第52話 話し合イークア

「なるほどですね。」


「これでなんとかまとまりそうですか。」


「長いようで短かったですね。」


俺と雪さん。それと、途中から戻ってきた神之さんはお互いの顔を見合って、強く頷き合う。


話すこと数時間。

休むことなく色々なことを決めていった。


話していくうちにどんどんと考えが広がっていって、一時期はとんでもない金額に行きかけたけど、そこもなんとか削って調整し。最後には丁度よくまとめられたと思う。


遊び心を持ちながらも、予算は守る。


まだまだ不安な点もあるが、今から完成が楽しみだ。


「では、一月ひとつき以内を目標として。」


雪さんが資料の束を机で揃えながら言う。


大幅な改修とかはしないけど、椅子に机などを揃えて、色んな業者さんとの連絡とか諸々合わせたら、一ヶ月でも早いほうだろう。


「よろしくおねがいします。」


俺は改めて頭を下げた。


「こちらこそ。よろしくおねがいします。」


「よろしくおねがいします。」


それに合わせて神之さんと雪さんも、頭を下げる。


「では、これで。」


「私もこの辺で。」


帰る準備を始めた雪さんに合わせて、俺も支度をする。


あんまり長くいても迷惑だろうし。


朝来て、もう昼過ぎだから、お家に帰ってお昼ごはんの用意だ。


「お疲れさまでした。」


手を振ってくれる神之さんに、手を振り返して俺は部屋を出た。


とうとうここまで来た。

あとは専門家である雪さんに任せるのみ。


俺は家で珈琲淹れて、諸々の調整をするだけだな。


俺は清々しい気分で神之さんの家を出た。




 ◇ ◇ ◇



「ただいま」


俺は家について玄関で言う。

もちろん、返ってくる声はない。


その代わりに、


「みゃーお」


そんな可愛らしい鳴き声が返事をしてくれた。


「ただいまー」


俺はイークアに駆け寄って、抱き上げる。


拾ったときには子猫だったのに、生き物の成長というのは早いもので。もうすっかり大きくなってる。


まだ完全に大人とまでは行かないけど、ほぼ大人。これからはご飯をあげすぎて太らせないようにしないとな。


俺は彼の柔らかくぷにぷにのお腹を見て思う。


ご飯はちゃんとあげないとダメだけど、可愛いからっておやつとかあげすぎてもおデブさんになっちゃうからな。


太るハゲる。俺もそんな言葉に胸が痛くなるお年頃。


まだ髪はあるし、お腹も大丈夫だけど。これから年をとるに連れてどんどんヤバくなってくからな、早め早めが大事だよ。


そもそもタバコは煙が無理で吸えないし、お酒はすぐ酔っ払うからだめで飲めないから、そこら辺の心配はいらない。


ただ、太るのは……あまり動かない身としては耳が痛い。


せっかく時間があるんだし、散歩するか。


俺はイークアとじゃれながらそんなことを思った。


「でもその前に、昼飯だよな。」


人間食わないとやってられないのです。

俺は鼻歌交じりに、手を洗いに洗面所に向かった。


今日もいい一日だ!

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