第233話 協力関係
「これは、素晴らしい見た目だな。どれ、俺も少しだけ貰おうか……うーん、美味いがどちらかと言えば生の方が美味い。女王様は見た目もそうだが、味覚が私達より人間に近いのかもしれん。どうだ人間。お前はこれで満足?」
「は、はい。美味しいです」
「そうか。残さず食べろよ。ふぁ、私は少しだけ寝る。終わったら声を掛けろ」
【3】のシードンは俺が飯を食べている事に満足したのか、椅子に座りながら寝息を立て始めた。
『……料理上手いんですね、リヴァイアサンは』
『毎日女王の為に腕を振るっているからな。それに女王が現状に満足していればしばらくは無理にここより下に潜ろうとも潜らせようともしないはず。我が元々暮らしていた層に侵入されるのだけは避けねば』
『それを危惧して上層に出てきていると……その、下層には何があるんですか』
『シーサーペント達のリスポーンスポット。シーサーペントは死んでもそれがある限り、自分の魂をそのまま継承し、新しい肉体を手に入れられる。そしてその効果は我にも適用される』
『なんか人間の世界にある【ゲーム】のシステムみたい……。それがある限り魂は永遠、いわゆる不死みたいな感じってことですよね』
『そうだ。リスポーンスポットは我の第2の心臓と言ってもいい。もしそれをシードンに壊されるなんて事があれば……』
『それがここにいる理由……』
『そうだ。我はこのダンジョンで誰にも干渉されず、悠久の時を過ごしたい。ただそれだけなのだ。その為の強さを手にしたと思っていたのに……』
シードンに比べ【リヴァイアサン】は人間に対して害の無い存在のようだ。
可愛らしい見た目も相まって余計に可哀想に見える。
何とかしてあげたい気持ちはあるのだけ――
『そういえば、進化の薬……は今は切らしてるか』
『進化の薬?』
『はい。モンスターを強制的に進化させられるアイテムで、もしそれがあれば元の力を取り戻す事が出来るのかなって思ったんで――』
『そんなアイテムがあるのか!? それは今どこにある!?』
『……人間の世界、一色虹一が持ってます』
『という事はお前をここから逃がせばそれを持ってこさせることも出来るというわけだな』
『それはたぶん……』
『何故それを早く言わんのだ。であれば我はお前をここから逃がす事に力を貸そう』
『本当ですか?』
『ああ。とはいえ、先ほどから言っておる通り、【1】や女王を我が倒すのは不可能。あくまで逃がす手伝いをするだけだ』
『それだけでも嬉しいです。でも具体的には何をするんですか?』
『我の力であればこの階層をちょこっと混乱させられるはず……その隙にお前を逃がす。とはいえ、女王には監視能力がある。それを封じる、或いは発動させない様に出来なければ結局は……』
『まずはその能力を封じる策を練らないと、ですね。……。分かりました。それを探って、何とかなりそうであればまた連絡を入れたいんですけど……』
『この思念の伝達は女王とこの食事場までの距離なら途絶えず使用出来る。何かあったり、分かればすぐに連絡、ただし絶対に感づかれるなよ』
『分かりました』
【リヴァイアサン】との協力関係を何とか結べた。
だが、スキルを封じるような能力は俺にはないし……そうだ、取り敢えず今のうちにあれを割ってスキルポイントだけ貰っておくか。
俺は真珠を取り出し、【3】のシードンが寝ている事を確認しながらそれをひたすらに割る。
都合がいいことに真珠は破片となってから数十秒で消える。
『それは?』
『これで大量に経験値が貰えるんですよ』
『なるほど……それを少しここに置いていってもらう事は?』
『大丈夫ですよ。【3】のシードンが起きる前に渡しておきますね』
『ああ。後お前、皿だけは空にしておけよ』
『分かってます。あ、それと――』
【3】のシードンが起きるまで俺と【リヴァイアサン】は作戦決行の時の為に情報とアイテムを共有するのであった。
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