11話 さよなら


(11月29日(月) 1時間目後)


満「ねえ隆、茜ちゃんって、どこに住んでるか分かる?」


隆「おいおい満、やるなぁ!」隆は笑みを浮かべながら答える。遠くから我が子を見るかのように微笑んでるのがムカつく。


満「勘違いすんなよ!これ返すためだよ!」


茜ちゃんが手首につけていた「水色のビーズのブレスレット」を見せ、(手を繋いだくだり)は伝えず、「忘れ物を返却したい旨」を説明した。


隆はつまんなそうに答える「了解、てか俺がバイトの時間に返しといてやるよ」


満「あざっす!じゃあ頼むわ」そういってブレスレットを隆に渡した。


本当は自分から渡したかったが、これ以上隆に色々詮索されそうなのが嫌なので、隆に任せる事にした。


なぜだか、心にぽっかり穴が空いてしまったような気がした。


「これで良かったんだ」そう自分に言い聞かせて、満はこの件は忘れる事に強く決めた。


〜〜〜


PM 17:00 ダニーズ(ファミレス)


隆「おはようございます!」


店員達「おはよう!」「おはようございます!」「隆ー早くしろー」

従業員達の声があちこちから聞こえる。


休憩室では、茜と由美子が準備をしていた(2人も17:00からのシフト)。


茜・由美子「おはよう!」


隆「おはよう!昨日は楽しかったね」


「あ、そうだ!これ満が忘れ物だって」水色のビーズのブレスレットを隆は茜に渡した。


茜「ありがとう!」


隆「満に伝えとくよ、てか遅刻!やばいー」


台風のように隆は去っていった。


〜〜〜


(11月29日(月) PM19:00)


満は夕食を早めに切り上げて、急いで自分の部屋に戻ると、頭を抱えてパソコン画面の「株価チャート」を眺めていた。


「評価損益額 -13,520,981」


過去最高のマイナス額である。

資産の10%以上のマイナスはこれまで経験した事が無かった。


先週仕掛けていた大手旅行会社HILへの「空売り」が、本日格安プランが好調というリリースからストップ高となってしまったからだ。


「親父の年収3年分を2日で失ってしまう・・・」


Twitterへ「-1300」とだけ記載して、そのまま携帯を放り投げて眠りについた。


〜〜〜〜


(11月30日(火) 8:30)


満は頭を抱えていた。


なんと、携帯を家に忘れてきてしまったのだ。そして何より今日が中間テストの為早退が出来ない。


「全てが終わった」


「-1300万の損失が倍になってしまう最悪の想定」を満は繰り返し考えていた。


何も考える気力がなくなり、テストはほとんど適当に記入していた。




「全てが終わった。。。」







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