第24話 勇者の娘と魔王の転生者は、邪竜を倒す。

 アーシュラは学園都市を飛び越え邪竜へと向かう。

 邪竜の周辺では無数の竜と、炎や雷が荒れ狂っていた。ヴリトラが繰るのは、ヴィーグリーズの全学生が長い詠唱の果てに扱う魔法の合力を遥かに凌駕する規模。その炎雷を一瞬で、腕の一振りにより発生させていた。

 この世の終わりとも思える竜咆哮を見た後でなければ、ミルは当然、こちらに絶望し幻覚を疑っただろう。


「ちヴィ、待たせたな」


「アーシュラ様。

 あわよくば仕留めようかと思ったのですが、

 あれはさすがに私の半身ですね。

 ちっちゃくて可愛いだけの理性担当の私は逃げ回るので手一杯でした」


「行くぞ」


 アーシュラとヴリトラは魔法を放ちながら前進。一度の攻撃で邪竜の眷属を何十匹も消滅させていく。頭部に接近したところで、邪竜が火口のように巨大な口を開く。


「ちいっ」


 アーシュラが特大の炎弾を放つと、邪竜の頭部が炎に包まれる。こちらもヴリトラに比類する、人類基準の常識から外れた破壊力。城塞都市の一つは余裕で灰燼と化すはずだが、邪竜の抗魔力を貫くことは叶わない。元より目くらまし程度の効果しかないことは織り込み済み。

 即座に転移魔法を繰り返し使用し、口の先から離れる。ミルは、ただアーシュラに抱きつき、事態を見守ることしかできない。瞼は、絶対に閉じない。

 竜の口腔内に、超新星の逆行を思わせる輝きが、燦々と集う。口の先には学園都市がある。直撃すれば、神獣とはいえ無事では済まないはずだ。


「ヴリトラ、合わせろ!」


「はい!」


 二人はタイミングを合わせて邪竜の顎を下から暴風で跳ねあげる。巻き上がった砂埃が辺り一面を覆い尽くす。砂の渦巻きは、雲に到達するほどだ。


「跳ねあげろ!」


 大地が隆起し、岩の柱が伸びて邪竜の顎を殴りつける。それは、人によって『神至の塔』と名付けられた、土の槍。その再建である。


「抵抗するな!」


 さらに大地が隆起し、二本目の岩の柱が突きでる。

 その直後、直上に向かって竜咆哮が放たれた。

 反動で邪竜の体が沈みこみ、腹の下にあった《神至の塔:上側》が粉々に砕け散る。

 巻き起こった衝撃波は砂埃を消し去り、周辺大地の表層を削り取っていく。荒れ地に僅かに生えた草も、石の陰に潜んでいた地虫も、みな風の奔流にもみくちゃにされて、果てなく吹き飛ばされていく。

 竜咆哮は空へ放射されたにも拘わらず、茫漠たる範囲の地上に猛威を振るった。ミルはアーシュラに全力でしがみつくしかない。少しでも両腕の力を緩めたら、遥か彼方まで飛ばされてしまいそうだ。

 ヴリトラの小さい体が衝撃に耐えきれず、吹っ飛ぶ。

 アーシュラは短距離転移するとヴリトラを抱きかかえ、転移魔法で距離をとる。


「ヴリトラ、掴まれ」


「はい」


 一時的に真空状態になった中心地に、周りの空気が流れこみ乱気流が生まれた。乱気流に翻弄されながらもアーシュラは安全圏まで距離を取る。攻撃の揺り返しですら、乱暴な尾を大地に伸ばし、地上の砂礫を弄んだ。

 学園都市のみが、その重量により同じ位置に留まったのみで、地上は完全に様変わりしてしまった。


「くっ」


 アーシュラはよろめくようにして、宙空で一瞬バランスを崩す。


「アーシュラ、大丈夫?」


「魔力を使いすぎた」


 崩れた塔に数百の光点が生まれ、ヴィーグリーズの方へと飛んでいく。


「なに今の?」


「塔の中にいた生物をヴィーグリーズに送った。

 人間だけを選別する余裕はなかったから、竜も数匹巻きこんだかもしれんが」


「そんなことできるんだ……」


 常識外れの戦闘を目の当たりにしたミルは完全に失念していたが、塔には逃げ遅れた生徒達がいた。アーシュラは邪竜を相手にしてなお、人命救助に気を配るだけの余裕があったのだ。だが、さすがに天変地異に匹敵する規模の魔法を連発したため、魔力が枯渇しつつある。

 独りで邪竜を相手にしていたヴリトラも消耗している。


「学園が邪魔だ……。

 せめて人間だけでも甲羅の中に避難してくれれば気にせずに戦えるのだが」


「ヴィーグリーズの甲羅なら竜咆哮に耐えられるの?」


「おそらくな。アレは神獣の中でも最硬だ」


「あっ! ブロックだよ!

 『マジック・クラフト』で甲羅をブロック化して盾にするの」


「なるほど。『マジック・クラフト』はヴィーグリーズの魔力を遠隔利用する魔法だ。

 やってみる価値はあるな。

 だが、ブロック化するのは甲羅ではない」


「どうするの?」


「説明している暇はない」


 アーシュラは飛翔魔法で邪竜の背後に回りこみ接近。次々と眷属の竜が飛び立ってくるのを風の刃で蹴散らす。不可視の刃は視認できないが、全方位に向けて放たれており、アーシュラを中心にして半径五十メートルの眷属が全て細切れになった。

 間隙をつき、アーシュラは騎馬の訓練場よりも広い邪竜の背に、降り立った。十騎の騎馬が並走できそうな幅の背中は、人族用の盾ほどある鱗に覆われている。実際に、この鱗を持ち帰れば、その一枚一枚が伝説に名を残す防具となる硬度だ。


「ヴリトラ、ミル、行ってこい。

 頭まで駆け上って、脳に直接停止命令を出せ。我は邪竜の注意を引く」


 アーシュラは邪竜の背にミルとヴリトラを下ろす。


「分かった」


「アーシュラ様、お気をつけて」


「うむ。ミルよ。

 得手不得手だ。

 我等は大規模な破壊を得意とする。

 貴様の本領は、神速と小回りだ。

 忘れるな。今の貴様なら、我を討伐した勇者よりも速い」


「わ、分かった」


 足場にした鱗の下が泡立ち、腐肉から竜が誕生したの合図にして、三人は二手に分かれた。

 邪竜の攻撃を引きつけるアーシュラ。邪竜の背を駆け上り頭部を目指すミルとヴリトラ。


「ミル、元気なんだから、頑張ってくださいよ」


「分かってる! 責任重大だ!」


 進路上空に現れた竜をヴリトラが炎で散らす。しかし、やはり魔力の消耗が激しいらしく、一撃で消滅させることはできない。

 炎を纏いながら降下してきた一体をミルは走りながら一刀両断する。


「切れ味が上がってる!

 頭上の牽制はお願い!」


 魔剣デュランダルは竜の鱗を易々と貫通していた。ミルの魔力に比例して、魔剣の攻撃力も上昇している。

 右手側から竜が飛来。ミルは脚を前後百八十度に開脚してデュランダルを頭上に掲げる。竜は中心から真っ二つに裂け、靄となり消える。

 ミルは即座に立ち上がり頭部を目指して走りだす。


「なるほど」


「なにが?」


 ミルは振り返らずに背後を質す。

 右前方から竜が鉤爪を突きだしながら急降下。直撃コース。

 黒い体躯に赤い筋状の模様がある。本体の近辺を護衛する強力な個体だ。

 竜は確かに、ミルの未来位置へと鉤爪を降ろしている。衝突は目に見えている。だが、ミルは竜を追い越し、振り返るように体を横回転して後方の竜に攻撃。足を切り落とすと、疾走を続ける。


 背後のヴリトラはその様子を見ていた。いや、見えなかった。

 ヴリトラの認識では、ミルが残光を置き去りにして前方に超短距離転移し、不可視の斬撃で竜の脚を切り離していた。背後を走るヴリトラはまだ落下しきらずに浮いている竜の脚を手で弾きながら、前を行く背を見る。


「なるほど」


 ヴリトラはミルの速度に合わせて走っている。だが、距離が開く。ヴリトラは尻尾を上げ前傾姿勢になり、加速してミルに追従する。


「さっきからなるほどって何?!」


 逃げ場を奪うように三体の竜が横並びに降下。いずれも強力な個体だ。ヴリトラが学生生活を送る中で見てきたミルの実力では到底、歯が立たない。彼女の父親である勇者ですら、三体同時に相手するなら、先ず歩を止め、体勢を整えなければならないだろう。

 手助けするかと思いつつ、ヴリトラは静観した。ミルが中央の竜を飛び越した。その瞬間、既に右手の竜は首が胴から離れている。竜の背でミルが横回転を開始したかと思ったら、邪竜の背に降りて疾走を再開していた。左手の竜はいつの間にか翼が切り離されている。

 黄金の光が明滅し、一瞬で光景が切り替わっていた。


「なるほど」


「気になるんだけど?!」


「邪竜の周辺は私ですら魔法の行使に支障が出るレベルの抗魔力で覆われているというのに、これですか。

 勇者の血脈は化け物ですか」


「うしのケツは獣?! 何で変なこと言ってるの?!」


 ミルは思わず振り返る。無自覚のうちに時間の停止と再生を繰り返しているため、ヴリトラの言葉を断片的にしか聞き取れていない。


「ちヴィ、後ろ!」


 ヴリトラの背後から竜が飛来していた。ヴリトラは気づいていたがミルの観察を優先していたので放置していたのだ。そのミルが視界から消える。次の瞬間には並走している。ヴリトラはミルが背後の竜を倒したのだろうと推察する。停止する時間が延びてきている。


「ヴリトラ、なんか、

 動きがカクカクしているけどどうしたの?

 疲れてるの?」


 ミルがヴリトラの言葉を断片的にしか聞き取れないのと同じように、ヴリトラもまたミルの言葉を一部しか理解できない。


「化け化け物物めっめっ」


「けけののめって何?! ヴリトラ頭大丈夫?!」


 ヴリトラはミルに伝わるように嫌みを言ったのだが、試みは失敗に終わった。ヴリトラは指で前方を指し、先に行けと指示すると、直後にミルの背中を見ている。追随しようとすると、やはり距離が開く。


「ミルに並ぶには目に見える倍の速さで移動しなければなりませんね」


 ヴリトラが加速を試みると、邪竜が身じろぎして足場が傾く。

 二人が姿勢を崩したところに左手から眷属が飛来。ミルは邪竜の背を蹴り、眷属の首に腕を引っかけると、首を軸にして回転。同時に首を切り落としつつ胴体を踏み台にして邪竜の背に戻る。


「ピカピカクルクル忙しい人ですね」


「さっきから何を言ってるの?」


 硬い鱗の山を昇り終え、二人は邪竜の頭部に到達。少し前に放たれたアーシュラの火炎魔法の余熱が残り、頭部の鱗は隅が赤熱に、薄らと煙を上げていた。


「私よ止まれ」


 ヴリトラが声に出し命じるが、邪竜に反応はない。


「やはり聞きませんか。鱗と骨が邪魔ですね……。

 ミルミルミミルル、デコデコ穴穴。額に穴、穴、穴、額に穴」


「穴を開ければいいんだね?」


「ええ。いつものクルクルで削ってください」


 ヴリトラが言い終わるよりも早くミルは邪竜の額と水平に体を倒して横回転。

 着地と同時に水面蹴りのように姿勢を低く回転して立ち上がり、再び跳躍し、縦回転で斬撃。

 邪竜の額、一ヶ所に斬撃を集中させ、亀裂を作る。


「猫の頭で跳ねるノミですか……」


 ヴリトラは周囲の竜を魔法で牽制しつつ、アーシュラが光る跳ね独楽と評した動きを横目に見る。


「何か言った?」


「表皮も頭骨も分厚いので、遠慮せずガリガリやってください」


 ヴリトラは炎の帯をドーム状に広げ、眷属の接近を阻止。邪竜も頭部に攻撃を受けていることを知り、眷属を額に集中させる。しかし、邪竜の前方にいるアーシュラが風の刃で眷属を切り裂く。

 魔王の転生者と邪竜の化身に援護され、眼前の目標に専念できるミルは、何度も攻撃を繰り返し穴を穿っていく。確かにデュランダルは竜の鱗を貫き、肉を裂き、骨を刻むことができる。だが、巨体に対してあまりにも細く短い。

 何度も愚直に攻撃を重ねて、硬質な骨の表層を小刻みに削りとっていく。


「ゴオオオオオオオオオオオッ!」


 眼前の敵よりも頭部の小さい存在を脅威と定めたのか、邪竜が頭部を大きく持ち上げる。足場が一気に垂直近くまで傾き、ミルは転げ落ちそうになる。


「ミルミル!」


「おっけー!」


 傾きも摩擦も無視して邪竜の頭に垂直状態で立ち続けるヴリトラが腕を伸ばす。その腕を足場にしてミルは上方へ跳躍。亀裂に渾身の斬撃。


「たああああああああっ!」


 パキイインッ。鍾乳石の砕けるような甲高い音とともに、ついに頭骨を穿ちきり、こぶし大ほどの僅かなサイズだが、内部が露出する。


「よくやりましたミルミル」


 ヴリトラは穴に飛びつき右腕を突っこむ。同時に尻尾を伸ばしてミルの脚を巻き取り、落下しないように確保。ヴリトラの指先が邪竜の脳に触れ、命令が直接伝えられる。


「お前の役目は終わりです。もう休みなさい」


 劇的な変化は先ず眷属に現れた。迷子になったと気付いた瞬間の子供のように周囲を見渡し、攻撃を止めた。地上を襲っていた者は生きた彫像となり、飛んでいた者はそのまま慣性に従って空を流れる。


「ゴアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 邪竜は頭部を動かし、視界に映る最も大きな物、ヴィーグリーズ学園都市へと口を向け、断末魔の雄叫びともいえる竜咆哮を放つ。直撃すればヴィーグリーズの甲羅は残ったとしても、その上にある学園都市は確実に消滅するだろう。


「見事だヴリトラ」


 竜咆哮の奔流に飛びこみ、アーシュラが手を突きだす。掌の皮が裂け肉が焼け焦げる。だが、そこまで。アーシュラは神すら殺す一撃を受けとめる。


「学園都市よ、貴様等が呼び起こしたのだ。責任はとってもらうぞ」


 アーシュラの手の先に、空間断層の如き力場が生まれる。

 それは学園都市が生みだした大規模魔法『マジック・クラフト』。

 竜咆哮はすべて圧縮されて、力場へ吸いこまれていく。『マジック・クラフト』の応用でアーシュラは竜咆哮をブロック化していく。『マジック・クラフト』は神獣ヴィーグリーズの魔力を利用している。アーシュラはそのすべてを使う。

 この瞬間、学園都市は、照明や冷蔵庫など、魔力を動力にする魔道具のすべてが使用不可能に陥った。アーシュラの背後で、学園都市から人工の光と魔道具の動作音が消えていく。

 代わりに、アーシュラが掲げた手の先には、直径十メートルを超える太陽のような球が形作られていた。

 ヴリトラが邪竜に口を開けたまま停止するように命令。ミルを抱えると全力の飛翔魔法で頭部から離れる。


「邪竜ヴリトラよ。楽しかったぞ。

 今生の別れだ。

 いずれ人が滅びた時代、三度まみえよう。

 それまで、眠れ」


 アーシュラは竜咆哮のブロックを邪竜の口の中に放りこむ。風魔法で顎の上下を叩いて閉じさせ、リリース。

 竜咆哮が邪竜の体内で炸裂。大地を覆う光が晴れると、赤い霧が広がる。


「燃え尽きろ!」


 再生させないため、アーシュラは渾身の魔力で特大の火炎を作り、邪竜の残骸を包み込む。巨大な炎の繭となり蒸し焼きにする。繭の中で巨体がゆっくりと崩れ去っていく。

 さらにヴリトラが炎の帯を作り、繭を覆う。ミルはヴリトラの首に腕を回し背中にしがみつく他に、やることがない。


「アーシュラもヴリトラも、魔法が強すぎて非常識すぎるんだけど……」


「ミルミルに言われたくありません」


「同意だ」


 アーシュラとヴリトラは飛翔魔法に使う魔力すら底を払いかねないので地上に降りる。それから己の魔力が尽きるまで実に一分近く魔力を投射した。


「これで終わりだ……」


「アーシュラ、お疲れ」


「うむ」


 ミルが手を差しだし、アーシュラも応じる。

 二人の手が重なり、ポムンッ。間抜けな音と共にアーシュラの体が子供状態に戻る。


「む……。どうやら限界だ」


 アーシュラは汗の浮いた顔に笑みを浮かべると、地面に倒れ手足を投げだす。


「くっくっくっ。

 楽しかったぞ、ヴリトラ!

 我が手助けを得ていたのだから貴様にも言い分はあるだろうが、我の二連勝だ」


「アーシュラは、そっちの方が落ちつく」


 ミルはデュランダルを鞘に収め、アーシュラの隣に体育座りをする。ヴリトラは立ったまま、尻尾を下ろして体を支えながら炎を見つめる。

 魔力放射が途絶えているため、炎の繭は急速に小さくなっていく。

 地表は溶けてマグマのように煮えたぎっている。一変した光景の中心、残火の中に頭蓋や背骨等の太い骨が有る。


「崩れてくださいよ。形があれば再生するでしょ……」


 ヴリトラが石を拾って投げつける。

 石が当たると、大した威力はなかったが、それが最後の一押しとなり、頭蓋骨が崩れだす。破片同士がぶつかり合い、弔鐘のような喨喨とした音を響かせ、やがて骨は粉々になり、風に乗って散りゆく。


「私の両親って、こんなヤバいのを封印したアーシュラを倒したの?

 信じられないんだけど……」


「貴様にもその血が流れている。

 今日見たものを糧にして魔力コントロールを覚えれば――」


 警戒心の網にできた気の緩みを縫い、高速で飛来するものがあった。

 アーシュラ、ヴリトラ、ミル、三人が空気の弾ける音に気づく。

 反応自体はほぼ同時だったが、残った体力や瞬発力の差が出る。

 真っ先に動いたミルは、攻撃の標的になっていたアーシュラを庇うようにして立ち、直撃を食らう。


「あぐっ」


 それは、かつての魔王討伐勇者パーティーが使用していた武器、穿帝弓ミストルテインの矢。魔力追尾式の毒矢は、模擬試験でアーシュラに撃たれたものと同一。


「ミル!」


 胸部への衝撃でミルは転倒し、薄れゆく視界で、攻撃のあった方向を見る。

 遠く離れた小さな人影だが、特徴は見紛うはずもない。

 頭上の光輪と白亜の翼、神族の特徴を有した何者かが宙に浮いていた。

 それは、『神至の塔』の下に邪竜が封印されていることを知っており、学園を利用して復活させようと企てた者。己のもくろみが失敗に終わったため、元凶であるアーシュラを始末しようと現れた。


「あ……」


 ミルが最後に見たのは、慌てた様子で覗きこんでくるアーシュラの顔。何かを叫んでいたが、聞き取ることはできなかった。ミルの意識は血泥に沈むようにして、ゆっくりと、消えていった。




◇ あとがき

次回のエピローグで完結です!

気に入ったら評価ポイントを入れていってください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る