第248話 合流

「くっ!中心部で物が荒れ狂っている! ぶつけられたらひとたまりもないわっ! 流れに逆らって全力で泳いでっ!」

 波に飲まれるとメロウ達は必死の形相で波に逆らう。

 見れば中心部には大きな渦が出来ていて、それに吸い込まれるようにして物が移動している。

 このままだとこの高波の進む向きも変わってきそうだ。

「く、ああああ!」「きっ……つい」

 次第に強くなる流れにメロウ達の尻尾のバタつきが激しくなる。 メアやセレネ様でさえ、その顔に疲れが見える。

 超高速のルームランナーを時間設定なしで、しかもとてつもないリスクを背負って走っているみたいな感じなのだろう。

 そんなメロウ達を横目に自分が何も出来ない事に歯痒くなる。


「――やっば……」


 そんな中遂に1人のメロウが流れに負け、渦のある中心部に吸い込まれ始めた。

 みるみるうちに俺達から遠ざかっていくメロウ。

 必死にもがいてはいるものの。 その顔も動きももう限界だ。

「――捕まってっ!」「メアっ! 駄目よ!あなたまで渦に飲まれ――」「黙って! 私はもう仲間を助けられないのは嫌なのっ!」

 もう駄目かと思った時メアが危険を省みずメロウの手を 掴んだ。

 元の場所まで戻るのは無理そうだが、メアが手をとる事で何とかその場所を維持している。

 だが、メアの体力も残りわずかな筈。

 あの渦が【リヴァイアサン】が作り出したものだとした場合、恐らく【1】との戦闘が行われている。

 それは【リヴァイアサン】が生きているということなのだろうけど、逆を返せばこの状況に変化をもたらす、俺達をどうこうする余裕がないという事なんじゃ――

「もう、駄目……」「耐えて! 私も頑張るか――」「メアっ!!」

 メアと1人のメロウが流れに乗って勢いよく中心部に流れていってしまった。

 大きめの瓦礫や木に2人は体をぶつけ、渦の手前まで迫る。 ダメージを負ったせいなのか、2人には最早抗う素振りが見えない。

 最悪の場合今のダメージで気絶してしまったかもしれない。

『リヴァイアサン! 【1】との戦闘中悪いが、そっちに2人メロウが飲まれました!多分2人は気絶してしまって……致命傷を負っている筈です! 俺にはどうにも出来ません! 2人を、2人を助けて上げてください!』

 【リヴァイアサン】に心の中で呼び掛けるが、返事はない。

 セレネ様に視線を向けてみても、苦しそうな顔を見せるだけ。

 もう誰にもメア達を助ける事は出来ないのか?

「がぁああっ!」

 そんな時、トゲくんが隊列を乱して渦の元へ駆け出した。 スキルによる主従関係という事だけでは説明出来ないようなその悲壮感漂う顔に人らしさを感じる。

 トゲくんは2人を尻尾で掴み泳ぐが、中心部の流れは強く、その場からは離れられない。このままでは共倒れになってしまいかねない。

「があ――」「すまん、そのような事をせんでももうよい。遅くなったな」

 トゲくんが水の流れを止めようとしたのか、渦に向き直して氷の息を吐こうと身構えた瞬間、心待にしていたリヴァイアサンが渦からひょっこり顔を出したのだった。

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