第2話 レッドメタリックスライム

「レッドメタリックスライム。ボスの間に出るのはボスモンスターだけじゃないのか?」


 探索者の間で共有されている情報だと中ボスも含めてボスが出てくる層はボスモンスターが1匹だけ出現するとされている。

 さっきのボススライムのように仲間を呼ぶパターンも小耳に挟んだことはあるが今みたいなパターンは聞いたことがない。



 カキン。カキン。



「……おっそ」


 自分の目の前にいるイレギュラーな存在に思考を巡らせていたが、あまりにレッドメタリックスライムの動きが遅すぎてつい突っ込みを入れてしまった。


「HP、残り5か。今のうちに逃げ――」



 カキン、カキン……カキーン!



 俺が仕方なく敵に背を向けて逃げようとした瞬間、レッドメタリックスライムの跳ねる音が変わった。

 その音に恐怖を感じた俺は慌てて振り向く。


 すると、レッドメタリックスライムは俺の腹部分にぶつかろうとしていた。


「やっ!!」


 避ける事も防御する事も出来ず、ただ瞼をギュッと瞑り、真正面からレッドメタリックスライムの体当たりを受けるしかなかった。


「えっ? 痛くない」


 攻撃は確かに受けた。だが、痛みは全くない。HPに変化もない。


「こいつもしかして弱い? だったら……」


 俺は痛む体に鞭を打ち、手放してしまっていた鉄の剣を拾い上げるとレッドメタリックスライムに向けて剣を斬り付けた。



 カキィーン!



 金属がぶつかり合った時の独特な音が響いた。

 手には振動による軽い痺れが残る。


「かってぇ。でも0ダメージってことはないだろ?」


 俺はレッドメタリックスライムとの殴り合いに打って出た。

 しかし、いくら攻撃してもHPを減らすことが出来ず、ただただ疲れだけが溜まってゆく。


「はぁ、はぁ、はぁ……お前、その身体、どうなってんだよ。≪透視≫」


 俺は一度手を止め、何となく≪透視≫を使ってみた。

 結果普通のスライムより外皮が硬(かた)くなっているのが分かったのだが、それ以上に俺は小さい小さい赤い点が右目部分で点滅しているのがどうしても気になってしまった。


「ここに攻撃したらどうなるんだろ?」



 ドンッ!



「えっ?」


 興味本位で赤い点部分を鉄の剣で思い切り突いてみると剣先と着いた先が赤く発光し、破裂音が生まれた。

 そして、レッドメタリックスライムのHPに目をやると、なんと5分の1程削れていたのだ。


「きゅるっ!」

「……これなら勝てる!」


 俺は続けざまに赤い点を突き攻撃を与えた。


「これで、止めだ!」


 最後の一撃を決めるとレッドメタリックスライムはドロップ品を落とし、姿を消した。

 それに俺の取得した経験値も表示され……。


「ぷ、プラス、+350!?」

『レベルが22に上がりました。職業が未選択です』


 通常スライムが1匹1経験値。それが350匹分。レベルが一気に2も上がって……。これは、これは……。


透視とうしってチートスキルだったのか?」


 さっきまで変な誤解を招いたこのスキルに殺意のようなものを覚えていたが……これなら掌返ししてやってもいいかもしれない。


「防御無視系スキル、いや確定急所スキルか? とにかく≪透視≫スキルの詳細を……」


 俺は≪透視≫の細かな詳細を確認すべくステータス画面を開いた。


-------------------------------------

名前:白石輝明

職業:無し

レベル:22

HP:5/37

MP:14/18

攻撃力:34

魔法攻撃力:0

防御力:44

魔法防御力:34

敏捷:25

固有スキル:透視(覚醒済み)LV1【MP1】

技術スキル:剣術LV4

保有スキルポイント:8

ジョブポイント:46

職業ツリー:レベル20に達しました。職業選択が可能です。

-------------------------------------


「駄目だ、やっぱりスキルの詳細はタップしても見れない」


 スキルの詳細を知るのにアイテムが必要なのは覚醒しても変わらないようだ。

 厄介な仕組みだが、こればっかりはどうにもならない。


『職業が選択可能です。選択をして下さい』

「職業選択か……。その前にドロップ品の回収だけさせて」


 俺はアナウンスに急かされながらボススライムやレッドメタリックスライムのドロップ品を回収し、一旦このダンジョン、ダンジョン【スライム】を後にしたのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る