第10話 話しかけてみよう!

「ちーっす、なんか発展あったか?」


部屋に静かに入り、関に語りかける。


「おぉ先輩カッコいいじゃないですか。いっつもそれならモテますよ。多分。」


「っせ、イケメンが言うな皮肉に聞こえる。」


「はは、なんかすみません。」


ニンヤリと笑う関。


「まじでうっせー。……はぁ、行くか。」


「女の子に話しかけんのに、ため息つかないでくださいよ。」


「それもそうか、じゃあ行ってくる。」


「ファイトです先輩。連絡先、ゲットしてくださいね。」


チラッと正面のさくやさんをみる。


なかなか噛み切れないモツと格闘中。

あれってムカつくよな。わかる。


俺はそーっと、机の向かい側まで行って、声をかける。


「は、はじめまして。銀銀銀行の北原将也きたはらまさやと申します。」


やべぇ初手やらかしたかも。


「ご丁寧にどうも。海々銀行の波 咲夜なみさくやです。」


ここまでは社会人の初対面テンプレだ。さぁ、ここからどうするかが天下分け目の関ヶ原だぞ。


少しフランク目に話しかけるか、このまま堅めに行くか。


「どうされたんですか?」


俺が悩んでるうちにさくやさんが話しかけてくれた。


「いや、なんと言うかまわりが固まってたので、話しかけてみようかなーと思いまして。はい。すみません。」


「なんで謝るんですか。でも、すごいですよね。私は人と付き合うのが苦手なのであんなふうにすぐに仲良くなったり、ベッタリくっついたりは出来ません。」


さくやさんがみつめるのは、あーんをしあっている若者たち。


「ああいうの羨ましいというか、すごいと思いますよね。私もどちらかというと仕事が恋人のタイプなので。」


「仕事が恋人ですか。面白い人ですね。ふふ」


おっ、なんか良く分からんが俺の社畜トークがお気に召したみたいだ。


「まだ28なんですけどね、何というか若さが羨ましいですよ。」


「そうですね。いいですよね。」


しみじみと頷くさくやさん。いやあんた若いだろうに。


「さくやさんはお若いじゃないですか。」


「若いですか……。」


あれ? 俺なんか地雷踏んだ? やっぱ女の人に年齢の話題はNGだった?


「すみませんすみません。本当にすみません。」


こういうときは必殺『平謝り』だ。これを先にする事によって責めづらくなるから、覚えておこう!


「だから、謝らないでください。ただ、若いなんて言われなれないもので戸惑っただけです。だって私ももう27ですもの。」


「へ? うそ。」


やべ、素が出ちゃった。


さくやさんはピチピチのお肌と美しいお顔をされている。


22とかの新入社員に混じっていても、生暖かい目線で見れるくらいにはお若い。


「ふふふ、嘘じゃないですよ。」


「あっ、いや疑ったわけじゃないんです。ただ、お若いなと思って。」


「そうですか。ありがとうございます。」


ふふ、と笑うさくやさんはキレイだった。

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