第39話 後輩と何もせず
「で、何やんだ?」
一息ついたところで、俺は関に訪ねた。
「何があるんですか?」
オウム返しをして尋ね返す関。
そりゃ、住んでて詳しいのは俺なんだし、俺に聞くよな。
「海と山。」
俺はぱっと思い浮かんだ単語を2つ述べる。
あとは、田んぼに畑に川とかが思い浮かんだ。
「ざっくりっすね。もっと細かく言うと?」
「下灘駅、道の駅ふたみ、棚田、
笑って尋ねる関に、俺は固有名詞で返事をする。
最初の2つは、海に近くて有名で、あとの2つは山、緑、草。って感じの自然だ。
「うわあ、固有名詞のオンパレード。どれがオススメです?」
関はケラケラと笑って、オススメを尋ねてくる。
「俺的には、
「それはなぜ?」
俺が腕を組みながら答えると、やつはその理由を聞いてきた。
「約1200年前の
俺は息をつかずに、まくし立てるように言い切った。
よく噛まなかったと、自分で自分を褒めてやりたい。
「前後の語彙力の格差ヤバいですね。とにかく、そこがオススメなのはわかりました。で、どんくらい遠いです?」
「約数キロ。歩いたら数十分間。」
都会的感覚で尋ねたであろう関に、無情な現実を叩きつける。
もち、東京のようなどこ行くにも通ってる電車なんてないから。
けど、俺が思うにこれでもまだ優しい方だよ。
二桁行かないんだもん、頑張れば歩けるくらいの距離じゃん。
「うわ、アバウト。けど、行き帰りで結構ありますね。しかも車は……」
「ないな。」
少し気体目につぶやいた関へ、俺は無慈悲な勧告をする。
車はないぞ。運転免許証なら持ってるけど。
ちゃんと、マニュアルも乗れるやつね。
どうしようかと、歩いてまで観光に行くか行かまいかを考えたであろう関は、数秒の沈黙の後。
「……先輩、久しぶりに将棋でもします?」
苦笑と共にそんな提案をした。
「おう。そうしとけ。また、俺が車を手に入れたらくりゃいいさ。」
俺ははなからそのつもりだったので、関が血迷って歩き始めなくてよかったと頷く。
「ありがとうございます。」
田舎に来て、後輩先輩だった俺と関は、立場など気にせず普通にボードゲームを楽しんでいた。
なお、結果は連戦連敗。
オレが弱いのではなく、やつがうまいということだけ言っておく。
そのあと色々……はなく、夜ご飯の前にやつは帰っていった。
課長から電話がかかってきてたし、なによりもとから日帰りの予定だったのだろう。
いやぁ、昔というほど昔ではなくても、懐かしい人と会うと楽しいな。
そんなことを思いつつ、俺はその日は早めに床についた。
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