第50話 墾田永年設備の注文

東海道中膝栗毛。


それは東海道の中の膝の栗毛。


社会の時間に習って、言ってみたい単語ランキング第二位。一位は、墾田永年私財法。


私財法しざいほうと言うか、私財しざいほうと言うかで年代がバレたりバレなったり。


ちなみに、俺は私財しざいほうだった。


そんなことはどうでも良くて。


無事にお家につきました。

特筆することはなく、行きの道を逆に来ただけ。


橋渡って暗いなーと思い、四国について四国だなーと思い、松山に来て県庁所在地だなーと思い、家について疲れたなーと思う。


ごくごく普通の人生。

恥も多くなければ、山も谷もさほどないような人生です。


ただ、元ブラック社畜で、現億万長者なのはかなり珍しいと思う。


というか、億万長者ってどこからが億万長者なのだろうか。億と万ってことだから、10億持ってる俺は余裕で億万長者なのかしら。


けど、その理屈で言えば一万持ってれば億万長者だよね。それならそこら中にいっぱいいるのでは?


わりと気になることではあるけど、調べるまでは行かない。


「さーて寝るか。」


風呂もちゃちゃっと入って、歯もちゃちゃっと磨いて、あとやることはない。


「イークア、おやすみ」


「みゃー」


布団に入ってきた飼い猫のイークアの体を軽く撫でて、俺は目を閉じた。


さらば今日。よろしく明日。




 ◇ ◇ ◇



「ふぁぁ……朝か」


俺は背伸びをしながら、窓から注がれる日光を見る。


別に良い夢も悪い夢も見ずに、ぐっすりと眠れました。


「よぉし、頑張るかぁ」


さっきから頑張る頑張るうるさいと思うかもしれないが、これは俺の口癖なのだ。


結構ブラックに勤めてる人は、これが口癖なことがある。


頑張る。なんとかする。大丈夫。


そう言って、半ば自分に洗脳をかける形で、仕事をやり遂げるのだ。


皆様の周りの人がこれを言い出したら、是非ともお話を聞いてあげてほしい。


俺はちょっとためになるブラックあるあるを披露して、朝のルーティーンを済ましていく。


ご飯歯磨き着替えに洗濯?


とにかく、毎朝無意識にやるような事だ。


そうこうしていたら、結構時間って経ってるよね。


会社にいた頃は、お昼休憩までの残り10分があんなに長くて辛かったのに、不思議なものだ。


「さて、やることを確認しないとな。」


何をするにしても、目標を決めタスクを決めないと始まらない。


今回の目標は、開店できるところまで持っていくこと。


現状、俺の技術はお墨付きをもらっているから、あとはこのお店の設備をどうにかすればいいだけだな。


前にも言ったように、珈琲関連のものは充実しすぎるくらいに、たくさんあるからイジらなくて大丈夫。


必要なのは、椅子とか机とか、キッチンの珈琲以外の設備とかだな。


あとは、消耗品の類。


「どこに頼めばいいのやら。」


そうやって迷ったときに活躍するのが。そう、神之さんだ。


困ったらなんか言ってねって言ってくれていたし、こういうときこそ頼らにゃ損損。同じ阿呆なら踊らりゃ損損。


「いざ参らん。」


俺は善は急げと、用意をして家を出た。

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