第53話 メニューを決めようかなと

諸々の予定を決めた日から数日が経ち。

変わらないゆったりとした日常を送っていたある日。


俺は珍しく紙とペンを持って机に向き合い、頭を悩ませていた。


「どうしよう……」


目の前に置かれた紙には『メニュー案』とだけ書かれて、それ以外は真っ白のまま。


喫茶店を出すに当たって、珈琲系はもちろんだけど、せっかくならそれ以外にモーニングとかそういったご飯系も出したらと言う話になり、俺は頭を悩ましているのだ。


神之さんに聞いたけど、あの人は色んな意味でレベルが違くて参考にならなかった。


スペイン風オムレツとか、そんなもの自炊弱者の俺には到底作れる気がしない。


料理は努力の積み重ねと言われるかもしれないが、お客様に出すものだから失敗できないのだよ。

開店して落ち着いてきたら、そういうちゃんとした料理にも挑戦しようと思うけど、最初は簡単なもので行きたい。


「喫茶店といえば……モーニングにナポリタン。あとは、パフェとか?」


いかんせん、東京にずっといて社畜やってましたんで、喫茶店なんてオシャレなところに行ったことがないから、よく分からない。


スターバ○クスとかのなんとかフラペチーノとかは無理だからな。行ったことなんて数回しかないし、その時も会社の付き合いで行ったからまともな記憶がない。


なんか甘い飲み物を飲んだ記憶はある。


「あとは、パンケーキね。」


パンケーーーーーーーキッ。


伸ばしたのに特に意味はない。ただ、やってみたかったんです。


喫茶店でパンケーキとはあまり王道ではないかもしれないが、何を隠そう。神之さんのやっていた頃、お店の看板商品がパンケーキとブラック珈琲だったらしい。


ほんのり甘くて、そばにはちみつがおいてあるようなパンケーキ。


小麦粉農家さんとかはちみつ農家さんとは、神之さんが連絡を取ってくれるらしいから、あとは俺がどうにかするだけなんだけど。


「そんなオシャレなもん作ったことないんだよな。」


食べたことだって、子供の頃の数回のみで、大人になってからはまぁない。


子供がマ○クでハッピーセ○トと一緒に食べてるのを見たことはあるけど。


「とりあえず、パンケーキは必須。あとは、ナポリタンとモーニングとおにぎり、軽くパフェと和菓子でもあればいいかな。」


俺はそうつぶやいて、紙にペンを走らせていく。


あまり字がうまい方ではないけど、縦に書けばそれっぽく見える。普通に飾っとけば、メニューと思ってもらえるくらいの出来栄え。


まあ、本当にかけるやつはちゃんと木で作って、文字も印刷すると思うけど。


「これだけあれば、主食とデザート。そのどっちにも和洋が揃うだろ。」


パスタはイタリアだろとか。そもそも、ナポリタンは日本発祥というツッコミは受け付けておりません。


「とりあえず、一通り作ってみるか。幸いなことに、神之さんのレシピはあるし。」


スペイン風オムレツとかはレシピがあっても作れないけど、さっき言ったのなら頑張れば行けそうな気が……する。多分。


「とにかく、やるしかないよな。」


俺は気を引き締めて、キッチンへと向かった。

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