最初にすべき事
通路から出た俺はお姫さんの言う通り、すぐそばにある詰所の小窓をノックする。
少しするとやや荒くガラッという音を立てて小窓が開かれた。
「んん?なんだ君は?」
「なんだツィミはってか!?そうでぃす!わたすぃが変なおずさんでぃす!」
「……まぁ、確かに頭のぶっ飛んだ変な奴だってのは間違ってねぇわな…おぉい!誰か来てくれ!」
「すいませんふざけ過ぎました許してください申し訳御座いません」
お決まりのジョークをキレッキレの訛りも加えてぶっ込んではみたものの、やはりというか当然というか、こちらの世界の人には日本人なら伝説的に知られている有名なこのネタすら通じる訳もなく、あっさりと俺は不審者扱いされることになってしまった。
衛兵さんの迅速な行動に焦った俺は速攻で掌を返し、やや後方にジャンプし流れるように正座して頭を下げる。
いわゆるちょっとしたジャンピング土下座って奴だ。
いい歳した大人がふざけちゃうとこうなっちゃうんだな…
いい勉強になったぜ…てへぺりんこ♪
心の中で少し反省して頭を下げていると、警戒したまま衛兵さんが声をかけてくる。
「変な野郎だが改めて聞く…何の用だ?」
「え〜とですね…俺は小鳥遊大樹って名前の一般人なんですが、この度別の世界からこちらの世界に巻き込まれて召喚された者の一人でして、案内の方に連れられてここで話をするよう言われまして」
「あぁ…そういう事か。上の連中がまた碌でも無いことをするってのは聞いていたが…アンタも大変だなぁ」
俺の話を聞いて事情を察したらしい衛兵さんは、呼び出した他の衛兵さんに問題ない事を手振りで伝えて戻らせると、ゴソゴソと何かを探し始める。
ややあって小窓越しに紐を通された木の札のような物を手に持って俺に渡してきた。
「アンタの境遇には同情するが、とりあえずこれを持って首に掛けたらそこの扉から出ていいぞ」
「これは…あぁ、身分証みたいなもんですか」
「そんなところだ。あくまでも仮の身分証だから外に出たら冒険者ギルドか商業ギルドで正式に身分登録したらいいだろうよ」
「なるほど…忠告ありがとうございます…ところで聞きたいんですが、どっちのギルドも登録にお金は掛らんのですか?」
これ大事な事ね。
いざ登録しようにも、俺はこっちの世界のお金なんて一銭も持ち合わせていないのだ。
ついでに言えばこっちの世界の通貨価値も全く分からんしな。
「商業ギルドの方は確か登録に金が必要だったと思うが、冒険者ギルドは名前だけで良かったはずだぞ?」
「ふむふむなるほど…それだけ分かれば何とかなりそうですわ。あぁ、後一つ。それぞれのギルドの場所を教えてくれませんかね?」
その後、衛兵さんにギルドの場所を聞いた俺はようやく外に繋がる扉に手を掛ける。
「達者でな」
「ありがとうございました」
ぶっきらぼうに声を掛けてくれたガラは悪そうだが実は親切な衛兵さんに一礼して礼を述べた俺は扉を開けて外に出るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『条件が達成されたため、スキル【サバイバル術】が解放されました』
外に出た途端、脳内に響くような音声が流れた。
いきなりの出来事に眉間に皺を寄せて首を傾げる。
条件達成?スキル解放?
どういうこっちゃい?
こんな時こそ出番ですよ
「(ステータス)」
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名前:小鳥遊 大樹 35歳
職業:無職
人種:異世界人
LV:1
HP:68/68
MP:150/380
力:80(30+50)
魔力:140
体力:106(56+50)
敏捷:122(47+75)
幸運:100
魅力:5
<スキル>
U 完全鑑定Lvー、サバイバル術Lv10
<
全要素適性
<加護>
大地母神の寵愛
所持金:0G《ガーデ》
装備品:無し
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なんか色々増えとる…
こっちに来てから何かした覚えは全く無いんだが、何故かスキルが生えてきた。
ついでに魔力も最初に見た時よりも大幅に増えていて本当に意味が分からない。
何これどうなってんの?
いくら思い返しても心当たりは見つかるはずもなく、これといった原因は思い浮かばない。
強いて変化と言うならば、こっちに来てから微熱が続いているくらいだろうか?
ただ微熱と言っても思考や行動に差し障りがあるほどではなく、身体が火照るというか汗ばむ程度のものである…
俺、今汗臭くなってんじゃね…?
ヤバい…気になってきた…
とりあえずステータスの変化なんぞを考えるのは後回しにして風呂に入りたくなってきた。
入浴が叶わないならばせめて身体を綺麗に拭きたい。
ならば何をしなければならないか…
それはズバリ!
お金稼ぎでしょう!!
だって金がなきゃ泊まるところもそうだし、あるかは知らんが銭湯…湯屋?みたいな所にも入れないからな!
どこの世界でも何をするにしても金は必要なんだ…
世知辛い世の中だぜ…
という訳で…
衛兵さんに教わった通りに道を進んでいくと、いかにも『商業ギルド』ですよと分かる大きな看板を吊るしている建物に到着した。
え?お前お金持っていないだろって?
ふふん…任せろ、俺にいい考えがある。
お金が無いなら作ればいいじゃない!!
あ、偽造とかそういった犯罪じみた方法じゃないからな?
ほら、商業ギルドって基本的に売買するところな訳で、持ち込んだ物も査定して買い取ってくれるらしいんだよ。
だから手持ちのいらない何かを売りに出せば少しは金を調達出来るって寸法なわけよ。
あわよくばそれで調達した金を使ってそのまま商業ギルドで身分証を作成出来れば一石二鳥ってもんよ。
こっちの世界で生きていくにあたり、俺がエルガイアに聞いたのはギルドの有無だったわけだが、これで何故そんな質問をしたのか理解いただけた事だろう。
では早速こちらの世界では初めての店に突撃するとしますかねぇ?
「ごめんくださぁい」
「いらっしゃいませ、商業ギルド【エルドラド】本店へようこそ。今回担当させて頂くクレアと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」
異世界での初商談…
スタートだぜ!
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