第275話 煮込みハンバーグ
「あっふ!これ美味しいですね!」
「私が丹精込めて作ったんですもの不味いわけありませんわ!まだ作って差し上げれますからガンガン食べて下さいね」
桜井さんは得意気な表情で煮込みハンバーグに食らいつくトゲくんを見る。
そしてその片手にはビールの缶。
顔は既に赤みがさしていて、酔っぱらう気満々。
どんなに拒否されようとも今日は泊まる気でいるらしい。
知らない人だらけでメアもトゲくんも気疲れしそうだから、本音を言えば桜井さんにはお引き取り願いたかったんでけどな。
「……それにしてもこの子がモンスターなんて信じられませんわね」
「しかもあのリヴァイアサン。俺も言われなければ無邪気な男の子にしか見えなかったですよ」
食卓につく前にメアだけでなくトゲくんについても説明をしたが、灰人と桜井さんは未だに信じられない様子。
じろじろ見られてるトゲくんはさっきよりも食事がし辛そうにも見えるな。
ここは俺が助っ人に回るか。
「事情は桃先輩からある程度聞いてるけど、その育成プログラムっていうのはどんなものなんだ?本当にあれの対策になるのか?」
「プログラムって言っても単純なレベル上げサポートだよ。無駄ってことはないけど、探索者全体の底上げをしたところで孵化したときのエキドナの強さ次第じゃ……。S級探索者が付き添いで強いダンジョンに潜れるのは俺達みたいな半端な探索者にはありがたいけど、目的を達成するだけならまずS級探索者自体の強化に専念する方がいいかもしれない。あとは武器や防具も企業と協力してより良いものを作らないと。特に火耐性に特化した防具は大量に欲しいね」
「どっちみち一色虹一がどうにも出来てない時点で他の人にどうにか出来るとも思えない。俺としては自衛が出来るだけのレベルに探索者を強くするのはありだと思う。火耐性特化の防具に関しては灰人と同じ意見だけどね」
「自衛出来るだけの力が備わる、か。確かにそうなれば余裕も生まれるし他の人に危害が加わる可能性も減るかもしれないね。最近は探索者協会の人達がてんやわんやしてる割にろくに仕事をしてないイメージが出来てきちゃったから俺もつい、探索者協会のやり方に批判したくなっただけなのかも……」
「別にそんな事で悲観することはないって。それにトゲくんが例のアレを取り出せたらあの状態のエキドナに挑もうと思ってる」
「てということは、見えたんだ奴の急所が」
「ああ。すごい小さかったけどな。ま、そういうことだからそんなに心配すんなって」
俺は灰人の肩を軽く叩くと煮込みハンバーグを一口食べた。
「溢れだす肉汁とソースが合わさって滅茶苦茶美味い!桜井さん、本当に美味しいですよ!」
「あ、ありがとう……」
「べ、別にこれくらい私も作れ……美味しい」
暗い話しも程々に俺達は絶品ハンバーグに舌鼓を打つとへべれけになるまで酒を飲み交わすのだった。
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