ファンタジー豆知識コラム
なぜ宗教はファンタジーの悪役にされるのか?
どうも皆さま、ワタクシこのお話の「語り部」でございます。
こちらのコーナーではより深く物語を楽しんで頂く為に、作中で扱っている「設定」について解説を入れていこうと考えています。ファンタジーだからといって扱われている内容は全てが作者の妄想といえばそんなことはなく、一応は歴史から学んだ上で世界観の構築を試みているのでございます。完全なる無より世界を生み出せるのは神のみ。作者という存在は
あるいはそうする事でファンタジーに興味のない読者の方にも楽しんで頂けるようになるのではないかと……そんな下心も確かにここにはあるのですけれど。
まぁ、興味がなければスパッと飛ばしちゃって下さい。
先は長いので、ゆるりと参りましょう。
さて、その記念すべき第一回目の内容は「宗教」です。
のっけから何という重い題材を!
特定の宗教を
そう、日本のファンタジーにおいて宗教というものは大体がカルト、危険な思想に突き動かされるテロリストのごとき連中として描かれがちであります。実際、現実社会でそういった犯罪が起きており、仕方がない側面もあるのですが。
この物語にも「天ノ瞳教団」という団体が登場しましたね?
察しの良い皆様の中には「ははーん、この天眼さまというのがラスボスなんだな」と予想された方もいらしたのではないでしょうか? それが真実であるかはさておき、ワタクシが今回とりあげたいのは「物事にはだいたい善と悪の側面」があるという点なんですね。
まだ科学によって迷信というものが暴かれる以前、宗教というものは現在だと考えられないほどに権力を有していました。ファンタジーの多くが中世ヨーロッパを舞台としたり、あるいはそこを模倣した世界観で描かれている以上は、宗教というものにまったく触れないのも少しばかり不自然なのです。
中世ヨーロッパのキリスト教世界において洗礼を受けることは、今でいう戸籍を作ることに等しい行いだったのです。たとえ国王といえどもキリスト教に破門されてしまったら市民権を喪失し、社会で生きていけなかったのです。
それは何故かといえば、その時代において、キリスト教の教えこそが社会の道徳であり、市民が順守すべきルールでもあったからです。神に逆らうなんてとんでもない!
当時、まだ法律というものが未熟で人権なんて無いも同然だった頃。
神の前では全ての者が平等である(権力関係ねぇ!)そんな教えを説いたキリスト教は弱者にとって唯一の味方であり、支配階級の王侯貴族には目の上のタンコブだったのです。
王侯貴族と農民、支配する者とされる者、圧倒的に数が多いのはどちらでしょう?
それはそれは、大きな権力を有していたことでしょう。
しかし、それ故に悲劇もまた起きたのです。
そう、それがかの悪名高き「魔女狩り」暗黒時代の幕開けでございます。
説明するとこんな感じだったようなのです。
「てえへんだ! ウチの教区に魔女が現れたらしい。奴等はサバトとかいう怪しげな儀式を夜な夜なおこなって、悪魔に生贄を捧げたり、色々とエッチなことしたり、キリスト教を冒涜しているらしいぜ」
「なんだと、そいつはうらやましい……いや、けしからん。神に逆らう不届き者を火あぶりにして浄化やらねば」
「しかし、誰が悪魔崇拝者なのか判りませんぜ。どうやって見つけ出すんです?」
「うむ、密告させるのはどうだ? 犯罪者を火あぶりにしたら、そいつの財産は没収だろう。それを密告者にもわけてやればいいじゃん。きっとバンバン裏切り者がでるぞ」
「そいつはいい! それでいきましょう」
いいわけないだろォォ!!
当然の権利のように無実の者が密告されて命を落とすことになったのです。
そもそもなんで魔女なのよ、魔男はいないの?
やだなぁ、間男なら現代にも居るじゃないですか……なんて冗談はさておき。
アダムとイブの時代から、悪魔の甘言に耳を貸し、男をそそのかすのは女だと、そう信じられていたようなんですね。人権というものは、ある日突然はえてくるものではないのです。大勢の犠牲と長い長い闘いの末にようやく認められるものなのです。
絶対的な権力。ゆえに暴走すれば目も当てられないし、腐敗しやすい。
それが宗教の問題点だったのです。
さらに宗教はもう一つ大きな問題をはらんでいました。
宗教対立です。
多くの宗教は「自分の所の神様が唯一無二! 他のは偽物!」と異教徒を敵視するものです。これはもうキリスト教に限ったものではありません。
ファンタジーが中世ヨーロッパを重視する以上、このコラムではキリスト教を取り上げますが別に仏教や神道が侵略行為を行わなかったわけではないので誤解なきよう。
かの手塚治虫先生の名作『火の鳥』においても渡来した仏教と
自分の宗教の縄張り広げたいなー。でもどこの土地もライバルが多いしなぁ。
そこでキリスト教は閃きました。
「そうだ! よその土地の連中が信じている異教の神様は、悪魔ってことにしよう!」
「悪魔の戯言に騙されている連中を救う俺達ってジャスティス」
例えばです。よその漫画の主人公を無断で自分の作品に登場させて、しかも非道な悪役にして、それを自分の考えたキャラクターで退治してしまったら、どうなると思います?
それをやったら戦争だろうが……!
土着の宗教を貶め、地元民を改宗させる。キリスト教の仕掛けた侵略行為によって多くの原始宗教が消えていきました。キリスト教が来るまでは、もしかすると魔女も地元の民と仲良くやっていたかもしれないのです。あるいは本当に邪教で、民もキリスト教の到来を待ち望んでいたケースもあったかもしれません。
もしくは、弱肉強食の淘汰は自然の掟なのだとも言えます。
ともかく、勝って中世ヨーロッパに絶対権力を築いたのはキリスト教なのでした。
そこから、やがては十字軍というものが生まれ、遂には本当の戦争が起きることに。
宗教は争いの火種になる、それが第二の問題点なのです。
そこを題材としたものが『女神転生』や『ペルソナ』で知られているアトラスのTVゲームなんですね。なんと昭和末期、ファミコンの時代から既にあったテーマなのです。
どうでしょうか、ご理解いただけましたでしょうか?
こうした歴史的背景があるがゆえに、ファンタジーにおいて宗教は悪役をおしつけられガチになるのです。上記の問題点を取り上げることはキリスト教の黒歴史をほじくり返す悪趣味な行為ではなく、人類史に残る過ちを教訓として二度と同じことを繰り返さぬよう共通認識にしていく。そんな気高い目的もあったりなかったりするのです。
決して「厨二のソウルがくすぐられる」からとか「魔女さんのエッチな場面をかきたい」からだとか、そういう理由からではないのです、ハイ。
この作品はセルフレーティングをかけずに読者の皆さまへお届けするものなのです!
最後に
上記の問題点はとうの昔にキリスト教も認めた事実であり、法王さまの謝罪も済んでいることなのです。そして繰り返しますが、これはあらゆる宗教が抱えた問題であり、キリスト教だけが攻められるようなことではないのです。
そもそもキリスト教が絶対権力を築けたのは、彼らに「弱者の味方であった歴史」があるからこそなのだと。虐げられた者たちの不満と悲しみが彼らの力となったのです。その点をどうかお忘れなく。
そして現代、科学は迷信を
されど本来、宗教というのは文明の一部なのです。
日本に目を向ければ神代の時代から現在に至るまで血筋を残す天皇家は世界でもまれに見る存在だったりします。
私は神など信じないぞ。それはそれで考え方として良いとは思うのですが。
歴史や文明を毛嫌いして軽視するのでは、また同じ過ちを繰り返しかねないと思うのです。まさかサブカルチャーの為に戦争は起きないにしろ、魔女狩りめいた真似をしてはいませんか?
でもね……。
もし君の友達がヤバイ新興宗教に入ろうとしていたら、絶対に止めてあげましょう。
それはそれ、これはこれ!
諸々の神話や伝承は魅力的だし、宗教はファンタジーに欠かせない題材なのですけれど。ハマってしまうと恐ろしい、なかなか扱いに困るテーマだったりします。
伊達に悪魔を名乗ってない、彼らの設定や物語には逆らい難いカリスマがあるのでした。なんだったら魂を売ってみます?
長々と失礼しました。お疲れではないですか?
新章に入る前に少し休憩などをとられては?
ワタクシは何時までもここで皆さまをお待ちしています。
それでは続きを始めましょうか。
(オマケ)数行でわかるこれまでのあらすじ。
・吟遊詩人ライライに見初められた主人公ハービィは、英雄の仮面を受け取った。
・なんか、人助けをして感謝されるとその仮面は成長するらしい。
・その仮面を被って、私の英雄譚の主人公になってよ!(訳:世界を救え)
・ほな、やってみましょか(旅立ち)
・天ノ瞳教団「ただのガキだろうけど、気になるわー」
そんなこんなで続きなのです。
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