第46話 車だ車!!カルマじゃないよ!車だよ!
「お待ちしておりました。」
迎えた一週間後。
中古車販売店さんに訪れると、待ち構えていたと言わんばかりにもはや顔なじみのお兄さんが出迎えてくれた。
「早速お車の方向かいましょうか。」
お兄さんとともに、建物の方に向かっていく。
前回行った店舗のほうじゃなく、その隣りにある整備場みたいなとこ。
最終整備を終えた我が車は、そこに置かれているらしい。
俺はワクワクとした気分で歩く。
「こちらですっ!!」
お兄さんは整備場の端っこを指さして言う。
そこには、洗浄されて以前見たときとは比べ物にならない輝きを放つライトバンがあった。
こういうとき、スポーツカーとかなら格好いいんだろうが残念。真っ白な車体に、下部分には黒のカバー。赤のランプがアクセントのライトバンです。
でもやっぱり俺は好きだよ、こういうの。
なんか、ただのシンプルじゃなくて、最高まで無駄を削ぎ落としたゆえのシンプルみたいな感じがするから。
「最終調整として、細かい部分のパーツ交換や点検。あとは、洗車と消臭を徹底いたしました。どうです? 見違えるようでしょ。」
お兄さんは誇らしげな笑みを浮かべて言う。
「はい、すごい綺麗ですね。」
これにはあっぱれとしか言いようがない。
正直、中古車販売店で安い車を買ったら安物買いの銭失い、安かろう悪かろうで対応とかもまぁまぁだと思っていたけど、こんなにしっかり対応してくれるなんて。
「中の方もどうぞご覧ください。」
車の鍵を開けて、お兄さんは俺を運転席に入れる。
「しっかり清掃と消臭を行いましたから。新車さながらですよ。」
そうお兄さんが言うように、前回は感じたうっすら残る他人の家の匂いのような、独特な香りが完全に除去されて、車の匂いのみが漂っている。
シートとかもカバーが付けられていて、この姿で新車として置かれていても遜色ない感じ。
「すごいですねぇ」
俺は、カーナビやハンドル。アクセルにブレーキの踏み心地なんかを確かめて、車を降りた。
「では、こちらお車の
わざわざ、鍵をリングに通して、ふかふかな台に乗せてお兄さんが渡してくれた。
「ありがとうございます。」
俺は緊張しながら鍵を持ち上げる。
ずっしりと、鍵そのものだけじゃない重みが感じられる。
俺、車買ったんだな。
夢のマイカーだ……。
俺は改めてそんな事を強く実感した。
「こちらもどうぞ。」
俺が惚れ惚れしい気持ちで鍵を見つめていると、お兄さんがとある物を渡してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
それは、俺が車を買うとともに購入した、初心者マーク。通称若葉マークだった。
黄色と緑のそのマークは、初心者を表す印で、法律でつけることが決められている。
俺は地上から0.4m以上1.2m以下の位置という道路交通法を厳守して、前後どちらにもしっかりと貼り付ける。
すごい、これを貼るだけで一気に『新人営業マンの車感』が増すな。
俺はいつか見た新入社員くんの車を思い浮かべて笑った。
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