第267話 またとない
「頼んだぞ白石輝明」
俺はリヴァイアサンの言葉に頷くと『即死の加護』と『毒の神髄』を発動して【1】をジャマダハルで突きにかかった。
「くそっ! 気配を感じない上に姿を消して戦うなんて姑息過ぎやしないか?」
【1】は地面を両腕で思い切り叩いくとこれでもかというくらい悔しそうな表情を見せる。
地面にヒビが入ったところを見ると相当なパワーが有りそうではある。
とはいえこれが攻撃に繋がりそうな雰囲気はない。
今のうちに、確実に急所を、心臓の辺りに見える点を突く!
――ドス。
「ぐあああああああああっ!」
「なに!?」
ジャマダハルは【1】の急所を貫いた、かに思えた。
確かに【1】は声を上げ苦しんでいるが、これは通常のダメージによる叫び。
急所を突かれたからじゃない。
俺が突き刺すその一瞬【1】の急所がずれたのだ。
これも防御系のスキルなのか?
「くっ! 中々危なかったが、女王様の血肉によって出来た体が咄嗟に生存するための挙動をとってくれたみたいだ。……まずは肉体の再生を優先するべき、だな。ふっ」
【1】は地面に息を吹きかける。
すると地面はゆっくりと持ち上がり始めた。
俺はダメージを負う可能性を考え慌てて後方に飛んだ。
なるほど、どうやら【1】は防御壁をこれで作ってしまおうとしているらしい。
だけど俺だって時間稼ぎをさせるつもりはない。
『贋物』
分身も使って壁に見える急所をジャマダハルで突き、それを阻止してやる。
「やはりたかが土壁。簡単に崩れるか。だが、この時間も今の俺にとって貴重な回復時間。何度だって生み出して時間を稼いでやる」
壊しては生み出され、壊しては生み出され、これじゃあいたちごっこだ。
焦燥感が高まり、次第に俺の攻撃は雑になる。
このままじゃ【1】が――
――バンッ!
壁が内側から弾けた。
そして、壁の中からは完全に元に戻った【1】。
俺の攻撃箇所を把握して、姿は捉えられていなくても攻撃に打って出たのか。
まずい。
攻撃が直線的なものじゃなくてなぎ払うような動きで範囲が広い。
当たる。ガードは間に合うが、これを貰えば暫くは硬直させられてしまう。
そうなれば、【1】はまずリヴァイアサンを喰いにかかるだろう。
【1】の変化、強化はその容姿から察するにきっと女王を喰った事が原因。 リヴァイアサンを喰えばもっと強くなって俺じゃどう足掻いても勝てない相手になる。
ここでこの攻撃はもらっちゃいけない。
でも――
「よしっ!」
【1】の嬉しそうな顔が俺の目に映った。
そしてそれと同じ画に攻撃を受け体が曲がる分身が映る。
俺の思いに答えてか、分身が間に割って入ってくれたらしい。
これは好機。
こんなに無防備な【1】は今を逃せば……もうないかもしれない。
俺はガードしようとしていた腕を攻撃の為に前へと突き出すのだった。
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