集団異世界召喚に巻き込まれた35歳アラフォーおっさんは、スローライフを送るために全力で集団から遠ざかるために頑張ります?

銀狐@にゃ〜さん

異世界召喚

プロローグ①




「どういう状況なのかねぇ…これは…」


若干頭に熱っぽさを覚えながらも上半身を起こし目の前の惨状というか非常識な状況にまだ少し痛む後頭部をがりがりと掻き毟る。

俺の目の前には、俺を含めておよそ十数名程の人間が倒れている。

年齢層はバラバラで若い人で十代半ば、上は50代後半のような人もいる。

それもそのはずで、今にいる人間は俺も含めて同じ空間にいた人達だからだ。


少し頭を整理しよう…


俺は誰だ?

小鳥遊大樹たかなしだいき35歳、独身。

夢は悠々自適なスローライフを送ること。

ぱっと見はどこにでもいそうなおっさんだし、いい歳して定職にも着かずにフリーター生活をずっと続けている、言い方は悪いが完全なる負け組だな…

幸いなのはアラフォーの割にはメタボという訳でもなく、色々な仕事を経験しているせいか身体つきは悪くは無い。

むしろ引き締まってる方だ。

顔は…彼女もいたことがあるから悪い方では無い…と思いたい…。

あと童貞ではない。


自己分析はとりあえず問題無いな。

次は今の状況について確認しなきゃならないだろう。


今俺が立っているのは石造りの壁に囲まれた円形の広場のような場所だ。

ぐるりと周囲を見回してみると、足元には気を失っている十数名の人達、そして俺達を囲うように等間隔で壁際に暗色系のローブを身に纏った杖を持った人が10名程。


ふむぅ…

どうやらの言った通り、俺達は異世界に召喚されたらしい…


こうなる直前に俺はある女性と面会していたのだが、俺はそこでこの異世界召喚について彼女から説明をされていたのだ。

その時のことも踏まえて、日本にいた時から今に至るまでの経緯を思い出してみよう…




時刻は夕方6時を少し過ぎたくらいだっただろうか?

俺は帰宅のために電車に乗っていた。

いつもであれば帰宅ラッシュの時間帯もあってシートに座れずに吊り革を手に取って船を漕いでいるところだったが、この日は運良く空いていて俺でもシートに座れるくらいに余裕があった。

朝からのロングタイムでパートに入っていた俺だが、定時でパート先を退店すると夕飯を食べて行こうと思い、近くのファーストフード店に入り夕飯を済ませた。

店を出て駅に着く時にはちょうど乗る予定の電車がホームに入って来るところで、少し急ぎ目で乗り込んだのだが、急いで乗り込んだ割には座席が空いていて拍子抜けしたものだ。


ともあれ、パートで疲れていた俺は空いていたシートにもたれかかると軽く仮眠をしようと思い瞳を閉じた。


しばらくして電車に揺られていると急に車内が衝撃に襲われた。

あまりの衝撃に座っていた俺もシートから投げ出され、完全に油断していたせいか後頭部を強かに打ち付けて悶絶していたところに加えて押し潰されるような感覚に襲われた。

何事かと思い後頭部の痛みに耐えながらも俺を押し潰す原因を確かめるべく目を開けた。

すると俺の上にはバランスを崩して転んだらしい女性が覆い被さっていた。


(おおぅ…この胸元の柔らかな感触は…)


反射的に守ろうとしたのか、俺の手は女性の肩を抱きしめるように抱いており、俺を下敷きにしてうつ伏せで覆い被さる彼女の豊かな双丘が形をぐにゃりと変形させて俺の胸に押し付けられているといった状態である。


そんなラッキースケベに目を白黒させていると、突如眩しい閃光に包まれ、俺は再び目を閉じる事となる。


少しの時間が経ち明るさに慣れてきた頃、俺は恐る恐る瞳をこじ開けた。

俺が目にしたのは辺り一面真っ白な何も無い空間だったが、その中に一人だけ異様な雰囲気を纏った女性が佇んでいた。

女性と目が合うと彼女は徐にこう告げた。


「急にこんなところに呼び出してしまってごめんなさいね?私の名前はエルガイア、あなたの住んでる世界とは別の世界の大地母神を勤める女神…と言えば伝わるかしら?」


「……なんですと?」


彼女のあまりに急展開な自己紹介に俺の思考が追いつかない…

まずは別の世界って何ぞそれ?

嗜む程度にラノベとか読んだりしてたけど、そういう俗に言う異世界転移とかそう言う感じのアレだろうか?

でもそう言う話って大体は主人公が死んでたりするんだよね…

って事は何か?

俺ってば死んじゃったわけ…?


「色々と混乱しているかとは思いますが、大樹さんは死んでなんていませんよ?」


俺の考えていた事が分かったのか、エルガイアと名乗った女性は苦笑を浮かべていた。


「まずは貴方の身に何が起きているのか…その説明をいたしましょう…」


そう言って彼女は俺に今の俺が置かれている状況を教えてくれた。




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