第232話 退化

『【リヴァイアサン】!?でもその見た目――』

『メロウに姿を真似させる事くらいわけないことだ。竜という種族は他のモンスターを圧倒的な力の差で畏怖、場合によっては存在するだけで向かい合った者を殺してしまう。我はダンジョン内の自然な循環を破壊してしまわないようにこういった姿に化けているのだ』

『シードン達の巣で働いているのも同じ理由何ですか?』

『ま、まままままままぁそうだ。勿論ではないか』

『違うんですね。俺が聞いた話だと【リヴァイアサン】はレベル500を越えるモンスター。いくらあのシードン達が強く他のモンスターのように扱えないとはいえ、ここで給仕をしなければならないなんてどう考えてもおかしいですよね?』

『……はぁ、ここまでバレて別に隠すことはないか。我は強い。勿論どんなシードンよりも。そう、本来の力であればな』


 顔を曇らせながら、自分の腕を擦るリヴァイアサン。


 よく見れば腕には太い傷痕。

 大分前のものなのか色は既に肌色となり、ぷっくりと膨らんでいる。


『その傷、誰にやられたんですか?』

『……人間だ。奴は強かった。とはいえ当時の我の方が強かったがな』

『それってもしかして一色って人間じゃ?』

『!?貴様、奴を知っているのか?』

『深い仲ではないですけど』

『そうか。……奴は不思議な武器と脅威的な身体能力を有していた。だが一番恐ろしいのは奴のスキル。まさか効果が遅れてやってくるとは思わなんだ』

『スキル?』

『対象を徐々に退化させるスキル。効果に違いはあれど奴自身もそのスキルによる影響を受けているようだったがな。あれはスキルというよりも呪いに近い』


 一色虹一は確かスキルによってああいった姿になってしまっていたはず。


 まさかあれに周りを巻き込む、副作用のようなものがあったなんて。


 ……だから一色虹一は基本的に1人で行動をしているかもしれない。


『その、それで人間に恨みとか……』

『それはない。あれば貴様とこうして話などせんわ。そもそもあの戦いは久方ぶりに我の血を滾らせる良いものであった』

『そうでしたか。であれば人間である俺のお願いを聞いてもえますか?』

『ここから逃げる手伝いをしろ、か?わざわざ我に話をするなどこれしか思い当たらん』

『はい。俺このままだと女王に一生監禁されかねないんです』

『我の知った事ではない。それに今の我では女王の監視能力を掻い潜るのは不可能。【3】のシードン程度であればなんとかなるだろうが【1】に駆けつけられたらどうしようもない』

『そこまで力に衰えが……』

『それも勿論だが、単純に【1】は強い。まさかシードンがここまで力をつけられるとは……早い段階で潰してしまうべきだったな』

『【1】はそんなに強いんですか?』

『ああ。他とは比べ物になら――』

「おい、調理の方はどうだ?そろそろか?」


 厨房に現れた【3】のシードン。


 俺達は慌てて、通常を装う。


 それにしても女王の監視能力、か。

 それさえ何とか出来れば取りあえずこの場から逃げられる可能性はあるのかもしれないな。

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