第100話 社畜、結婚する?
「娘を、よろしく頼む。」
「うちの子を、何卒宜しくお願いします。」
お義父様に合わせ、お義母様も頭を下げる。
「あ、頭を上げてください!! こちらこそ、よろしくおねがいします。」
俺は驚く暇もなく慌ててお二人に声をかけ、自分も深く頭を下げる。
「私からも。こんなに好きになれる人は初めてなの。だから、よろしくおねがいします。」
ずっと静かに事を見守っていたさくやさんも、床に手をついて頭を下げた。
この場にいる四人がみんな頭を下げているこの状況。傍から見たら何があったのかと思われてしまうだろう。
しばらくそうしていると、誰からともなく頭を上げた。
「君の覚悟は分かったし、いつまでも認めないほど堅物ではない。私も結婚する時、少し無茶をしたからな。」
「いつの話をしているんですか」
俺の方を見据えて話すお義父様に、お義母様がほんのりと頬を染めてツッコむ。
おっと、惚気けか?
関からやられるとグーパンを喰らわせたくなるが、お義父様達のを見ていると仲睦まじく微笑ましい気持ちというか、羨ましく思う。
将来こんなふうに……ってそれはまだ早いか。
「それで、いつ式を挙げるんだ?」
……は?
「6月になると混みそうですし、早めがいいんじゃないかしら。」
…………ひ?
ちょ、ちょっと待ってくれ。
お二人とも何を仰っているのだろうか。
確かにご両親に挨拶とか今までのやり取りとか、それっぽくはあるが、あまりにも急すぎないか。
というか、意外とノリ気なんですね……。
俺は困惑しながら助けを求めるようにさくやさんの方を向く。
彼女もいきなりの展開に戸惑っているに違い無い……ってあれ?
さくやさんはモジモジと指を遊ばせながら、頬を赤く染めてまんざらでもない表情でこちらを見ている。
………………ふぇ?
ま、マジですか……。
「い、今はまだその……」
俺はやんわりとまだその気はないことを伝えようとするが、
「どうしますか?」
「どうするんだ?」
「どうしましょうか?」
ご両親方お二人に加えてさくやさんからも熱い視線を飛ばされてしまう。
こうなったからには、もうはぐらかすことはできないですよね……。
俺は頭を回して、考えに考える。
多分お義父様を説得させようとしたときに匹敵するくらい考えている。
「……す、少しお時間をください。今すぐには決められませんが、持ち帰って前向きに検討します。」
そして考えに考えた末、そんな伸びに伸びた先方との会議の締めの一言のような言葉でお茶を濁した。
男らしくないのは分かるが、流石にここで即決できるほど俺は強いメンタルしてなかった。
お豆腐もびっくりの弱々メンタルなんだから、これでも頑張ったほうだ。
それに……そういうことは、やっぱり俺から言いたかったし……。
「いやいや、急ぎすぎてしまったすまない。でも、今の言葉ゆめゆめ忘れるなよ。」
お義父様は俺の言葉に満足したように顔を綻ばせた後、鬼も逃げ出すような形相でこちらを睨みつけた。
「あらあら〜」
お義母様はそれを咎めるでもなく、頬に手を当ててこちらに微笑んでいる。ただ、その瞳は笑っていない。
「は、はい」
俺はお二人の圧力と、横から飛んでくるさくやさんの期待の視線に、よわよわしくそう返すことしかできなかった。
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いつもより遅くてごめんなさい!!
大事なところなので、再確認しているうちに時間が経ってしまっていました。
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