第4話 夏夜祭に行こうじゃないか

俺は和樹と別れた後に家に帰宅した。

時刻は1時半だ。

家には姉と俺しかいない。


「どうだったの校外学習は?」


「楽しかったよ。

これ姉さんにお土産」


「ありがとう」


「今日は随分と早いんだねえ」


「まあ二限だけだったからねえ」


「そういう事ね」


「そういえば入学して1ヶ月経ったけど、友達とかできたの?」


「親友ができたよ。

夜月和樹よづきかずきって子。

夏夜中出身だって。」


「夜月君ねえ……。

今度連れてきなよその子」


「分かったよ」


俺はそう姉に言うと自分の部屋に行って、甚平に着替えて、荷物を持った。


そして外に出る。


初夏だと言うけれど夏本番のように暑かった。


それでも何の義理かは知らないがそよ風が吹いているだけだ。


吹くならもうちょっと強くして涼しくしてくれ、風力め。


風力を恨んでいてもしょうがないので我慢して自転車を走らせた。


そして高校前に着く。


そこにはもう和樹がいた。


「良く来たね。

遅刻じゃないから大丈夫だよ」


俺はそんな親友の言葉にホッとした。


「じゃあ行こうか。

案内よろしくね」


「任せろ」


そして俺らは自転車を走らす。


「紘太って、夏夜のお祭りとか来たことあるの?」


「夏夜駐屯地のならよく行ってた。

姉によく連れていかれてたなあ。

でも今じゃ一人で行くことしかないや」


「じゃあさ、今日のと夏夜駐屯地のお祭り一緒に行かね?

親友と2人でお祭りなんて楽しそうだからさ」


「いいに決まってるじゃん!」


俺はそう答えた


「決まりだな」


和樹は笑顔で答える。


そうして和樹の家に着いた。


「ここが俺の家。

道はわかったかな?」


「分かったよ、ありがとう」


そして自転車を止めて中に入る。


「ただいま〜」


「お邪魔します〜」


すると人が降りてくる。


「おかえり、和樹

お邪魔してるよって何で紘太が居るの!?」


「何で千代が!?」


「知り合いなの?」


驚いている俺らの傍で和樹はそう言う。

するともう1人人が降りてくる。


「ん〜?何の騒ぎ?」


「姉貴、いい所に来た」


「ってか和樹はまずお客さん上がらせないと駄目でしょ。

詳しい事情は後だよ後で」


そして和樹が上げてくれた。


「で、千代と紘太は知り合いなの?」


「知り合いというか、いとこだよ。

で何で千代がここにいるのか教えて欲しいんだよね」


俺はそう言った。


「そもそも、友花に今日遊ばないかって言われたからここに居るんだよ。

紘太だってなんで居るんだよ」


「俺は和樹に誘われて……」


「皆、目的は一緒みたいねえ。

夏夜祭も行くんでしょ?」


友花さんがそう言った。


「そうだな」


「ってか、和樹の隣に居る男の子誰?」


「自己紹介がまだだった……。

初めまして、松田紘太です」


「初めまして、夜月友花です。

よろしくね」


そして互いに自己紹介をしあった。

するとドアが開く音がした。


「ただいま〜」


女の子の声だ。

友花がドアへと向かう。


そして女の子が自分の部屋に荷物を置いてリビングに来た。


「愛華お帰り、今日なぎなた部は?」


「水曜日だから無いよ。

ってかお兄ちゃん、お客さんになんか出してあげなよ。

せっかく来てくれてるんだから」


和樹が情けも無く、妹ちゃんに怒られている。


「だって出すって言ってもなんにも無いよ?」


「何言ってんの?

ケーキが有るじゃん、5人分」


「じゃあ出さないと」


和樹が立ち上がってケーキを持ってきた。


そしてケーキを食べる事にした。


「お客さんの名前聞いてなかったや。

私の名前は夜月愛華。

お客さん達は?」


「俺は松田紘太。

君のお兄ちゃんと同じクラスだよ」


「私は石井千代。

友花と同じクラスだね。

で、紘太とはいとこだよ」


「よろしくです」


自己紹介をしあった。


「愛華は今日誰かと夏夜祭行くの?」


友花は愛華にそう聞いた。


「友梨と行くの〜」


「友梨?」


「紘太、友梨のこと知ってるの?」


俺は和樹に聞かれる。


「うん、石野友梨でしょ?」


「何で紘太君知ってるの〜?」


愛華に不思議そうに聞かれた。


「いとこの妹だからだよ」


「え!?」


「そのお姉さんは?」


「和樹は琴音って知ってる?

その子も夏夜中出身だったはずだけど。

その子がいとこなんだ、もう1人のね。」


「知ってるよ。

姉貴、琴音って何高校行ったの?」


「姉貴じゃなくて、名前で呼びなさいよ……。

彼女は夏夜東高校に進学したよ」


「そうなのかあ。

琴音ともいとこなんだね」


「ビックリしたよ」


愛華にそう言われた。


「そう言えば、何時から夏夜祭だっけ?

和樹教えて」


俺は和樹に聞いた。


「6時から。

だから5時半にはここ出る計算でね。」


「はいよ」


「ねえ今何時?」


愛華にそう聞かれる。


「今は3時だよ。」


「じゃあそろそろ着替えていかなくちゃ。

友梨と3時半に約束してるんだ。」


「行ってらっしゃい」


俺がそう言うと愛華は自分の部屋へといってしまった。


「愛華ちゃんって不思議な子だねえ。

天真爛漫な女の子って言う感じだねえ。」


俺はそう皆に言った。


「あれでも昔は色々あったんだよ。

俺は詳しく言えないけどね。」


和樹がそう言った。


「まあ、触れない方が身のためだと思うよ。

私も過去の事なんて掘り出したくないからねえ。」


「でも今の愛華が幸せなら、それで良いんだよ。

愛華は良く今まで頑張ってきたから、これからはちゃんと褒めてあげなきゃねえ。」


友花はそう言っていた。


「いってきまーす!!」


愛華は出かけて行った。


「そういえば、紘太って中学では何部だったの?

私は和樹と一緒のなぎなた部だけど。」


「俺も友花と和樹と一緒のなぎなた部だよ。

でも総体で負けたの。」


「そうなのか。

でも今年は君の中学勝つといいね。」


「だといいけどねえ……

まあせめて市総体で頑張ってくれれば良いねえ……」


俺はそんな期待を持って話した。


「皿片付けるぞ。

そろそろ家出るか?」


「ありがとう。

そろそろ着替えようか。」


俺はそう言った。

って言っても俺はもう甚平なので意味が無いけど。


「じゃあ紘太、俺の部屋おいで」


和樹にそう言われて、俺は和樹の部屋に行く。


「広いねえ」


俺は和樹にそう言った。


「別に広くはないと思うんだよねえ」


「俺の勘違いなのかな」


「感じ方は人それぞれだから勘違いってことは無いと思うんだよね。

あ、もちろん駄目な事を勘違いするのはそれはそれでダメだと俺は思うけどね。」


「確かにねえ。

良い勘違いは身のためになるけど、悪い勘違いはなあ…」


俺はそう言った。


良い勘違いというのは、言葉の意味の勘違いや漢字の意味の勘違いだ。

このような勘違いは必ず後々気付いて恥ずかしくもなってしまうけれども

結局は「成長しているんだな」と感じる事で前に進める。


でも悪い勘違いは人に対するイメージや想いだと思っている。

人に対して「あの子はなんでも出来る」と思っていても、当人はなんでも出来る

訳なんかじゃないんだ。


俺はこういう勘違いで喧嘩が起こると感じる。


「着替え終わったぞ」


和樹がそう言うと和樹は青色の甚平を来て出てきた。


「お、かっこいいじゃん」


「ありがとう」


そして俺らは下に降りる。


どうやら千代と友花は先に行ってしまったようだ。


「俺らは自転車で行く?歩きにする?」


「ここから夏夜駐屯地まで近いんだっけ?」


俺はそう和樹に返す。


「近いよ。

近いから歩きで行くか」


俺と和樹は歩いていく事にした。


歩いていく中で夏夜が広いことに気づいた。


迷いそうにはなるが和樹が教えてくれているので安心だ。


そして夏夜駐屯地に着いた。


「楽しみだね」


俺は和樹にそう言った。


すると和樹は微笑んだ。


「そうだね。

お祭り始まったら何からやろっか?

俺わたあめ食べたい」


「良いけど、甚平ベタベタさせるなよ?」


「当たり前にしません〜。

小学生じゃないんだからさあ」


和樹は笑いながら言った。


そんなこんなでやり取りをしていると、門が開いた。


「よし、楽しむぞ〜」


和樹がウキウキしていた。


「じゃあ、行こっか!!」


俺は和樹の手を引いて走った。


「1番楽しんでんのは紘太だったか!

俺も負けないぜ」


和樹がそう言う。


そして2人でわたあめの屋台まで走って、わたあめを買って二人で食べた。


「わたあめって美味しいな!」


「夏って感じの味がする!」


「どんな味だよそれは!」


和樹は笑いながらそう言う。


2人で笑いながら食べるわたあめの味はいつもの綿あめのように甘過ぎた訳ではなくて

甘さは残るがそこまで甘くはなかった。

むしろ美味しかった。

親友と食べると何でも美味しい気がした。

俺は今幸せなんだ。


「次どこ行く?」


「お面買おうよ!」


「紘太良いね!

じゃあ行こうよ!」


俺らはお面の屋台に行った。


「なんか色々あるな…」


俺はそう言うと和樹があるお面を手に取る。


「狐面にしようぜ!」


「いいじゃん、俺も買う!

お揃いにするか?」


「おっ、親友って感じがしていいじゃん!」


そして俺らは狐面を買って、付けた。


「結構いいじゃん!」


「結構いいよね、次どこ行くよ?

そろそろ花火とかの時間になって来るから、ご飯でも買おうぜ」


「分かった」


そしてご飯を買いに行くことにした。


「焼きそば買おう」


「分かった」


そして焼きそばを買って、俺らは歩いた。


「他なんか買う?」


「大丈夫」


そして焼きそばを食べながら花火を見た。


花火は綺麗に咲き誇っていた。


まるで立派に咲く向日葵のように。


でも散る姿を見るのは儚さを感じる。


和樹は散っていく花火を悲しそうに見ていた。


「なあ初夏なのに夏が終わる感覚がするな…」


「そうだね…。

でもまだまだ夏はこれからだから和樹は元気だしなって」


「うん」


和樹はそう答えて、俺らはまた花火が咲き誇る空を見上げた。


悲しさも感じるけれど、和樹と過ごせる時間はまだあるのだから悲しい事は

考えておかないでおこう。


そして花火が終わって、俺らは外に出る。


「楽しかったな、和樹!!」


「だな!!」


俺らは笑いあった。


夜だから小さい声で。


そして俺らは和樹の家に行った。


「夜道は暗いから気をつけて帰れよ?」


「うん、今日は一緒にお祭り行ってくれてありがとう。

また今度も行こうよ」


「うん、俺も楽しかったぞ」


「じゃあね」


「また学校でな」


そして俺は和樹と別れて家に帰った。


今日は親友と遊べて本当に満足だ。


和樹に感謝しなきゃね。


ありがとう親友。


夏休みになったらお祭りまた行こうぜ






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