第38話 後輩とお家へ
「ついたぞ。」
数分………いや数十分。場合によっては数時間歩いたところで、俺は関に声をかけた。
俺としてはもう見慣れた光景見慣れた景色で歩き慣れた距離だから、大して疲れもしないのだが。
「はぁ……はぁ……遠い……っすね。」
都会育ち都会住みの関にはキツイようで、息を切らしている。
東京のサラリーマンって、以外と歩くもんだが、こっちみたいな細くて角度の有る道は歩き慣れないだろう。俺もそうだった。
「だから言っただろ。田舎に車は必須だって。」
「いや、田舎に住んでんのも車持ってないのも先輩でしょ?」
俺は、肩で息をする関を見ながら笑うが、普通に正論で反論された。
「あっ、たしかにそうだな。」
俺はヤツに指摘されて真面目に今気がついた。
「「あはははは」」
関もネタだと思っていたらしく、それがマジと分かって、声を上げて笑っていた。
こうやって、しょうもないことで笑い会えるのはいいよな。
「てか、デカくないですか?」
一通り笑ったあと、関が俺の家兼店舗を見上げて言う。
「あぁ、言ってなかったっけ。俺ここで喫茶店開くんだ。だから大きめ。」
俺は、家の鍵を開けて中に入りながら答えた。
「えー、あの社畜オブ社畜と言われた先輩が喫茶店ですか。世の中わからないものですね。」
内装を見回しながら、しみじみつぶやく関。
「そう褒めるなって。なんか飲むか?」
「褒めてねぇよ。じゃあコーヒーで。」
カウンターで照れながら頭をかいた俺に、席が冷静なツッコミをかます。
たしかに、世の中で社畜というのは会社の家畜という意味で蔑称かもしれんが、俺は好きだぞ。
なんか、よく働いてそうでいいじゃん。
…………こんなんだから、社畜やってたのかな……。
俺はなにか真理に辿り着いたような気がしながら、自分と関の二人分、珈琲を淹れる。
「ちゃんと豆から淹れるんすね。」
俺の手つきを見ながら、関心したようにつぶやいた関。
「ここの前のオーナーさんから、直々に教わってるから。そこらのインスタントとはものが違うぜ。」
俺はドヤ顔気味に笑ってやる。
「ほぇー。」
「はいできた。」
間抜けな声を出した関に、淹れたてほやほやを差し出す。
「あざす」
ヤツはちょいっと頭を下げると、ブラックのまま飲み始めた。
ミルクとか砂糖もつけてるけど、やっぱ最初はブラックか。
俺らが働いてたところも、ブラックだしな。がはははははは。
…………ごめんじゃん
俺は一人でボケて一人で笑い一人でツッコむ、ある意味地産地消をして、珈琲を飲む。
うん。変わらない味。
「うまいです。」
「あたぼうよ。」
俺らは珈琲とともに田舎のひとときを満喫したのだった。
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