第266話 皮肉

「あれは……まずいわね」

「リヴァイアサン……」


 集落の入り口が見えると、そこには姿を変えた【1】、それに見た事のないシードン達。


 メロウ達は動けない程のダメージを受け、桃先輩はそれを守るように必死にシードンと戦っている。


 【1】は下半身を失っている様で、上半身しか残っていないが、まだ生きている。

 リヴァイアサンを貫く手刀を見るに完全にっかったと思ったところに不意打ちを喰らった、ってところか。


 今なら奴を、【1】を仕留められるかもしれない。

 だけど、あのリヴァイアサンがこれだけやられてしまっているという事を鑑みれば直ぐに近づくのは危険。


「『隠蓑』は……看破されてるよな。せめてもう少しスキルレベル上げられれば、効果が増してどうにかなるかもしれないけど……」

「輝明どうする? リヴァイアサンの方に変に加勢で入ったら邪魔になったりしないかな?」

「その可能性はあるなって……あれ、もしかして。邪魔にならないようにサポート出来る目途が立ったかもしれない。メアは桃先輩とメロウ達の方を頼む! リヴァイアサンは俺に任せてくれ!」

「分かった」

「『隠蓑』『瞬脚』」


 俺はリヴァイアサンが作ったであろう氷の山に見覚えのあるあれがゴロゴロと転がっているのを発見して、リヴァイアサンと【1】の間に入ってサポートする事を決意すると、まずは『瞬脚』で氷の山の方に。


「凄い量だな《透視》」


 ――パリンパリンパリンパリン……


 何故ここにこれだけの量が落ちているのかは分からないが、俺は無心でそれを割り続けた。


 ――パリン


 両手に持ったジャマダハルでひたすらに真珠を割る事数十秒。

 遂にレベルが上がった俺は、慌てて『隠蓑』のスキルレベルを上げ、上書きをした。


「これで気付かれなくなったかどうかは分からないが……行くしかない『瞬脚』」


 リヴァイアサンと【1】のいる場所に視線を送ると、【1】の体は再生を始めていた。

 それにリヴァイアサンの体が不自然に膨らみだしている。

 何をしようとしているのかはなんとなく想像がつくが……それをさせるわけにはいかない。


「よし、気付かれてないな。だったらまずは……」


 スキルレベルを上げた事でか【1】に存在を悟られてはいない。

 俺は一応こっそりと近づくとリヴァイアサンの身体に刺さった【1】の腕をジャマダハルで切断し、それを引き抜いた。

 通常なら引き抜く行為は良くないのだが、もし万が一【1】が毒などを使用していた場合直ぐ抜かないとまずい。

 少し痛そうな表情を見せているけど、傷口を凍りで塞ぐくらいには余裕がある。


 トゲくんとメアの方も大丈夫そうだし、セレネ様も到着したみたいだ。


 ――カラン。


 あ、真珠。

 消えた【1】の腕からのドロップだよな? もしかしてさっきのも同じように?

 相手を強化させてしまうものをドロップしてしまうなんて皮肉な事だな。

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