第5話

俺と朱凛は街に入ってまず宿屋を探し、一旦荷物を置いて街にいる間の拠点作りをする事にした。

わりとリーズナブルで綺麗な宿屋を見つけた。朱凛は、部屋に入るとはしゃぎだした。

「ねぇシンク!なんだか修学旅行みたいだね!すごーく楽しい!!」

そう言って、ニッコリ微笑む。

修学旅行ってのがよくわからんが、朱凛が喜んでくれてるならいいか。

俺は、はしゃぐ朱凛を適当に相手しながら別の事を考えていた。

さて、これからどうするかな。

早速情報屋と会うか、それともさっきの門番と会って、この街の事を聞き出すか。いや!やっぱり順番的に朱凛の服かな。そして、約束通り美味い食べ物をたらふくご馳走してやるか!やっと考えがまとまった。

「よし!朱凛!早速服買いに出掛けるか?その後ご馳走食べに行くぞ!!」

そう声を掛けると、荷物を片付けていた朱凛の瞳がキラキラ輝き出した。

「本当ー??やったーー!!嬉しい!!特別にシンクのリクエストも1着だけ聞いてあげる!!あ、でもバニーガールとか、あんまりセクシーなのはダメね!」あーあー全く何を言っているんだか。俺はそんなセクシーなのには興味ないんだよ。可愛いのがいいな。プニプニの朱凛に似合うふんわりとした可愛い服!真っ白なワンピースとか、ピンクのひらひらしたスカートとか。そんな想像をしていたら、

「あー!何かシンクニヤニヤしてる!セクシーなの想像してるんでしょ??私着ないからね!!」と少し怒った顔をしている。

「大丈夫だ!安心しろ!俺はセクシーには全く興味がない。朱凛に似合う可愛いの選ぼうな!」

すると安心したのか、ほっとした顔をして、「さすがシンク!よーし!じゃあ早速出発だね!!」

「そうだな!店選びは俺に任せておけ!知ってる店があるんだ!」

そして俺達は買い物に出掛けた。

2人並んで、ウィンドウショッピングをしながら進み、一軒の大きなピンクの建物の前まで来た。

この店は変わらないな。マリアと来たあの時のまま。同じ店を選ぶのはやっぱ俺デリカシーないのかな。

でも他に女の子の服売ってる店なんて知らないしな。前の店長のノアは隣の国の新店舗に移ったと聞いている。何人かいた他の店員も一緒に連れて行ったらしいから、この店に俺を知ってる店員はもういないはずだ。

ドアを開けた。中は可愛い洋服で埋め尽くされている。本当この店は品揃え豊富だよなー。朱凛も喜ぶはず!そう思い隣を見ると、朱凛はキョロキョロあたりを見回し、

「シンクー!やばい!まさか、こんなにすごい素敵な店がこの異世界にあるなんて!私のいま世界のお店より充実してるかもー!早速見てまわってくるね!」そう言うが早いかあっという間に朱凛はいなくなった。

この店は見応えあるからなー。さて

俺は窓側のソファで一休みしてるか!

と、ソファに腰を掛けたところで、

「あれ?シンクさん?」

と声を掛けられた。この声はまさか、振り向くとやっぱり見覚えのある顔。前の店長ノアだった。なんでここにいるんだよー。隣の国に行ったはずじゃないのかよ!そんな心の声を読んだように、ノアはさらに言葉を続けた。

「シンクさん、そんな嫌な顔しないでよー!たまたまこっちに用事があって寄っただけなの!すぐまた隣の国に帰るから!でもバッチリ見ちゃった!女の子と一緒なんですね!しかも、マリアさん以外の!あ、大丈夫です!もしマリアさんに会っても内緒にしておきますから!」そう早口でまくしたて、ノアは店から出て行った。

俺は結局一言も言葉を発せなかった。

ノアはマリアが消えた事を知らない。

話す気もないが。なんだか少し寂しい気持ちになった時、山程服を抱えた朱凛が戻ってきた。「シンクー!大量だよ!大豊作!あ、大収穫かな?まーどっちでもいいか!こんなに買える?どれか諦めた方がいいかな?」少し心配そうに俺の顔を覗き込む。

あーー本当可愛いやつだな。

俺は実はかなり金持ちだったりする。

それも使命のおかげだけどな。

「全部買っていいぞ!よし会計してくるか!」そして全部袋に入れてもらい会計を済ませ店を出た。

「気に入った服たくさんあって良かったな!あ、ところで俺のリクエストはどうなったんだ??1着リクエスト聞いてくれるんじゃなかったのか?」

すると朱凛は、「ごめん!何かいざとなると恥ずかしくて!でも勝手にだけどシンクが好きそうな服選んでおいたから!」いやいや。俺好みの服って、俺達まだ会ってそんなに時間経ってないしわからんだろ。そう思ったけど、無性にその言葉が嬉しくて不覚に泣きそうになった。おいおい、嘘だろ。あーでもさっきマリアを思い出して少し寂しくなった後だからかな。ノアと会ったのが効いたな。ノアは俺とマリアをよく知ってる。思い出がよみがえる。俺魔法は最強だけど案外メンタル弱いな。すると突然頭に感触が。あれ?撫で撫でされてる?隣を見ると、どこから持ってきたのか、大きめの石。踏み台に精一杯背伸びをして、俺の頭を撫で撫でしてる朱凛がいた。

「シンクなんだか寂しそうに見えたから。私も寂しい時や悲しい時撫で撫でされると安心するし、こっちの世界に来てから本当は色々不安もあったけど

シンクに撫で撫でしてもらって吹っ飛んだんだ!すごーく幸せな気持ちになれたんだ!だからお返しだよ!」

そう言って優しく微笑んだ。

この時だよな。俺が朱凛に心奪われたのは。好きだって感情が流れ込んできた。そして俺は心を込めて言った。

「朱凛ありがとな!安心したし、元気出たよ!」

すると朱凛は嬉しそうな顔で、

「じゃあ、次は美味しいご飯だね!レッツゴー!!」本当朱凛は元気だよな。俺も久々の街での食事だし、豪勢は行くか!「よし!この街で1番美味い店に連れて行ってやるからな!」

そして俺達はこの街1番の人気店からから亭に向かった。そこでまさかあいつに会うなんてな。これもまた運命の導きなのかな。

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