【詩集】ノートの遺した傷

旅人と

安宿の休憩室は人見知りを忘れさせる

出会ったばかりの旅人と会って

飲みに行った

シュノーケルをあげるよ、いっぱい死んでるよ

明日台湾に行く船に乗るんだ

チケットは取ってないけど

なんとかなるさって

安宿の安さは七泊一万円

荷物を置いてキャンプに行く人

移住のために部屋を探す人

とりあえず来た人

そう、典型的な人もいるぞ

神戸でウェイトレスをやってる女の子は

失恋したから来たんだ

皆で近くの公園に行って

星を見た

僕らは恋人にならない

旅人だから

星を見るだけでよかったんだ

一つ自分のルールを決めていた

旅人に連絡先を聞かない

旅に酔っている間の

限定的な家族なんだ

こんなことがあったんだ

知り合った人と人と食事に行って

好きだった幼馴染が沖縄に行ったんだけど

連絡先も知らなくてって

なんてよくある話だったんだけど

あっ

ていうんだよ

カウンターの方見ていったんだよ

そこにいたんだよ

まじかよ

その子はエイサーの練習の前らしくて

人生で初めて背中押したよ

わかってたんだ、あの子はモテる

沖縄でモテてるって

でもさ、こんな運命的な再会に

冷静になる旅人なんていないだろ

だからさ

旅人同士

またどこかで会うかもしれないだろ

すれ違っても気づけないんだけどさ

三途の川でもいいや

もらったシュノーケルで

潜ってみるさ

帰ってきたら

もう旅人じゃないから

誰にも話しかけられずに

ニコニコ動画を観てる

知らない誰かが旅してる

動画を観ているんだ