勇者召喚①
とまぁそんなこんなで回想終了っと…
召喚前の状態だったのか、俺が目覚めた時、女性を守るようにしていたのを思い出したんだが、記憶通り俺は女性を抱きしめてぶっ倒れていた。
どうやら意識を取り戻したのはまだ俺だけのようで、俺が抱いている女性も召喚された他のみんなも気を失っているようだった。
何だか熱っぽさを感じながらもずっと女性を抱きしめているのも失礼だと思った俺は、彼女を石畳へそっと横たわらせると身体を起こして周囲をぐるりと観察する。
石造りの壁に囲まれた円形の広場のような場所、周囲には気を失っている十数名の人達、そして俺達を囲うように等間隔で壁際に暗色系のローブを身に纏った杖を持った人が10名程。
あれ?
何気に逃げ道無いんじゃね…?
こいつは困った…
いくらエルガイアにこっちの情報をもらっていたとしても、これじゃあどうしようもないような気が…
いや待て落ち着くんだ俺…
その前にエルガイアは俺に何と言っていた?
たしか『ステータス』と念じて〜とか言ってたはずだ!
などと思っていたら、いきなり俺の視界前面に半透明の窓枠みたいなものが現れた。
(うぉ!?ビックリした!?)
危うく声が漏れそうになり、視線だけ動かして周囲の反応を伺うが、特に何も反応が無かったため内心でホッとする。
(ん〜…この窓枠、周りには見えていないのか?)
それなら好都合と思い、そこに書かれていた内容をサッと流し見た。
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名前:小鳥遊 大樹 35歳
職業:無職
人種:異世界人
LV:1
HP:68/68
MP:150/150
力:30
魔力:90
体力:56
敏捷:47
幸運:100
魅力:5
<スキル>
U 完全鑑定 Lvー
<
全要素適性
<加護>
大地母神の寵愛
所持金:0G《ガーデ》
装備品:無し
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ふむ…
無職で魅力低いって色々と詰んでるんじゃね…?
いやまぁ、そりゃ俺はアラフォーのおっさんっていうのは認めるよ?
でもさ…もうちょっとこう…ねぇ?
えぇ分かってますとも…
これが現実だって言いたいんだろう!?
こんな数字で分かるほど俺は安い男じゃない!!
と、思いたい…切実に…いやマジで…
つか、何でエルガイアから寵愛受けてんだよ…
<加護>通り越して愛されちゃってるじゃないですかヤダー。
などと考えていたら、それなりの時間が経っていたらしく、倒れていた他の人がちらほらと気付き始めて周りがざわざわし出した。
「うぅ…ここは…?私は…」
おや?
どうやら俺が抱いていた女性も目を覚ましたようだ。
彼女は一頻り辺りを見渡すと、すぐ側にいた俺と視線が合い不安そうに尋ねてきた。
「あの…ここは一体どこなんですか…?貴方は何かご存知ですか?」
「ん〜…俺もよく分かってないですねぇ…たぶんとしか言えませんが、同じ電車車両に乗ってた人達がここにいるみたいですけど…」
俺はあえて彼女の質問にこう答えた。
だってこんな状況で俺が詳しく事情を知ってたら怪しさ満点じゃん?
本当はエルガイアに説明してもらったからほぼほぼ事情は知ってるけどさ。
まぁそれはそれ、これはこれ。
俺も巻き込まれた口なんだっていうのをアピールしておかないとなんか不味い気がするんだよな…
不安に駆られている彼女を何とか宥めすかしていると、何やら偉そうな格好をした人物が3人ほどいつの間にか出現していた階段から降りてきた。
「エルドガーデンへようこそ『勇者』の皆様!私はこの【エルドリエ神聖教国】で教皇を務めているフリードリヒ・ノイン・コーデリアと申します。この度は我々の勇者召喚にお応えいただき誠にありがとうございます!」
大袈裟な身振りで自己紹介を進めていく教皇とやらだが、あえて言わせてもらおう。
どう見てもカタギの人間じゃないだろ…
やたら長身で筋骨隆々といっても差し支えないほどの肉体と北欧系の彫りの深い顔立ち、顔の皺を見て想像するに結構な高齢ではなかろうか?
だが、ピンと伸びたその姿勢と体格が本当の歳を感じさせることはない。
やたらと溌剌としているせいか妙な威圧感を発している。
俺達を見渡した後に浮かべた笑顔なんて、事情を知ってる俺じゃなくても悪い顔にしか見えないといういろんな意味で残念な爺さん。
それがフリードリヒなんちゃらさんだった。
「勇者召喚だって!?一体それはどういうことなんだ!?」
なんだかやたらと正義感の強そうな少年がフリーなんちゃらさんに食って掛かっていった。
少年に呼応するように、納得のいっていないらしい他の人達も便乗するように抗議し始めた。
俺?
まぁエルガイアから事情を聞いて知ってるっていうのもあるけど基本的には傍観一択でしょ。
だって拗れちゃいそうでメンドくさいじゃん…
なんて思っていた時期が俺にもありました…
大人しく傍観していた俺だったが、どうにも雲行きが怪しくなってきたんだよね…
フリーなんちゃらさんが抗議を受けながらも俺達に説明した内容はおおよそエルガイアの話と一致している。
だが、このフリーなんちゃら…面倒だからもう
「事情も分からず召喚された皆さんの抗議はごもっともではありますが、皆さんを元いた世界に戻すには、かの魔王を打ち倒し奴の持つ秘宝を用いるしか無いのです!どうか我々に勇者様方のお力を貸しては貰えませぬか?」
魔王の持つ秘宝だと…?
エルガイアはそんな事一言も…
いや待てよ…?
爺の言ったセリフに違和感を覚えた俺は、何となく使い方を知っていた『鑑定』を仕掛けてみた。
対象はもちろん爺だ。
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名前:フリードリヒ・ノイン・コーデリア
職業:エルドリエ神聖教国教皇
人種:人間
<スキル>
神聖魔法Lv8、隷属魔法Lv7、洗脳魔法Lv7、身体強化Lv6、魔力上昇Lv5、交渉Lv9
<才能>
詐術、交渉術
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もう皆さんはお気付きだろうか?
今回仕掛けた『鑑定』は爺のLvやステータスは割愛したが、注目すべきはそこじゃない…
教皇に着いてる人間がエゲツないスキルと才能を所持している件…
いやぁもうね…
この国色々とヤバすぎるだろ!?
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