第221話 捕らえられる
「あっ？」
「とったっ！！」
顔を出した【4】のシードンの顔面目掛けてジャマダハルは伸びる。
急所はまだ隠れているが、それでも間違いない。
これは致命傷に至る一撃だ。
「あが、ぐが、やでゅな……」
「まじかこいつ……」
完全に捉えた、そう思った瞬間俺のジャマダハルによる突きは、ぴたりと勢いを消されてしまった。
ギリギリと音を立てる【4】のシードンの強靭な歯。
ジャマダハルはこの歯によって受け止められてしまったのだ。
その力にも驚きだが、何よりこの一瞬でその行動を選ぶ事が出来た【4】のシードンの判断力、更にはそれを可能にした反射神経には目を見張るものがある。
こそこそと戦うだけがコイツノ取り柄ではないって事か。
「でも、まだだっ！！」
俺はもう片方のジャマダハルを【4】のシードンの今度は喉を狙って伸ばした。
しかし、隙を突いたわけじゃない俺の攻撃は簡単に【4】のシードンの右手に掴まれた。
俺は両手を封じられた状態。
それに比べて【4】のシードンは左手がまだ空いている。
「まず――」
「輝明っ！！」
左手が不気味に俺の左胸に触れようとした時、大声を発しながらメアが勢いよくこっちに突っ込んできた。
トゲくんに命令する余裕も思考も足りなかったのだろう。
無鉄砲なその突進は無謀の一言に尽きる。
「ぺっ！！ ……メロウ、掴まえた」
【4】のシ―ドンはジャマハダルから口と手を離すと、俺を無視してメアに触れた。
俺は急いで攻撃を繰り出そうとするが、それよりも早く【4】のシードン、それにメアは姿を消した。
もしかして空間の中に飲まれた？
「あんまりこれはしたくなかったんだよね。だって、掴まえた相手は動けなくなって……嫌がる顔も、必死な顔も見れないし、戦闘じゃなくなるのはつまらないから。でも仕方ないよね、君達が思ったより強かったんだもん」
【4】のシードンは俺とトゲくんから離れた所に姿を現し、やれやれといった表情を見せる。
「がああああああああああああああっ！！」
その様子と主を消されたという事実に苛立ちを覚えたのか、トゲくんは狂ったように【4】の元に駆けだした。
「……いいよ。君も主のメロウと同じところに閉じ込めてあげる」
【4】のシードンは姿を消し、トゲくんの背中の上に移動して、そっと手を伸ばす。
するとトゲくんは待ってましたとばかりに氷の息を吐いて自分の体を氷で覆った。
「なるほど面白いねっ！ でもこんな氷は――」
「『瞬脚』」
氷の上からは相手を移動させれないのか、【4】のシードンはトゲくんの背中に乗ると、氷を割る為に拳を振り上げた。
俺はそれをさせまいと瞬脚で急いで距離を詰める。
「早いね、でも……ん？」
俺が近づいてくるに気付くと【4】のシードンは穴の中に入るような動きを見せて再び消えようとした。
しかし、トゲくんの体を覆っていた氷がまるで生き物の様にその足に絡みつき簡単に逃がさない。
「よくやったっ！！」
「くっ！ やられたよ。君の攻撃は簡単に受け止め――」
このまま【4】のシードンを倒した場合、メアはどうなるのか。
最悪の場合……。
「トゲくんっ！！ 少しそいつを頼むっ！」
「なっ！？ 勝手に入るな、そ、こは、ぼ、くの……」
【4】のシードンを止めていた氷は急速にその全身を凍らせる。
HPは殆ど減っていないし、ぴきぴきと音を立てている事から、その状態は長く続かない。
時間は限られている。
俺は【4】のシードンの手の先を目掛けて飛び込む。
身体に引っかかるような何か当たる感覚。
よし、空間の入り口はこの状態でも活きていたみたいだ。
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