第4話
ふぅー!やっと街に着いたか!
俺と朱凛は馬車から降りて、街の入り口の門に向かった。
門には何人か先に来ていた訪問者が並んでおり、その先に2人の屈強な門番が立っている。あの門番は訪問チェックだ。なんのためにルノアールに来たのか。俺達の様に商売や、明確な理由などがない場合、門番に魔法を示す必要がある。魔法大国ルノアール。その名の通り、ここでは魔法の強さが高いステータスとなる。つまり魔力を持った者はルノアールに入る資格があり、魔力のない者、もしくは魔力が微力で弱い魔法しか使えない者は、明確な理由がない限り街に入ることさえ出来ないと言う事だ。幸いこの魔法チェックは、複数で来訪の場合、その中の1人でもチェックに通ればオッケーだ。
前のマリアがそうだったように、恐らく朱凛には魔力はない。ここは俺だけ行こう。「朱凛、ここで待っててくれ。門番のところには俺1人で行ってくる!心配するな!すぐ戻るからな!」と声を掛けると「本当?本当にすぐ戻ってくる?1人で待つのは不安だけど、すぐ戻ってくるなら待ってる。」と、少し心細そうに朱凛は答えた。「ああ!すぐ戻って来るから心配するな!じゃあ行ってくるな!」
そう言い門番の元へ歩き出した。
魔力には自信がある。しかし、俺の正体を見破られる訳にはいかない。
どれくらい魔力を抑えるか。抑えすぎても弱い魔法とみなされチェックに通らない可能性があるし、そう考えてた時門番から声が掛かった。
「よし!次はお前達の番だ。明確な訪問理由があれば述べよ。なければ魔力を示す為何か魔法を発動せよ。」
あー順番来ちまったか。まだ何の魔法にするか決めてなかったんだけどな。んーどうするかなー。
ふと門番の横を見ると1人の年配の老人が苦しそうにお腹を押さえている。
「門番さん!あのご老人苦しそうだけど、どうかしたのか?」
門番はまさか老人について聞かれるとは思っていなかったようで不意をつかれたからか、驚いた顔をした。
そして、「ははは!この俺を見て萎縮もせずに、俺の質問にも答えずいきなり老人の心配かー!お前度胸あるな!」と、急に親しげな口調になった。「あーそうだよな!あんたみたいな屈強な門番に睨まれながら詰問されたら大抵は萎縮するよな!俺も内心ではビクビクしてるかもしれないぜ!」
「いやいや、お前からは微塵もそんな気配はない。お前に興味が湧いてきた!その内ゆっくり酒でも飲みながら話そう!俺はニドアだ。よろしくな!さて、老人の話しだが、あの人は商人で先程訪問チェックを無事終え、街に入ろうとしたところ、急にお腹が痛いと言い出し、しゃがみ込んでしまったのだ。街のヒーラーに連絡を取ったが、忙しいようでな。ここに到着するまでまだかなり掛かるらしい。どうにかしてやりたいが、生憎俺は力重視の魔法タイプだから、ヒーラーのような魔法は使え方困っていたんだ。」
「なるほど!じゃあ、魔法チェックも兼ねて俺があの人を治してやるよ!」
「何?お前ヒーラー系なのか?見たところ俺の様な力タイプだと思ってたのだがな!」
「あー俺は複合タイプなんだ!じゃあやるぞ!」そう言って俺は老人に近づいた。老人は冷や汗をかき、苦しそうに顔を歪めていた。そんな老人のお腹に手をやり短く「キュア」と呟く。その瞬間老人は「あ、あれ?お腹が痛くない。すっかり痛みが消えた!あーー楽になった!!あなたのおかげですな!ありがとうございます!何かお礼をしないといけませんな!」老人は先程とは打って変わって、スッキリした表情だ。
「いや!お礼はいいよ!たまたま通りかかっただけだからな!あんた商人なんだろ!街で良い商売しろよ!」
そう言うと、老人は「ありがとうございます!私はしばらく街に滞在します。何かご入用な際は私を頼って下さい。私はターラと申します。大抵はセラーズと言う店におりますので!」そう言って老人は街の中に入っていった。それを見届けたと同時に門番が「いやー驚いた!キュアは街のヒーラーでも唱えてから、効果が出るまで5分は掛かる。ルノアールのヒーラーは通常のヒーラーより優れてるからな!通常のヒーラーなら10分てとこだ。それがお前は唱えてすぐに効果が出た!お前の魔力はどうなってるんだ??」
あーまずい。ちょっと威力出し過ぎたか。あの老人の苦しそうな顔見たらつい早く治してやりたくなっちまった。
チェックの時にあまりにも魔力が強そうな者は街の魔力測定者によって魔力を測る仕組みになっている。測定者を呼ばれたら面倒だなと思っていると、「何やら訳ありのようだな。ますますお前に興味が湧いたよ!その内一緒に飲む約束するなら測定者を呼ばすここを通してやろう!」と、今の俺の考えを見抜いたかなような門番の言葉に俺は心底助かったーと思い即答した!
「いいぜ!じゃあ後日一緒に飲もうぜ
俺の居場所見つけるくらい容易いだろ!」すると、門番は、「おう!じゃあ、また後では!」と開放してくれた。どうにかチェッククリアだな!
俺は待たせておいた朱凛の元に戻った。「お待たせ!チェックも終わったし街に行こう!」すると、朱凛は、
「もー待ちくたびれたよ!戻って来ないかと思ったんだから!心配させたお詫びに頭撫で撫でして、」そう言って朱凛は少し不貞腐れた顔で俺を見上げてきた。んーーー本当可愛いやつだな!そう思い朱凛の頭を撫で撫でしてやった。朱凛は途端に機嫌を直し、満面の笑みで「よーし!たくさん食べまくるぞ!」と宣言したのであった。
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