第15話 猫猫にゃーにゃ

「お前どうしたんだ?」


頭を下げて、ダンボールの中の猫と目線を合わせる。


「ニャー」


「おっ、かわいいじゃねぇか」


真っ白……とまでは行かなくても、白と灰色の中間みたいな色をした、猫が捨てられていた。


「ペット………ペットかぁ。今まで欲しくても飼えなかったけど………。」


俺がそう言いながら前に進むと、猫の視線も合わせて動く。


「…………ずるいじゃん。猫の上目遣いとかずるいじゃん。」


しょうがないなと、拾ってくださいと書かれた段ボールごと猫を持ち上げた。


「よっし!! 俺のオンボロアパートまで行くぞ!!」


俺と猫の距離が近くなったことで、


「ニャー!!!」


「あ、いでっ!!」


俺は顔に傷を負う事になった。



 ◇ ◇ ◇ 



「くっそー、この猫ひっかきやがった……。」


「ニャー!!!」


こいつニャーしか言わないな。


拾ったはいいものの飼い方も何もわからなかったから、そこはグー○ル先生に尋ねて、キャットフードを与えてみた。


こいつは一応大人らしいし、ダンボールに入ってたってことは元々飼い猫だってことだから、いきなりキャットフードでいいみたい。


「ニャー!!」


「はいはい、お注ぎいたしますね。………お前ふてぶてしいな。」


足りないんだけどとでもいいたげな表情で、小皿を傾けるので、俺はそこに追加分を注ぐ。


「ニャー………にゃ…」


「寝たか。」


こういうのっていきなり寝るもんなんだな。


ついさっきまでご飯に夢中だったのに、コテンと首ごと折れて寝てしまった。


「うちのアパートって、ペット可…………だよな?」


社会人がペットを買うとなると、そこがネックだよな。


賃貸は特にそこらへんキツめ。


「うちは確か、大家さんに言えばいいんだよな。」


確認のため、棚から何年も前にしまったまま見ていない契約書を引っ張り出す。


「えーっと…………やっぱそうだな。」


契約書の下の方に太文字で、『ペット可』って書いてある。


「明日言いに行くか。ついでに退去のことも言っておこう。」


あと一週間ほどで部長さんに退社届を叩きつけ、今月中には退社し、この暑苦しい東京からおさらばだ!!


色々決めたりしてから行ったほうが良いような気もするが、俺は行動派。やってみて決めればいい。


夢の田舎暮らしを手に入れる!!!!


「それはそうと、俺も寝ようか。」


なんだかんだと時間は過ぎ、時刻はすでに12時前。


そろそろ眠くなってくる。


「おやすみ。」


久し振りに誰かに言うおやすみは、心地よかった。


…………まぁ、ペット相手なんだけど。

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