第97話 さくやさんのご実家
そういう事情がありまして。
あれよあれよとさくやさんに連れられて、ついに親御さんとご対面とまでなったわけです。
初めての香川と恋人のご実家ということでとても緊張していたのだが、入り口に立ったときにそれらは全て吹っ飛んだ。
明らかに大きな門。
明らかに歴史のある門。
明らかに普通の家にはない門。
明らかに名家にしかないであろう門。
それを見た瞬間にすべてを悟った。
あぁ、俺トンデモねぇ人と付き合ってんだなと。
『どうかしましたか?』
と、さくやさんが何気ない顔で門を見上げているのを見て、再び思った。
やはり、俺はとんでもない人に恋したのだと。
あれですね、さくやさんお嬢様ですね。
かなりのご名家のお嬢様でございますね。
今まで過ごしてきて、感覚的には一般人っぽかったけど、まさかまさかパンピーじゃなかったとは。
『この門がどうかしましたか? ちょっと古いのはご愛嬌です。』
そう少し恥ずかしそうに言われても、北海道のしがない農家生まれの俺にはどうリアクションすればいいのかわからないです。
とりあえず、『いや、素晴らしい門だなと思いまして』と誤魔化しておいた。
そして門をくぐったのですが、目念入りにお手入れされた日本庭園に、こちらも手入れの行き届いた年季の入った厳かな平屋。
本当に倒れるかと思ったよ。こんなのアニメの世界だけにしてほしかった。
ガチもんの豪邸ですな。
俺は心臓バクバクのままいよいよ、お家へと足を踏み入れた。
さすがに玄関開いたらズラーッと使用人と言うわけではなく、お義母様がお出迎えしてくださった。
お義母様はとても穏やかでおしとやかな方で、とても優しそうな雰囲気漂っていた。
ただ、何というか。どうあがいても逆らえないような圧倒的強者感は感じた。強かそうである。
そのままお義母様に連れられてお部屋に入り、お義父様とお会いすることになったのだが。
明らかに機嫌が悪い。
大事な娘が男を連れてくるということで喜ばしくないのは分かるが、それにしても明らかに機嫌が悪い。
お義父様は家の当主らしい威厳のある面持ちをされているので、そんな方に入室と同時に睨まれれば、いくら鍛え上げられた社畜戦士だとしても、怯んでしまう。
頑張って負けないように耐えていたら、しばらくして緩めてくれたので良かったが。
さて、ここまでである程度の状況は整理できたであろう。
その上で、
「…………」
未だに無言でこちらを見つめ続ける、お義父様。
「あらぁ……」
優しいようで何かを含んだ笑みで微笑み続ける、お義母様。
「んぅ……」
そして、納得できないとばかりに頬をふくらませる、さくやさん。
その姿はとても愛らしいのだが、この場はその可愛らしさでも打ち消せないほど修羅場であった。
さて、では改めて言おう――――
――――どうしてこうなった?
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