第15話

「俺に触んな...!近付くな...!!」


強いセリフを吐き、

俺は審判を見てから大声で言ってのけた。

審判は頷き、


「試合、今から続行でいいから...!!」

俺はコートに戻り、

「大丈夫だから、取り敢えず、ボール一応、裸眼でも見えるし...」


俺はユーコを見事に突き飛ばすことに成功した。


彼女は尻もちをつき、

「いったぁい...もう、シンジってば照れちゃってさ...」


「ねぇ、手を貸してよぉ...。私、

立てなーい...」


などと馬鹿みたいに甘えてた。


ほっといたら、

敵チームのイケメン藤島が、


「ユーコちゃん、俺が立ち上がらせてあげるよ!」などと言って試合放棄してこっちまで来て。


ユーコのこと、立ち上がらせようとしてた。


そういえば。


藤島のやつ、美少女ユーコにぞっこんだったな。


そんでもって、


ユーコはイケメンの藤島のこと、

カッコいいなどとしょっちゅう言ってたから、

両思いで仲良くやってくれ、

と思った。


ユーコは差し出された藤島の手を仕方なく

掴むかと思いきや、違った。


「手を貸してくれなくていい!

自分で立てるから...!」


「そんな...」


コートからチラ見したら藤島は顔を真っ赤にしてた。


ユーコは立ち上がり、


俺の立ち位置に最も近い場所を陣取り、


俺がボールを拾う度、

また、俺、実は中学の時にバレー部だったんだけど、スパイクを決める度に、


「キャーッ、カッコいいシンジ!!」


と黄色い声をあげた。


藤島とユーコは同じクラス。


応援しなきゃなのは相手チームなのに。


藤島はユーコに振られたみたいになったのが、大変ショックだったのか、


本来の力を出せずに。

心ここにあらずな状態でコートに突っ立っているだけだった。


周りのチームメイトが、


「おい、藤島ぁ!しっかりしてくれよ!」


「気持ち切り替えてくれよ!」


って声を揃えて言ってんのに、


「るせー。ほっとけよ...」


と呆然としてるだけで、完全なる戦力外になっていた。


そうさ、多分だけど。


俺の眼鏡が壊れるまでは、藤島は

ずっと、女子の声援を独り占めしてた。


でもな、お前が俺の眼鏡を破壊後は、

完全に女子の声援はなくなり、

藤島じゃなくて、俺に対してキャーキャーなる黄色い声がきた。


ま、最も。


試合再開後、それも最初だけ。


ユーコがキャイキャイの女子軍団を

蛇みたいな目をして、睨みつけ、

黙らせたのだった。


まぁ、でも。



俺らクラスの見事な逆転勝利で

バレークラスマッチは幕を閉じたのだった。














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