第3話

俺と朱凛は今馬車で街に向かっている。コトコトコト。順調に馬は走ってる。この調子だと、もうすぐ街が見えて来るな!少し落ち着いた気持ちになった。そして改めて考えた。

朱凛は本当に元気だ。本心はどうであれ表面上は能天気で全く不安がなく見える。なぁ朱凛。お前の本心はどこにあるんだ?そして思った。じゃあ俺の本心はどこにあるなかな。

俺の心はきっとまだマリアのとこだな。あの時俺の心は置き去りにされた。いなくなった人にこんなに会いたくなるなんて。俺がこんなに女々しいな?て。考えもしなかったな。物心ついた頃から俺はずっと魔法ばかりの毎日だった。いや、産まれた瞬間からかな。なんせ俺はあの人の息子だからな。あーあの人の事を考えると嫌になるくらい気が重くなる。その時すぐ横で騒がしい声が聞こえた。ふと我にかえり横を見ると朱凛が、見えてきた街の様子に歓声をあげてきた。

「ねぇねぇシンク!街ヤバイ!!思ってた以上に街してるよ!!私テンション上がってきちゃった!!あーー楽しみすぎるーー!可愛い服たくさーん欲しいやー!!」その様子を見て思わず笑みが溢れた。本当朱凛を見てると和む。ずっと見てたくなる。気がついたら俺は事もあろうに朱凛の頭を撫でていた。あーやらかした。俺のバカ。さっきまでのクールな俺が崩れちまう。案の定朱凛は「え??何?何?もしかしてシンクって優しいお兄さん系??それともチャラ男系??」ん??チャラ男って何だ??俺が返事に困ってると「まーいーや!私頭撫で撫でされるの大好きだから!!こんな私でも頭撫で撫でされるとここにいていいのかな?って思えるんだ。」そう言った朱凛の顔が心なしか寂しそうに見えた。だが、それもすぐに消えて朱凛は笑顔でこう言った。「改めてよろしくね!チャラシンク!」

「ん??待て!何だ?そのチャラシンクとは??よくわからんが、良い意味でないのは何となくわかる。これまで通りシンクと呼べよ!嫌なら街で何も買ってやらないぞ!」と少し睨みながら朱凛に近づくと、慌てて朱凛は「やだなー!楽しい冗談だよー!シンクってば本気にしちゃって!冗談だから、機嫌直してー!」と本当に困った顔で拝むポーズをして見せる。

その顔を見てたらまた頭撫で撫でしたくなりそうだった。

すると助け船のように馬車を引いてる馬使いが声を掛けてきた!

「もうすぐ街に入ります!降りる準備しておいて下さい!」

「シンクー!やった!!街だーー!よーし!美味しい物たくさん食べまくるぞーー!!」やれやれ、これから先が思いやられる。俺は先を憂いてか、はたまた楽しみなのかよくわからないまま、フーッと深いため息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る