第8話 若いってえぇな
ジュー
「それでですね、俺が言ったんですよ……」
ジュー
「すごーい!!」
ジュー
「先輩」
ジュー
「先輩、先輩……」
ジュー
「北原くん、データ送ったよ」
「はっ! 課長!!? ってなんだ関か。驚かすなよ。」
コンパの雰囲気に飲まれぬよう一人で黙々と肉を焼いて、みんなが取るスペースに置き、それがなくなる前に補充して、1枚もなくなったらだめRTAをしていたら、関に話しかけられた。
「あーぁ、俺の記録52枚だ。お前のせいだぞ関。」
大学の頃は70くらいまで行けたのに。
「先輩何してんすか? 彼女作るために来たんでしょう?」
呆れ顔の関に怒られる。
「いやでもさぁ、りりさんとるいくん。ゆきこさんといちいくん、はなさんとはいちくん。あいりさんと部長、みつりさんとお前がなんかいい雰囲気だから、俺のやることといえば、焼肉名物肉切らしたらだめRTAくらいじゃないか?」
「ほんと、何やってんすかあんた。そんな悲しい名物ないですって。」
うわ、後輩にあんたとか言われた。泣いちゃうわ。
「ほら、さくやさんが残ってるじゃないですか? なかなかに可愛いですし、行きましょうよ。」
コンパが始まってからかなり時間は経過し、俺と関以外は席を入れ替えて、仲いい二人で隣り合ったり、向かい合ったりで座っている。
俺の前には、ちびちびと一人焼酎を舐めるさくやさん。
関の隣にはみつりさんがいて、関の腕によりかかりお熱の様子。
「おまえこそ、こんな社畜先輩にかまってないで、女の子にかまってやれよ。」
俺の言葉に関は少し顔を近づけて言う。
「もう連絡先交換しましたし、このあとの予定もつけてあるんでいいんですよ。」
「くぁー、若いっていいねぇ。俺もそんな人生歩みたかったよ。」
俺は気晴らしにジョッキに入った紅茶を飲む。
うん。いつもと変わらない味だ!!
「先輩だってまだ二十代じゃないですか。ほら、話しかけてくださいよ。」
「えー、何話せばいいか分からないし、俺と彼女じゃ年の差があるし、第一こんなおじさんに話しかけられて嬉しい人なんていないでしょ。」
俺はちゃんと分析のできる男だ。
自分の顔のレベルはよーくわかっている。
「先輩だってそこそこにカッコイイですよ。ほら、トイレ行ってネクタイちゃんと締めて、Yシャツ整えて、ジャケット羽織ってきてください。そしたら、話しかけて連絡先を聞く。ここまでが今日の業務です。」
関はほら行った行ったと、背中を押す。
「俺、残業を生きがいにしてるようなもんだから、そんなすぐに終わるタスクやりたくないんだが。」
「うるさいですよ。仕事はなるべく早く。あんま残業しすぎると課長からまたお小言言われますよ。」
俺はドヤ顔で振り返る。
「でーじょぶだ! 俺、できる社畜だから。タイムカードを一回押して会社から出るふりをしてから、裏道でオフィスに戻るルート確保してる!!」
「何してんすか!! だから課長が記録と実測がズレてるってぼやいてんですよ!」
「しゃーねーだろ、残業しなきゃ終わんねぇんだから!!」
俺は残りの紅茶を飲み干して、部屋を出た。
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