第49話 母をたずねてヒーロシマー
母をたずねて三千里。
一理が約4キロなので、大体1万2千キロメートル。
流石にそんな距離を歩んだわけじゃないけど、ちゃんと今治の先っぽまで来た。
てか言っちゃえば、もう橋を渡り始めております。
春の夜の瀬戸内海の海。
その文字列だけで心が浮き立つ人も多いかもしれないけど、実際来てみた感想としては、海だなー暗いなーと。
見てみればわかる。夜の海って、思ってる以上に何も見えないから。
車の光とか橋の光とかあっても、結構見えない。
「ふんふふーん」
適当に鼻歌を歌いながら、橋を進んでいく。
俺のイメージだと、こういう橋って真っ直ぐなのかと思ってたけど、実際には結構曲がってるんだね。
もちろん、橋の途中で曲がったりはしないけど、間間の島のところで曲がることが多々ある。
でもすごいよな。瀬戸内海とはいえ、海に橋を通してこんな簡単に行けるようにするなんて。
人類の進歩というか、科学の真髄というか。
マジスゲーって感じ。
「結構人通りあるな。」
この場合、相手も自分も車だから人通りという言葉があっているのか分からないけど、橋を渡っている車の数は多い。
半分くらいはトラック。あとは乗用車とか土木工事に使いそうなおっきい機械とか様々。
今のシーズン引っ越しとか多そうだしな。それも関係してるのかも。
「そんなこんなしてたら、もうすぐで陸だ。四国脱出!」
俺は道路に掲げられた看板を見て言う。
あと10キロで、広島。本州か。
少し前までは本州にいることが基本で、外に出ること自体が珍しかったから、なんか変な感覚だ。
歩くときの10キロは、お星さまが見えるくらいに大変だけど、車の10キロは案外あっという間だ。
これこそ文明の利器。
「んー、ついたぁー!!」
俺は早々にあった道の駅によって、背伸びをする。
瀬戸内海を渡りきって、本州は広島まで来たのだ!
俺なにげに、広島に来るのこれが初めてかもしれない。
新幹線とかで通ったことはちょくちょくあるかもだけど、ちゃんと降りることは初めてかも。
まあ、今回もすぐに戻るんですけどね。
「んはぁ、海の匂いだなぁ」
なんとも言えない香り。
どんな海行ってもこの匂いするよね。
それは海が繋がってるからなのか、全部日本の近くの海で海外のは違うのか。
地味に気になるところ。
「さて、帰るか」
俺は社畜時代に言うことは稀だった、帰宅の言葉をつぶやいて、車に乗った。
「はーるばる来たぜ、ヒーロシマー」
即興替え歌をかまして、車を発進させる。
家帰って寝て。明日から頑張ろうか。
もうちょいで、開店だからね。頑張らんと。
俺は気を引き締めて、ハンドルを握り直した。
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