第4話 夢は大きく

「嘘だろ、嘘だろ、マジなの? おいおいおい、まじで俺億万長者? 何々怖い怖い怖い、命狙われる!? 10億、10億円!!!!!!!!」


傍から見れば、一人家の中で叫んでるおじさんのほうが怖いだろう。


俺もそう思う。


でも、考えてみろよ。

リーマンの生涯獲得賃金が2億前後。そして俺が手に入れたのは10億円。


つまり、つまりだよ。


変に豪遊でもしなければ、俺は人生を無労働で5回繰り返せるんだぜ!?


「いよっほぉぉぉい!!! 10億さぁいこぉぉううう!!!」


俺は手に持つ宝くじ3枚を見つめる。


「受け取りまでは約一週間。その間これをなんとしてでも死守しなければ!」


隠すとしたらどこがいい?


風呂の上?

布団の下?

スマホケース?

押し入れの奥?


どこがいい…………………。



 ◇ ◇ ◇ 



「お願いします。お守りください。」


パチンパチンと手を叩いてお祈りする。


宝くじは結局部屋の隅の小さな神棚に祀ることにした。


変に隠すより、神様に守ってもらったほうがえぇやろ。


「ふぅ、一件落着。あとは、今日明日を普通に過ごし、会社でも一週間何食わぬ顔で仕事をして、日曜にみずのは銀行の支店に印鑑とか諸々持って行って金を受け取りそのまま口座にINする。その後1月15日位まで働き、そこで一身上の都合として退職届を出す。そしたら、月末には退職できる。よーし完璧だ。完璧な作戦だ!!」


確か辞めたい日の14日前に退職届を出せばいいんだよな?


辞めたあとはどうするかな?


まず東京には居たくない。

何が嬉しくて、こんな空気が不味くて人がいっぱいの窮屈な場所に骨を埋めにゃあならんのだ。


そうだなぁ、四国とかいいかな? あぁ愛媛いいなぁ。


うん、愛媛にしよう。


自動車の免許取って、中古でいいから安いバンを買って、ちょっと良さげな家を買う。


何も仕事しないなんてのは嫌だからな。なんかしよう。


俺ができてなおかつ苦にならなそうで、続けられること。


………子供の頃、一時期喫茶店に憧れてたよな。


よし。喫茶店を開こう。

あんまり人が来ない喫茶店だ。


少し広めの土地で軽く農業とかもしようかな。

太るのは嫌だし、せっかくお金をゲットしたんだから長生きしよう。


あぁ、結婚したいなぁ。


彼女とかどーでもいいから結婚したい。

優しくて、堅実な奥さん。

俺は浮気絶対ダメマンだから、相手も浮気しなければいいな。


お金のことは………黙っておこう。カネ目当ての女に良いやつは居ないからな。


嫁と大きいもふもふの犬と、将来には子供と田舎で暮らす。


「そんな夢が叶うといいな。」


俺はもう一度神棚の宝くじ様にお祈りした。

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