された挙句にいきなりはいさようならでは俺達地球人からしたら納得出来るものではない。

必ずごねる奴が出てくるのが容易に想像出来てしまう。


ま、俺としては大歓迎なんだけどね。


「やっぱりそうなのか…俺は好きに行動して構わないのか?」


「<追跡>を掛けさせていただけるなら何処へ向かおうとも構いません。今日は出来ればこの教都【エルドラド】から出ないようにしていただければ追いかけやすいので助かりますが…」


「ふむ…まぁ俺としては好きに動けるというなら別に問題は無いけど、その<追跡>ってのは俺が何処で何をしているのかが見えるとかって魔法なのか?」


流石に四六時中魔法で監視されるというのは勘弁願いたいし、もし見られてたりしたらおちおち風呂に入ったりも出来んからね…

なぜかって?


言わせんなよ恥ずかしい…


「<追跡>の効果に姿を監視出来るような能力はありません。登録数に限りはありますが、<索敵サーチ>の魔法を使った時に登録されている者がどの場所にいるのかが分かるだけです」


「なるほど…それなら別に問題なさそうだな…分かった、使ってくれ」


「ご協力感謝します…ーーーーー『追跡』」


お姫さんが何やら詠唱的なものを唱えると俺の全身が僅かに淡い緑色の光に包まれてすぐのその現象が治まった。

どうやらこれで俺は索敵対象に登録されたらしい。

その後、俺は再び変装したお姫さんについて行く形で通路を進むこと数分。

外に繋がる扉を開こうとするとお姫さんから小さな声で声を掛けられた。


「(たいした説明も出来なかったこと、大変悔やまれますがどうかご無事で…貴方様に大地母神のご加護があらんことを…)」


俺は色んな意味で苦笑を浮かべる。

その大地母神の加護どころか寵愛なんて貰っちゃってるからな…


「雑用みたいな事させて悪かったね。さんも達者でな」


俺はそう一言お姫さんに伝えると扉を開けて外に出るのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る