実は、あなたが好きな歌手は俺なんだが。

ぶりっ!!

第1話 高校ニ年の春、一日目。


 高校入学から、一年ほど立ち、高校ニ年になった俺は、彼女と一緒に流行りの映画を見たり、友達と青春を謳歌するきらびやかな生活を送っている………ことは無い。


 二十三時、俺(白添 理央)は自室でパソコンと向かい合っていた。

 

 少しすると、タッ、ターンと如何にも仕事終わったぜ!と言いたげな音が部屋に広がる。


 「今日も編集終わりっ!さてと、先週あげた動画は…よっしゃっ!バズってんじゃん!」


 昨日アップした動画を見返していると、電話がかかっていることに気付き、スマホを手に取りその電話に応じた。


 「もしもし、陽真、どうしたんだ?」


 花崎 陽真は、俺のクラメイトであり、相棒だ。こいつは顔立ちが良く、学校での成績も優秀。学校でも週に一度は告られてる。多分。


 「昨日あげた動画、めっちゃバズってるね、まさかこんだけあの効果があるとは思わなかったよ」


 「正直、俺もちょっと再生回数伸びるだけかと思ったけど、五百万見られたと思うとちょっと恥ずかしいな」


 先週テレビで放送されたトーク番組の中で、今、話題沸騰中の高校生女優、加宮 茜に今気になる人物という場面で、俺たち『White Flower』が紹介されたのだ。


 俺宛てにその番組の出演依頼が来たのだが、まだ顔出しもしていないのでその時は断った。


 「クッソ、まじで出たら良かったッー!」


 「自分が断って何で後悔してんのさ」


 「いやー、あの時は俺がテレビに出るなんて恥ずかしかったんだよ!何より、あの加宮 茜に会って『貴方があのホワフラだなんて、イケメンだと思ってたのに幻滅したわ』なんて言われたらどーするんだッ!」


 「西宮 茜は優しそうだし、そんな事言われないと思うよ?」


 「そんなの分かんねーだろっ!あー羽宮学園に来ねーかなー」


 「もう僕は寝るよ。理央も妄想は早めにやめて寝なよ?じゃ、おやすみー」


 「し、してねーし!ってあいつ切るの早すぎだろ」


 俺は部屋の電気を消し、今日もいつもと同じ就寝時間の二十四時に一日が終わった。


        ☆☆☆


 朝、俺はあまりにもしつこい目覚まし時計を壊す勢いでぶっ叩き、洗面台に向かう。


 スマホを開きもう一度バズった動画を見ると再生回数は八百万回を超えていた。


 正直、全く実感湧かないんだよなぁー。


 顔を洗い、歯を磨き、俺は朝食を食べにリビングへ向かった。


 「ま、まじか」


 俺はリビングのテレビに目が釘付けになる。映っていたのは、俺の動画の一部だった。


 加宮茜の影響力は自分が思っている以上に凄まじかった。


 うわってもうこんな時間!やばい、遅刻するー!

 

 結局、朝食を食べずに学校へ向かった。


 俺は、今月で一番の努力をしただろう。校門が見えた時予鈴が鳴った。


 ここから下駄箱まででニ分、上靴に履き替えて3階まで全力で登るまでてニ分、最後は廊下を全力ダッシュして十秒もかからない程度。五十秒も余裕を残してのゴール!。


 「イケるっ!!」


 そしておれは走り切った。あとは扉を開けるだけ。


 これで、俺は、今年も、皆勤賞ダァーッ!


 「セーーッフ!!」


 『いや、アウトだよ!!』


 「へ?」


 どうやら俺は勘違いをしていたらしい。俺が校門の前で聞いたのは予鈴ではなくホームルーム開始の鈴だったようだ。


 こうしてニ年の春一日目、俺は早くも皆勤賞を逃したのだ。


 俺はとぼとぼと自分の席に行く。その間周りからはドンマイ、ドンマイやはい乙ー。などが聞こえてきた。


 「そうそう、お前の隣の人は今年転入してきた西宮さんだ。仲良くしろよ。じゃ、ホームルーム終わりまーす。」


 転校生かー。俺は顔を上げて転校してきた西宮さんを見る為に顔を上げた。その時は思いもしなかった。本当にあの人が転校してくるなんて。


 学級委員の号令など聞こえないほど俺は西宮さんに目を奪われていた。


 「に、に、に、西宮茜キターーーッ!!」


 ニ年の春、一日目。俺の記憶は、皆勤賞無くなった。から『西宮さん』に変わった。

 

 

 

 

 


 

 

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実は、あなたが好きな歌手は俺なんだが。 ぶりっ!! @yuzu25

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