第144話 食型探知
「スキルっていうのは『食型探知』の事かい?」
「「うん」」
「私がダンジョンの中」
「僕がどのダンジョンにいるか」
「そうか、じゃあ早速頼むよ」
ダンジョンの中とどのダンジョンにいるか、か。
2人で役割を持つスキルっていうのは珍しいな。
モンスターを食べてから使用可能になったって事は1度食べた事のあるモンスターに限られるのかな?
「「んー」」
2人は頭に両人差し指を当てながら唸り始めた。
スキルを使っている時の挙動だって知らなかったら、ちょっと心配になる絵面かもしれない。
「ダンジョン、1~9階までいる! 似てる奴……えっと黄色は11~19階層。でかでかは50階層。ちびちびちゅうちゅうは51階層~59階層! もっと下とか秘密の場所はここじゃわかんない」
「似てるのも同じのもこのダンジョンだけ! 他の全部のダンジョンの中いない!」
……このスキル、ちょっと便利過ぎないか?
俺はてっきり食ったモンスターの頒布場所しか分からないと思ったのに、似ているモンスターまで探知出来るなんて。
ダンジョンの中に関しては範囲が限られているみたいだけど、進化してスキルが強化されればもっと深いところまで探知出来そうだし、そもそも今時点で全てのダンジョンで食べたモンスターいるかどうかの検索、いや探知が出来るのは優秀過ぎる。
「凄いぞ! ありがとうな2人とも!」
「「えへへ」」
2人は照れるように頭を掻きながらにやけ面をして見せた。
今まで一緒に冒険してきたっていう事実とこういう可愛らしい仕草、容姿が相まって何だか愛着が湧いてしまう。
でも、一色虹一みたく尻に引かれるのはみっともないし、甘やかしすぎないように気を付けないと。
「モンスターの頒布知れるっていう事は、2人にはこまめにモンスターを食べさせてあげた方がいいな……。2人とも、もうちょっと食べれそう?」
「「うん!」」
2人は大きく頷くと親指を立てる。
ぶぅんっ!!
そんな時2人の背後から大きな鉢型のモンスターが勢いよくこちらに向かって来るのが見えた。
恐らく戦闘の音に反応して襲いかかってきたのだろう。
長く突きでている尻の針は三又に分かれ、殺意マシマシといった出で立ちだ。
「2人ともこっちに――」
「「ごはーん!!」」
その蜂型モンスター『トライデントビー』が2人を狙っているようだったので、慌てて2人へこちらに寄るよう指示を出そうとしたが、2人は俺が指示を言い終わる前にトライデントビーに向かって走り始めてしまった。
「やばっ! 瞬きゃ――」
「アウジャア! いくよぉっ!」
「うん!!」
流石にまずいと思い『瞬脚』を使おうとした瞬間、アルジャンだけが武器化してルージュはそれを思いっきり投げ飛ばしたのだ。
ジャマハダルという武器になって勢いよく飛んでいくアルジャン。
トライデントビーは2人の思いがけない行動に表情を変えるが、勢いをいきなり殺す事が出来ない様で変わらず飛んでくるアルジャン目掛けて針を突き出す。
これは武器とモンスターの攻撃が交差しクロスカウンターの様な美しい構図に……。
「いたらきます!!」
ならなかった。
アルジャンはモンスターに当たる直前で人型に戻ると飛びながら器用に針を躱し、そのままトライデントビーに噛み付いたのだ。
驚いたことに、藻掻くトライデントビーは子供姿のアルジャンを払いのける事が出来ず、次第に動きを鈍くしていた。
「私の分とっといて!!」
慌ててトライデントビーの元に駆け寄って一緒になって齧り始めるルージュ。
見た目は子供だが、C級探索者よりはるかに強くないか?
「まぁ、頼もしい事はいい事だ」
「「スキル使える!!」」
「まってまって! 今ノートにデータ記録するから!」
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