オリジナルリュック

いくつものリュックがいる

青白い人々を従えて

改札を抜けさせて

自転車をこがせて

信号を足早に歩かせて

リュックは駅から去っていく


一つだけ取り残されたリュックが

青白い人を公園のベンチに座らせる

散歩をさせている犬が一瞥する

子供に漕がせているブランコは

空に近づいたとき雲を確認し

地面に近づいてリュックを笑った


リュックは口を大きく開けさせて

アルバムを取り出させた

リュックは一度長い旅をした

大きく重い水筒や

黒くてごわごわした折り畳み傘を

食べたり吐いたりしながら


風を吹かせた木々が揺れて

木々を揺らした星が回る

リュックは時の流れを緩めさせるため

銀河の傾きを変えさせた

天の川交通を運休させて

ダ・ヴィンチの魂を足止めさせた


リュックは笑えなかった

リュックは笑おうとした

変わってしまった

変えられてしまった世界の中で

誰も笑わせてくれない

誰かを笑わせたくもない

リュックが

消えた

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