第13話 助ける!英語で言うとhelpする!

あっぶねぇ、もう少し遅かったら間に合わなかったわ。


俺はさくやさんの頭の上で男の手を握り考える。

ったく、握るなら男のじゃなくて女の人のが良かったな。


「おい、人の女に手出すな。」


やっべ、雰囲気で人の女とか言っちゃった。俺、殺されるんじゃねぇ?

男の手を捻り、少し痛くする。


「な、なんだよお前!! 暴行罪だぞ!」


「そうかもだな。でもその前にお前も彼女に対して犯罪犯してるだろ?」


何に当てはまるかは知らんが、何かしらの犯罪だろう。多分。


「っ! うっせー!!」


男は握られてない方の手で殴りかかってくるが、俺はそれも手のひらで止めて、男の鳩尾に軽く膝蹴りをする。


「ぐはぁ」


男は口から変なものを出して、その場にくたばった。

自業自得だろう。


「あの………これ、どうぞ。」


俺は当初の目的を果たすため、ハンカチを渡す。


「え、あのその………。ありがとうございます。」


「いえいえ。それじゃあ、おやすみなさい。」


俺は男を背中に担いでその場から立ち去る。


「あの!連絡先を!!!」


少し歩いたところでさくやさんの声が聞こえた。


「会社ですけど、03-2224-9584です。」


「ありがとうございます。」


携帯の方は覚えてないので、会社の個人回線を教えた。



 ◇ ◇ ◇ 



「ふぃー、ちかれたちかれた。」


家について、スーツを脱ぎ、風呂に入り、葉を磨き完璧にぐだる準備が整った俺はテレビをつける。


「冬は嫌だねぇ。」


こたつに入り、ゴロンと寝転がる。


あのあと、酔っぱらいは警察に突き出して保護してもらった。


犯罪云々は証拠もないのでただ渡しただけだ。


「今日も一日ありがとうございました。」


神棚に祀った宝くじさんに向けて手をたたき、俺は目を閉じた。


こたつっていい感じに温くて眠くなるよね。





 ◇ ◇ ◇ 


sideさくや




「な、なんだよお前!!暴行罪だぞ!」


殴る手を止めてくれた北原さんに酔っぱらいが言う。


「そうかもだな。でもその前にお前も彼女に対して犯罪犯してるだろ?」


そう言ったまさやさんはかっこよかった。


「っ!うっせー!!」


酔っぱらいは殴りかかる。


危ない!


私はまた目をつむるが、聞こえてきたのはペチンという軽い音だった。

恐る恐る目を開ける。


「ぐはぁ」


見えたのは、地面にはいつくばった男と北原さんだけった。


「あの………これ、どうぞ。」


酔っぱらいを撃退してくれた彼は、ポケットから私のハンカチを取り出して、渡した。


「え、あのその………。ありがとうございます。」


何か言おうとするが、何も出てこず、感謝の言葉だけを述べた。


「いえいえ。それじゃあおやすみなさい。」


北原さんは誇ることもなく、男を背負って立ち去ろうとしていた。


「あの!連絡先を!!!」


気がついたらそう叫んでいた。

なんだろう、このまま彼を離してしまうのはもったいないというか、なんというか…………。


とにかく、嫌だったのだ。


彼は振り返り、大きな声で言う。


「会社ですけど、03-2224-9584です。」


「ありがとうございます。」


携帯の番号は教えてもらえなかったが、一応連絡先は手に入れた。


北原きたはら 将也まさや

私はその名前を少しだけ意識し始めた。



















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記載された電話番号は架空のものであり、実在する個人、企業、団体に一切の関係は御座いません。

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