プロローグ 2

 

 俺が12歳。穂乃果は施設ここから離れて里親の方へと移住する前日。荷物をまとめていた。

 一応力仕事が欲しいと職員さんに頼まれて俺は穂乃果の部屋にいた。

 あらから荷物はもこうの家に届けていたからほとんどすることはなかった。

幸助こうすけ……」

 教科書をとかプリントを整理されてる中、名前を呼ばれ振り向く。

「ん? なに穂乃果?」

「……ありがとうね」

「いいよ。穂乃果が好きだっていってたから俺が手伝えば長く見れるから」

「うん。私、この場所が大好きだな……」

 その言葉を聞いてよく本心だっていうのはわかった。この子供たちが喧嘩になった真っ先に仲介に入り話を否定しないで聞いてくれたりそれでも怒るときは怒ったりした。他の子の勉強とか遊びに付き合ってくれてみんなのお姉さん。そんな感じだった。

「……私の話。聞いてくれる?」

「いいよ」

 こう、話をしてくれるということは本人が何か言いたいことなんだと思う。

「あのね――」

 今までこの施設に育った思い出。前の親が怖かった話。新しい親になってくれると言ってた人に対しての不安。その不安からもし耐えられなくなったら怖い。そう話をしてくれた。

「……私、向こうで生活できるのかな」

「……んん」

 なんて言ったら良いのか言葉が思いつかなかった。

 言葉にしたい。けど、どう表現すれば良いのか当時の俺にはよくわからなかった。

 ふと穂乃果がいつもしていることを頭によぎった。

『流石、私の弟!』

 よく人が出る言葉とか言動は日常的に出るもの、

「不安だったら俺が穂乃果の弟になるよ」

「えっ……」

 弟……。多分、穂乃果にとって弟っていうのが安心する言葉で人なんだと思った。

「私の本当の弟になってくれる……の?」

「なるよ。穂乃果の弟として、なるよ。なにかあったら駆けつける」

「――っ!」

 そう言った瞬間。穂乃果の顔が不安からどんどん安心していた顔になっていった。

「こうすけ、大好きだよ…………」

 そしてギュッと抱きしめられてた。

「……うん」

 穂乃果が俺の服を握りしめながら泣いていて俺は彼女の頭を優しく。一日中、そばにいた。



 そして明日になり玄関を出るとき最後の挨拶をしていた。

 同じ施設の低学年や高学年の子供たちが穂乃果のところに集まっていて服とか手を握っていた。

「穂乃果ちゃん行かないで」

「嫌だよっ‼ なんで行っちゃうの!」

「……ありがとうね。心配してくれて」

 その子供たちに穂乃果が背中をトントンと優しく撫でていた。

「穂乃果……」

 この施設の管理をしている珠良たまよさんが穂乃果の方へと近づいていった。

「珠良さん……。今までありがとうございます」

「私の知り合いの人だけど。もしなにかあったら、いつでも戻っていいからね」

「――っ! ……うん」

 珠良を聞いて力一杯。小さく頷いた。

「本当にお世話になりました」

 穂乃果をそのままみんなに手を振って歩いて行った。

  

 ◇


 穂乃果が出て3年後。珠良さんから呼び出された。

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