プロローグ②



「まずは貴方達がどういった経緯で私のいる世界『エルドガーデン』に召喚されたのか説明しますね…まず先に言っておくべき事ですが、貴方達は全員生きています」


エルガイアと名乗る女神様?はそう告げるが、そもそもこの真っ白な空間には見る限りでは俺しかいないように見える。

だが彼女が言うには貴方達、つまり俺以外にも異世界に召喚される人間はいるという事になる。

その事に首を傾げていると彼女は補足するように話し出す。


「貴方達というのはあの大きな箱のような乗り物でいいのでしょうか?大樹さんが乗っていた箱に乗り合わせていた全員です。大樹さんが乗っていた箱が急に横倒しになってしまい、そのタイミングで召喚術式が発動しました」


大きな箱って電車の事か?

とりあえず電車と仮定しておくが、電車が急に横倒しになったって事は脱線事故でも起きたのか?

確かに投げ出されるほどの衝撃だったのでちゃんと確認はしていなかったけど、じゃあ頭をぶつけたのは床じゃなくて電車の窓?

思い出したら後頭部がズキズキしてきた…


つまり、俺と同じ車両に乗っていた全員が召喚対象になったって事でいいのか?それで、どうしてここには俺しかいないんだ?


「あの時に意識のあった対象者が大樹さんだけだったからです。現状、召喚された他の方々の意識は気絶した状態となっており、ここへ呼び出したとしても意味が無かったのです」


ふむ…じゃあ意識があった俺をここに呼んだ理由は?


「呼んだというよりは転移中の貴方の意識を拾い上げたというのが正しいのですけど…あぁ、大樹さんの身体はすでにエルドガーデンへと転移していますよ?」


はい…?

それって大丈夫なのか?

身体だけ異世界に行ってて意識が別空間にあるってそれ死んじゃってませんかね?


「所謂幽体離脱というやつでしょうかね?だから大丈夫です」


いい笑顔浮かべてるけど、それ仮死状態だからね!?

死ぬ一歩手前の状態だから全然大丈夫じゃないからね!?


「じゃあ手短にお話ししますが…」


なんかいきなり態度が雑ぅぅぅぅ!!


「もう!話が進まないじゃないですか!少し大人しくしていてください!」


えええええぇぇぇぇぇぇぇ!?

これ俺が悪いの!?

はいはい分かりましたよ…

黙ってOHANASI聞きますよ…


「まぁ、さっきも言った通り、貴方の精神をこちらに呼んだのはエルドガーデンについての説明をするためです。エルドガーデンは大樹さんのいた地球よりも下位の世界に当たり、そのため転移や召喚で呼び出された異世界人の方々には様々な能力が与えられるのです」


まぁ割とお約束な展開ですなぁ…

チート能力で俺tueeeee!とかはラノベの中ではテンプレテンプレ…


「その能力は各々で変わってきますが、どれも強力な能力であるのは間違いありません。大樹さんの場合であれば…地球にいた頃の行いのせいか、スキルではなく才能センスの方に割り振られているようですね」


え…

俺、スキル持ってないの…?

つか才能センスってなんぞ?


「才能というのは生まれ持っての資質とでも言いましょうか?例えば火属性魔法の適性があれば他者よりも上手く火属性魔法を使用出来、その成長率にも補正が掛かり成長しやすいといった具合ですね」


ははぁ…なるほど?

それで?俺のその才能ってのはなんじゃらほい?


「大樹さんの才能は『全要素適性』と出ていますね」


全要素って事はつまり…

どういう事だってばよ?


「大樹さんのやる気次第で何でも出来るようになるという事ですよ。心当たりはあるのでは?もっとも全て一から育てていく形にはなりますが、極論で言えば最終的に全てのスキルを覚えることが出来るということですね」


サラッとすごいこと言っちゃってますけど…

まぁたぶん俺自身がいろんな仕事を経験したからこそのその才能なのかも知れないが…

そのエルドガーデンとやら的にはその才能は問題はないのでしょうか?


「全くありませんね。むしろ喜ばしい事です。ですが、私個人の意見としてはこの後に訪れる場所の者達への協力はお勧め出来ませんが…」


またサラッと問題発言してますけど…

俺達を呼んだとこって問題ある場所なの?


「そこがこの説明でもっとも大事な部分となるのです。大樹さん達を呼び出した国、国名が『エルドリエ神聖教国』という国なのですが、召喚した目的というのが他国への武力支配、つまりは戦争の駒として利用するために召喚を行なったのです。この他国というのは魔族が住む国である『デモネスト帝国』と呼ばれる魔帝が統べる国なのですが、その国への侵略が目的とされています」


oh…りありぃ?


要するに俺達地球人はその戦争に強制参加させられちゃう訳ですかい…


「戦闘に役立つスキルを持つ異世界人であればそうなるでしょう。ですが、逆に役に立たないと判断されればそのまま放逐して知らぬフリをする算段のようですね」


マジか…

やる事クズ過ぎやしませんかねぇ?

右も左も分からん世界でいきなり放り出された日にゃ、いくら役立つチートスキルとか持ってても生きていくのは困難だろうに…


「呼び出された異世界人の中には数名ほど戦闘に役立たないスキルを所持して召喚されている方がいらっしゃいます」


ちょっと待って欲しい…

ちょっ待てよ!!

今、俺も含めて戦闘に役立たないスキル云々って…

つまり俺ってば放逐確定って事!?


「そうなりますね」


oh…

神様なんていなかった…


「私が女神ですが」


そうでした…

あまりにもザックリとし過ぎてて女神だって事を忘れてしまってたわ〜

いや〜無いわ〜…

望んだわけでも無いのにいきなり召喚されたと思ったら戦えないからいらねっポイッされちゃうとか無いわ〜


「ふふふ…そんな大樹さんにぃぃぃ…ビッグチャンス!」


なんかこの女神めっちゃノリ良いんですけどぉぉぉぉ!!

両手でサムズアップしながらテヘペロしちゃってますもん…


「今なら私の権限でお好きなスキルをプレゼントしちゃいますよ?」


な、何だってぇぇぇぇ!?

いやぁ、でもそれ…お高いんでしょう…?


「今ならなんと100%OFFの大特価!!」


や、やっすぅぅぅぅい!!

100%OFFってそれもうタダじゃん!?

つかなんでそんな古いネタ知ってんだよ?

異世界の女神じゃねぇのかよ!?


「たまに地球を覗き見たりしてたので…」


いきなり頬を赤く染めて恥じらい出した…

可愛いかよ!?


「可愛いだなんて…そんなぁ…だ、大樹さんもその…カッコいい…ですよ?」


え…?あ、はい…

き、急に褒めたって嬉しくなんかないんだからね!?


「男性のツンデレは需要があるのでしょうか?」


急に冷静!?


「まぁ冗談はこのくらいにして…」


冗談だったの!?

ひどい…もてあそばれた…


「大樹さんの反応が良くてつい…」


時を戻そう…


あ〜…それで?

スキルを貰えるんだっけ?

ちなみに言語理解とか読み書きとかは向こうに行ったらどうなってるんだ?


「その辺は異世界召喚特典のようなもので言葉も読み書きも問題無く理解出来るようになっていますね。せっかく喚び出しても話が通じないようではそれこそお話になりませんので」


そりゃ確かにそうだな。

つまりそれ以外のスキルって事かぁ…

じゃあスキルを決める前に一つ質問いいか?


「スリーサイズと体重と年齢は教えませんよ?」


聞こうとも思ってないよ!?


「彼氏も旦那もいませんよ」


聞いてすらいないよ!?

あれ?でもたしか大地神って…


「創成期の話からしましょうか?」


いやすんません…

気にした俺が間違ってました…(ガクガク)


話から察するに、エルドガーデンってとこはおそらくファンタジー世界みたいな感じで剣と魔法のある世界なんだろう。

となると俺が聞きたいのは『冒険者ギルド』とか『商人ギルド』みたいな組織はあるのかって事なんだけど…


「どちらもありますよ」


やっぱりか。

じゃあ俺が選ぶスキルはアレしかないな。


「え…?本当にそのスキルで良いのですか?」


もちろんですとも。

そもそも戦争になんて参加したくもないし、俺は悠々自適にスローライフを味わいたいんでね。

どうせ放逐されるのが確定してるなら俺は自由気ままにエルドガーデンとやらを満喫してやりますとも。

どの道地球じゃそんな生活出来っこなかった訳だしちょうどいい。


「そうですか…大樹さんは変わった人なのですね…(そこが面白いとも言えますが…)」


なんとなくディスられてるような気がしないでもないが…

まぁいいさ。

ひと思いにやっちゃってくれ。


「それでは…」


おぉ?

なんかよく分からんけど何かが流れ込んできたな。


「これでスキルは付与されました。少しだけオマケをしておいたので向こうに着いたら『ステータス』と念じてみてくださいね?」


オマケですと?

まぁ貰えるものはありがたく貰うというのが俺スタイル。

どうもありがとう。


「ふふっ…久々に楽しませてくれたお礼とでも思っていてください。それではいつまでもこうしていると身体に戻れなくなってしまうので向こうへ送りますね?大樹さんに幸多からんことを」


へ?

戻れなくなるとか最後に怖い事言うのやめてくれよ!!

うぉ!?

なんか俺の身体が薄くなってるような…





アッーーーーーーーー……




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