第3話 あ、当たった

「ぷはぁー!!! やふみだぁぁ!!」


休みと言おうとしてやふみと言ってしまったとか、細かいことは良いんだ。


本日12月31日と、1月1日は休みなのだ!!!!


まぁ、逆を返せばそれ以外は出勤なのだが。

俺の愛しの三箇日を返せよ!!


「ぶはぁぁぁ!!! やっぱこれだよなぁ!!」


大晦日特番のバラエティー番組を見ながらの、酎ハイ………ではなく緑茶。


俺は酒が飲めんのだ。

タバコ、酒、女とは縁のない人生だった。


いや、ちゃんと理由があるのだ。


タバコは健康に悪いイメージで吸ってない、酒は居酒屋の匂いだけで酔うから飲めなくて、女は…………なんでだろうなぁ?


顔は中の中……と思いたい。

年収400万。

身長172cm。

旧帝大出身。


なかなかの平凡物件じゃないか?


そこまで劣ってるとこもないと思うんだがな。

これが、ただ出会いがないとかならいいんだが、明らかに臭いとかなんかキモいとかの理由でモテないんだったら凹む。


どれくらい凹むかというと、寝込む為に定時に帰るくらいには凹む。


「ふぁぁぁあ、休みだァァ」


久しぶりに我が家のカーペットと戯れようと、倒れ込む。


『それでね…………今年の宝くじは…』


倒れた時にチャンネルを変えてしまったようだ。

バラエティからニュースになってる。


『今年は一等前後賞合わせて10億円ですからね。』


「おぉ!! 宝くじかぁ! 探してこよ」


俺は夢を入れたコートのポケットをまさぐる。


いや、忘れてたわけじゃない。年末調整が辛くて忘れてたとかではない。断じてない。


「おっあった!!!」


袋ごとクシャクシャになっているが、無事に見つかった。


『今年の一等は……』


テレビ番組も丁度番号発表みたいだ。


カーペットに座り込み、袋から中身を取り出す。


111組

314158


111組

314159


111組

314160


取り出した3枚の紙にはそう書いてあった。


これに対する俺の言葉は一つ。


『「いや!円周率やんけ!!!」』


へっ?


俺の叫び声に重なるようにテレビの声が聞こえる。


急いで目線を向けると、コメンテーターのハゲオヤジが『いやー、こんな偶然あるんですね。一等が314159なんて』と額をふきふき話している。


『そうですねぇ。すごいですね。今年の当選番号は、111組の314159です。』


と、女性アナウンサー


「う、うそだろ」


俺はすぐに手元の宝くじを見る。


111組

314159


変わっていない。俺の手元にある宝くじはテレビに大きく映し出された文字と全く一緒だ。


よし、落ち着け落ち着くんだ。

今年買ったのだから、去年のだったというオチはない。


周りを見渡そう。

カメラは…………ないな。


じゃあ次だ。買ってるくじの種類。

俺は手元のくじをもう一度、穴が空きそうなほど見つめる。


多分大学受験のときでもこんな見なかったと思う。


年末ジャンボ宝くじだよな。そうだよな。

テレビに映ってるのも年末ジャンボ宝くじ。


「ふぅ、落ち着くんだ俺。」


俺は一息つこうと、お茶を口に含み、


「や、やった、やったぞ、やったんだ!!!!! 俺は10億の男だァァァァァァ!!!!!!!」


人生最大の音量で叫んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る